ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

望月諒子/「大絵画展」/光文社刊

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望月諒子さんの「大絵画展」。

英国人の美術収集家イアンは、是が非でも手に入れたかったゴッホ作「医師ガシェの肖像」を
クリスティーズで日本人に競り負けた。バブルが弾け、ある追いつめられた男と女が、担保物件
で倉庫に保管する名画の中に「ガシェの肖像」があり、それを買いたいと言っている依頼人
いるので、盗み出そうと持ちかけられる。 「ガシェの肖像」強奪は無事成功するが、持ち出した
コンテナには135枚の名画があり、総額二千億円を越える大事件となってしまう。
眠れる名画「ガシェの肖像」を巡り、騙し騙される絵画を愛するものたち。史上最大の泥棒が
最後に夢見た「大絵画展」とは!? 第14回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作(紹介文抜粋)。


ゴッホの名画を巡る美術ミステリー。ミステリーというか、高価な名画強奪をかけたコン・ゲーム
ものですね。新刊で売ってるのを書店で見て、題材やタイトルからして自分好みそうだと思って
チェックしていたところ、隣町の図書館で発見。嬉々として読み始めたのは良かったのですが・・・
むむむ。確かに題材は良かったのですが・・・なんというか、登場人物が多すぎるし、人物関係が
複雑で、高価な名画の取引事情の複雑さも相まって、なんだかストーリーがすごくわかりにく
かったです。視点も次々入れ替わるので、誰を主体に読んでいいのかもわからなかったし。
もっと、誰か一人に焦点を当てて書いた方が良かったんじゃないのかなぁ。話が次々飛ぶし、
何が何だかよくわからなかったです。からくり自体は、多分良く出来てるとは思うんですが、
誰と誰が繋がっていて、とかその辺もわかりづらくて、最後に城田がからくりを説明する
くだりも、説明されてもさっぱり人間事情が頭に入って来なかったです。もっと、一人一人の
人物描写をしっかり書くべきだって気がするんですが。前に出て来た登場人物が終盤になって
次々と登場してくるんだけど、全然どんな人物か覚えてなかった。これって誰だっけ?って
思った人物がやたらに多かった^^;私の記憶力と理解力の問題もあるとは思うけど・・・
せめて、人物紹介とかあったら良かったような。

絵画強奪のからくりがわかった後の、ゴッホのガシェのその後に関しても、だらだら書きすぎ。
説明過多すぎて、読むの疲れる割に、頭に入ってこないし。蛇足にしか感じなかったです。
もっと端的にどうなったか書いて、あとは強奪事件の関係者たちのその後の説明だけでも
十分だったと思う。薀蓄なんて短くてもいいんですよ、読者にとっては。特に、美術関係
なんて、特殊な世界だし。退屈に感じない程度、感心する程度に留めておく分には好印象に
なると思うけど、過ぎると単に読みづらいだけの小説になっちゃうと思うんですが。その辺の
さじ加減が上手くない作者だな、と感じました。

前半の、大浦や茜が詐欺に遭う辺りや、絵画強奪場面のハラハラ感などは面白かったのです
けどね。でも、大浦や茜がどう考えても怪しいとしか思えないオイシイ話に食いつくところは、
なんでそこで騙されるんだ!とツッコミたくなりました^^;騙されるのは自業自得とはいえ、
途中から更に傷口に塩を擦りこまれたかの如くにペテンに遭う彼らが可哀想にも思えて来ていた
ので、彼らの結末にはほっとしたところもありました。特に大浦に関しては、息子を信じて彼に
援助し続けた母親が一番気の毒だったので、ああいう結末で良かったです。痛い目に遭ったことで、
それまでの素行も反省したみたいですしね。


読後感は悪くなかったのですが、正直、題材から期待していた程には楽しめなかったなぁ、と
いうのが素直な感想かな。扱われる金額が大きすぎて(100億とか^^;)、なんだか現実味が
なかったです^^;バブルの時は、本当にこういうことがあったんでしょうけどねぇ・・・。

しかし、こんな名画たちがタダで観られる大絵画展なんて、贅沢ですねぇ。でも、この村まで
行く交通費の方がよっぽど高くつきそうだけど(苦笑)。


ちなみに、↓が問題の『医師ガシェの肖像』。表紙にも使われてますけどね。
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