ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

今野敏/「転迷 隠蔽捜査4」/新潮社刊

イメージ 1

今野敏さんの「転迷 隠蔽捜査4」。

相次いで謎の死を遂げた二人の外務官僚。捜査をめぐる他省庁とのトラブル。娘の恋人を襲った
アクシデント……大森署署長・竜崎伸也の周囲で次々に発生する異常事態。盟友・伊丹俊太郎と
共に捜査を進める中で、やがて驚愕の構図が浮かび上がる。すべては竜崎の手腕に委ねられた!
緊迫感みなぎる超人気シリーズ最強の第五弾(紹介文抜粋)。


シリーズ第五弾。前作は伊丹視点のスピンオフ作品だったから、本編は四作目に当たりますね。
三巻で竜崎の○○が描かれ、かなりドン引きしたところがあったので、あれを引きずってたり
したらちょっと嫌だな~と思ってたんですが、さすが竜崎。その経験の片鱗すら全く一切出て
来なかったです^^;っていうか、あの人物の名前さえも一度も出て来なかったです。竜崎に
とっては、もう完全に『終わったこと』なんですねぇ。なんともかんとも、竜崎らしいというか、
なんというか(苦笑)。そういう、過去を一切引きずらない性格が竜崎らしくていいんですけどね。
これで、未練がましく思い出に浸るような男だったらガッカリです。

というわけで、いつもの竜崎に戻っての本書、竜崎らしいシーンが満載で、とっても面白かった
です。いくつもの事件が重なって起きるのですが、管轄外の事件までも竜崎の元に情報が入って
来て、なぜか最終的には、すべての事件のやりたくもない陣頭指揮を竜崎が取る羽目になって
しまいます。それもこれも、全部竜崎自身が、関わる相手に自分の正論をぶちかまして相手を
納得させてしまい、一目置かれてしまうからなんですけどね。早く自宅に帰って眠りたいのに、
優秀であるがゆえに、いろんな人から面倒事を押し付けられて気が休まる暇のない竜崎が、
ちょっと気の毒になりました^^;でも、竜崎に敵意を持ってぶつかって来る相手に対しても
冷静に最善の策を提示して、相手を言い込めてしまうところはスカっとしました。このシリーズ
は竜崎のそういう所が一番の読ませ所ですね。今回は、そういうシーンがたたみかけるように
出て来るので、竜崎ファンにとっては楽しい一冊じゃないかな。もちろん、伊丹も相変わらず
竜崎を頼って無理な要求を提示して来ます。その都度竜崎の方は冷たい態度を取るのですが、
なんだかんだ言いつつ、結局最後は折れて伊丹のお願いを聞いてあげちゃうんですよね。全く、
この二人は本当に呆れる位、いいコンビですね(苦笑)。竜崎も口では面倒がってつれないことを
言いながらも、内心では伊丹のことを認めていているのがわかるので、なんだか二人のシーンは
微笑ましい気持ちになってしまいます(笑)。中年のおっさん二人の友情にこれほど心を
揺さぶられてしまうとは(笑)。伊丹の竜崎LOVEっぷりに、今回もニヤニヤしながら読んで
しまいました(笑)。

家族の方では、娘の恋人が海外で飛行機事故に遭ったかもしれない緊急事態に。忙しい中、
娘の為に尽力してあげる竜崎の姿は、頼れるお父さんでした。娘に対しても淡々と接する
竜崎ですが、やっぱり娘のことは可愛いんでしょうね。冴子さんは、竜崎のそういうところも
全部お見通しなのだから、さすがだなぁと思いました。
息子の邦彦は今回ほとんど出番がなかったのですが、短いシーンでも彼が心を入れ替えて
しっかりした青年に成長しているのが伺えて嬉しかったです。姉のことも、父のことも
ちゃんと理解しているんですね。自分が過去にしたことで、変に卑屈になったりしていない
のは、やっぱり竜崎のおかげなんでしょうね。竜崎のいいところを吸収して、いい青年に育って
欲しいな。


今回、全然隠蔽捜査じゃないよなぁ、と思いながら読んでいたのですが、最後になって、
しっかりタイトルらしい設定が出て来て、溜飲が下がりました。まぁ、竜崎には直接関係ない
ところでの隠蔽捜査ではありましたが^^;3つの事件が複雑にからみ合っているので、
ちょっと背後関係がわかりづらいところもあったのですが、そこを差し引いても、十分
面白い警察小説になっていると思います。
今回も痛快で気持よく読み終えられました。

今月は、大好きな任侠シリーズの新刊も出ましたね。今日予約したら14人待ちでガッカリ
でしたが^^;そちらも早く読みたいな~。