ミステリ読書録

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京極夏彦/「ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔」/講談社刊

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京極夏彦さんの「ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔」。

近未来。少女・牧野葉月たちは閉じた世界の中、携帯端末(モニタ)という鎖に縛られて生きて
いた。そこは窮屈ではあるものの不純物のない安全な檻――のはずだった。が、その世界に突如
現れた連続殺人犯。少女たちは、殺人犯とその背後に聳える巨大組織との対決を余儀なくされる。
驚愕の事件から数ヵ月。世間は一時、安定を取り戻したように見えた。
前回の事件の被害者として、この世界に漠然とした不安を抱えていた少女・来生律子のもとに、
小瓶に入った謎の毒を持った作倉雛子が訪ねてくる。雛子は毒を律子に託し姿を消す。奇妙な毒の
到来は、新たなる事件の前触れなのか……。
「突如凶暴化する児童たち」「未登録住民達の暴動」「奇怪な製薬会社」「繋がる過去と、
現在の事件」すべての謎が明かされるとき、新たなる扉を開けた少女たちは何を想う!?
(あらすじ抜粋)


単行本・ノベルス・文庫・電子書籍と四媒体で同時発売された異例の新作。私が読んだのは
単行本版です。まぁ、ザ・京極作品って感じで、分厚いこと、分厚いこと。総ページ数964
中盤までは、読んでも読んでも進まない地獄・・・。物語もなかなか進まないので、ちょっと
イライラしたところもありました。しかも持ってるとほんとに、重い(物理的な話ね)。ちょっと
読んでは体勢変えて、を何度も繰り返しながら読みました^^;ただ、改行が多く、だらだらと
長い文があまりないので、さくさくページは進むのが救いでした。京極さんの文章じゃなかったら、
同じ内容でも挫折していたかも・・・^^;

というわけで、本書。『ルー=ガルー忌避すべき狼』の純粋な続編です。といっても、私、前作の
内容をきれいさーーっぱりと忘れていまして、登場人物の名前さえほとんど覚えていない状態で
読んでしまいました。少しはおさらいしてから読んだ方が良かったかもなぁ、と思ったのですが、
前の内容やキャラを覚えていなくても、さほど問題はなかったです。2が出るって情報はずいぶんと
昔から告知されていたので、まさかこんなに時間が空くとは思わなかったです。って、それはまぁ、
京極堂シリーズも同じな訳でね。これが出たから、次こそは・・・って期待しちゃうのは仕方ないよね。

で、中盤まではほんとにスローテンポで、なかなか話が進まなかったのですが、我慢して中盤を
超えた辺りから急激に物語が加速。後半はぐいぐい惹きつけられて、一気読み。面白かった。
少女たちの個性的なキャラ造形も良かったですね。途中、誰が誰だか状態にもなったんですけど^^;
ただ、ビジュアル的に想像しやすい子とそうでない子がいたので、こういう作品はやっぱりアニメ
とか漫画向きなんだろうなって思いました。一作目がアニメ化されたのも頷けるストーリーやキャラ
造形だと思います。それぞれ、お気に入りの少女キャラが出来そうです。個人的には破天荒な美緒が
お気に入りかな。エキセントリックな歩未のキャラもいいけど。歩未は、一番大事なキャラとも
云える訳だから、もうちょっと出番が多くても良かった気がしますねぇ。どっちかっていうと、
律子の方が主役っぽかったような。

くたびれた元中年刑事の橡(くぬぎ)の弱々キャラも好きでした。弱いけれども、なんだかその
弱さが妙に母性本能をくすぐられるような、応援してあげたくなっちゃうような自虐的なキャラ造形
が良かったです。なんだかんだで弱いくせにちゃんと活躍してましたしね。なんか、こういうキャラ
をよーく知っているような・・・って関くんじゃん(笑)。どうも、私はこういう弱々自虐キャラに
弱いみたいです(笑)。ダメ男にほだされて付き合っちゃう、みたいなヤツかしら。って、実生活
ではそういう経験は無いですからね^^;

雛子が律子に託した毒薬の正体や、その背景にある陰謀には胸がムカムカしました。○○実験
なんて、某ドイツの独裁者じゃあるまいし。ほんとに、唾棄すべきことです。頭が良すぎると、
余計なことまで考えるようになってしまうのでしょうか・・・。人間はどこまでもないものねだり
ってことなのかもしれないですが。
でも、そういう気持ちの悪い部分を、14歳の少女たちが吹き飛ばしてくれたので、終盤は読んで
いてスカっとしました。大人たちの汚いものを一掃してくれたっていうかね。殺人はもちろん
悪いことで、犯罪なのは間違いないのですが・・・彼女たちに関しては、よくぞやってくれました!
って言いたくなりました。最後の小山田の粋な計らいも良かったですね。最初、敵か味方か
わかんない人でしたけど(苦笑)、いい人で良かったです(笑)。

橡が過去の霧島の犯罪の真相に気付くところも良かったな。ちょっとうるっと来てしまった。
誰だって、親友のことを悪く言いたくなんかないし、信じたいって思うはず。霧島の人格を信じて、
真相に気づいてあげた、橡は霧島にとっても、最高の友達だと思う。途中信じられない時があった
としても、ちゃんと真実にたどり着いてあげたのだからね。


分厚くて最初のうちは何度も気が遠くなりかけましたが(^^;)、面白かったです。なんか、
3もありそうな終わり方だったような。また、彼女たちに会える日が来るのかな。
これもそのうちアニメ化されるんでしょうかね。