遠野りりこさんの「マンゴスチンの恋人」。
高校2年生の季里子は幼い頃のトラウマが原因でいまだ恋を知らず悩んでいた。クラスメイトの勇司
から繰り返し告白されてもその気になれなかったが、ある日出会った人妻・笙子に心を動かされ、
肌を重ねるようになる。季里子と同じクラスの実森は、学校一の美少女。恋人の女癖の悪さに
ウンザリしていたところに、存在感の薄いオタクの雪村から体の変化についての悩みを打ち明け
られる。彼の悩みを聞きながら、実森は雪村の人柄に信頼を寄せていく。実森の友人・葵は、
援交相手から脅迫され、追いつめられていた。謎のクラスメイト・魚住の弱みを握っていた葵は、
魚住を脅して協力を仰ごうとするが、魚住から逆に脅され、ある計画の協力者になることを要求
される。生物教師の梢は同性愛者であることをカミングアウトするべきか悩んでいた。受け持ち
の女生徒・季里子がつけていたアクセサリーを見て、梢はそれがかつて自分の元を去って行った
恋人が作ったものだと直感し、彼女に会いに行く……。 多感な青春期に心は揺れ傷つき
ながらも、人を好きにならずにいられないセクシャルマイノリティの男女のそれぞれの恋を
描いた、第12回小学館文庫小説賞受賞作(あらすじ抜粋)。
から繰り返し告白されてもその気になれなかったが、ある日出会った人妻・笙子に心を動かされ、
肌を重ねるようになる。季里子と同じクラスの実森は、学校一の美少女。恋人の女癖の悪さに
ウンザリしていたところに、存在感の薄いオタクの雪村から体の変化についての悩みを打ち明け
られる。彼の悩みを聞きながら、実森は雪村の人柄に信頼を寄せていく。実森の友人・葵は、
援交相手から脅迫され、追いつめられていた。謎のクラスメイト・魚住の弱みを握っていた葵は、
魚住を脅して協力を仰ごうとするが、魚住から逆に脅され、ある計画の協力者になることを要求
される。生物教師の梢は同性愛者であることをカミングアウトするべきか悩んでいた。受け持ち
の女生徒・季里子がつけていたアクセサリーを見て、梢はそれがかつて自分の元を去って行った
恋人が作ったものだと直感し、彼女に会いに行く……。 多感な青春期に心は揺れ傷つき
ながらも、人を好きにならずにいられないセクシャルマイノリティの男女のそれぞれの恋を
描いた、第12回小学館文庫小説賞受賞作(あらすじ抜粋)。
本屋で見かけて、誰か好きな作家(誰だったか覚えてないけど^^;)が絶賛していたんだったか
で気になっていたので、借りてみました。最初は割とオーソドックスな高校生たちの恋愛小説なの
かなって思って読んでいたのですが、なるほど、なるほど、絶賛されるのも頷ける、ちょっと変化球
の恋愛小説でした。変化球というのは、普通の男女の恋愛を描くのではなく、性的少数派
(=セクシャルマイノリティ)の恋愛を描いているから。一作ごとに主人公は変わるものの、
それぞれの登場人物同士に少なからずリンクがある、いわゆる連作短編形式なのも私の好みとする
構成で良かったです。
例えば、一作目の表題作の主人公・季里子は、同級生の男の子から熱烈なアプローチを受け
ながらも、恋愛に興味が持てず、偶然出会ったビーズアクセサリーの女性店主に恋をします。
次第に彼女との仲は親密になり、遂には身体の関係さえ持つことに。ここで登場した女性店主
(後に彼女の正体が明らかになります)が、その後の作品でも重要な存在になって行きます。
ちょっと、全体的なリンクを狙いすぎて、人間関係がご都合主義的すぎるきらいもあるのですが、
綺麗に各作品が繋がっているとも云えるので、まぁアリかな、と。
で気になっていたので、借りてみました。最初は割とオーソドックスな高校生たちの恋愛小説なの
かなって思って読んでいたのですが、なるほど、なるほど、絶賛されるのも頷ける、ちょっと変化球
の恋愛小説でした。変化球というのは、普通の男女の恋愛を描くのではなく、性的少数派
(=セクシャルマイノリティ)の恋愛を描いているから。一作ごとに主人公は変わるものの、
それぞれの登場人物同士に少なからずリンクがある、いわゆる連作短編形式なのも私の好みとする
構成で良かったです。
例えば、一作目の表題作の主人公・季里子は、同級生の男の子から熱烈なアプローチを受け
ながらも、恋愛に興味が持てず、偶然出会ったビーズアクセサリーの女性店主に恋をします。
次第に彼女との仲は親密になり、遂には身体の関係さえ持つことに。ここで登場した女性店主
(後に彼女の正体が明らかになります)が、その後の作品でも重要な存在になって行きます。
ちょっと、全体的なリンクを狙いすぎて、人間関係がご都合主義的すぎるきらいもあるのですが、
綺麗に各作品が繋がっているとも云えるので、まぁアリかな、と。
マイノリティの恋でも、想う心は一緒であり、本書に収録された4編は、間違いなく恋愛小説
だと云えるでしょう。女同士・男同士の恋もあれば、身体的な性倒錯を抱えた少年の話もあり、
どれもが端から見ると『アブノーマル』に分類されてしまう人物たちなのかもしれません。
けれども、何を持って『普通』とするのかなんて、その人の主観でしかない。恋する心は
一般的な男女の恋と何ら変わらないし、相手の言動で一喜一憂するのも一緒。どの人物も、
みんな必死に恋をして、その時を必死で生きているのが伝わって来るから、なんだかみんな
眩しかったです。
だと云えるでしょう。女同士・男同士の恋もあれば、身体的な性倒錯を抱えた少年の話もあり、
どれもが端から見ると『アブノーマル』に分類されてしまう人物たちなのかもしれません。
けれども、何を持って『普通』とするのかなんて、その人の主観でしかない。恋する心は
一般的な男女の恋と何ら変わらないし、相手の言動で一喜一憂するのも一緒。どの人物も、
みんな必死に恋をして、その時を必死で生きているのが伝わって来るから、なんだかみんな
眩しかったです。
それぞれの恋を、生物の授業での生物学的異常の植物たちになぞらえているところも巧い
ですね。植物界にも、いろんな形で種を残して行く植物がいるんですね。勉強になりました。
ですね。植物界にも、いろんな形で種を残して行く植物がいるんですね。勉強になりました。
個人的に一番好きだったのは、二作目の『テンナンショウの告白』かな。主人公の実森は、最初
は高飛車なお嬢様気質にムカっとしたところもありましたが、クラス一ぱっとしない雪村と
接するうちに、彼の本当の良さに気づいて惹かれて行く過程が良かったです。まぁ、いかにも
少女マンガ的展開とも云えるのですが。でも、雪村の抱える秘密の部分は、少女マンガでは
出てこない設定だろうな~と思いました。実際、こういう身体の変化を抱えるひとっているんで
しょうか。これもDNAの不思議なのかな。
三作目の『ブラックサレナの守人』は、主人公の葵が最後まで好きになれなかったです。
彼女が陥った窮地は、完全に自業自得だな、とゲンナリしました。こういう高校生が増えて
いると思うと、暗澹たる気持ちになりますね・・・。魚住の好きな相手に関しては完全に
意表をつかれました。そういうことだったのか、といろんなことが腑に落ちました。
は高飛車なお嬢様気質にムカっとしたところもありましたが、クラス一ぱっとしない雪村と
接するうちに、彼の本当の良さに気づいて惹かれて行く過程が良かったです。まぁ、いかにも
少女マンガ的展開とも云えるのですが。でも、雪村の抱える秘密の部分は、少女マンガでは
出てこない設定だろうな~と思いました。実際、こういう身体の変化を抱えるひとっているんで
しょうか。これもDNAの不思議なのかな。
三作目の『ブラックサレナの守人』は、主人公の葵が最後まで好きになれなかったです。
彼女が陥った窮地は、完全に自業自得だな、とゲンナリしました。こういう高校生が増えて
いると思うと、暗澹たる気持ちになりますね・・・。魚住の好きな相手に関しては完全に
意表をつかれました。そういうことだったのか、といろんなことが腑に落ちました。
一作目で出て来た笙子は、一作目でも、その後の作品でも、自分勝手で最後まで好感持て
なかったです。振り回される方はたまったものじゃないですね。
なかったです。振り回される方はたまったものじゃないですね。
文章は今風の言葉遣いなんかも挟まれてはいるのですが、基本的には読みやすく、言葉の
センスなんかも私好みだな、と好印象でした。
新人らしい瑞々しい感性で、賞を受賞したのも頷ける作品だと思いました。
ラノベ風の表紙で、もっと軽い話なのかと思ったのですが、思った以上にテーマが深く、
恋愛小説にしてはなかなか考えさせられる内容で良かったと思います。普段恋愛小説が苦手な
方にこそ読んで欲しい作品かも。
今後の活躍にも注目したい新人さんですね。
センスなんかも私好みだな、と好印象でした。
新人らしい瑞々しい感性で、賞を受賞したのも頷ける作品だと思いました。
ラノベ風の表紙で、もっと軽い話なのかと思ったのですが、思った以上にテーマが深く、
恋愛小説にしてはなかなか考えさせられる内容で良かったと思います。普段恋愛小説が苦手な
方にこそ読んで欲しい作品かも。
今後の活躍にも注目したい新人さんですね。