ミステリ読書録

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今野敏/「任侠病院」/実業之日本社刊

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今野敏さんの「任侠病院」。

日村誠司が代貸を務める阿岐本組は、東京下町で長年ちっぽけな所帯を持っている。堅気に迷惑を
かけない正統派ヤクザであったが、地元新住民の間から暴力団追放運動が起こってきた。そんなおり、
組長の阿岐本雄蔵が、潰れかけた病院の監事となって再建を引き受けることになった。暗い雰囲気
の院内、出入り業者のバックには関西大物組織の影もある。再建先と地元、難題を二つ抱え込んだ
阿岐本組。病院の理事もさせられた日村は、組の最大の危機を乗り切れるのか―(紹介文抜粋)。


大好きな任侠シリーズ第三弾。続編出ないのかな~って思っていたので、発売を知ってすごく
嬉しかったです。今回亜岐本組が経営再建に乗り込んだのは、経営難に喘ぐ陰気な雰囲気の駒繁
病院。組長の亜岐本の好奇心に、今回も振り回されっぱなしの日村がちょっと気の毒でした^^;
でも、亜岐本のやることは全て一本筋が通っていて、結果的には正しいことだと納得させられ
ちゃうんですよね。今回も、あり得ない~ってくらいのご都合主義的展開なんですが、それが
とっても痛快で気持ち良かったです。
病院改革のくだりとか、ほんと、普通に考えたらそんな簡単に変わりゃしないよ、とツッコミ
たくなるところなんですが、なぜかこのシリーズだと素直に受け入れられちゃうんですよね。
もちろん、亜岐本組の下っ端組員たちもちゃんと活躍してます。真吉の女性キラーっぷりは
今回も健在で、病院の看護師さんたちをメロメロにしていますし、引きこもりだったテツは
ネットでの情報収集で活躍しますし。稔や健一も元気に亜岐本組の為に献身的に働きます。
小所帯なだけに、アットホームな感じがいいですよね。地元の住民たちから暴力団追放運動を
起こされて、容易に外出が出来なくなった組員たちが、自分たちでご飯を作って、みんなで揃って
食事を食べるシーンがほのぼのしていて好きでした。それに参加してジーンと来ている日村さんの
姿も良かったな~。日村さん、なんだかんだで心配性だしお人好しだし後輩の面倒見はいいしで、
いい人ですよねぇ。いつも気苦労ばかりしているから、頑張れってついつい応援してあげたく
なってしまいます(笑)。

駒繁病院で働く人物達のキャラも良かったですね。院長も事務長も、最初は亜岐本たちのことを
胡散臭い目で見ていたけれど、次第に彼らの病院再建の言動が正しいと気付いて、彼らを認めて行く
過程が爽快でした。ラストの亜岐本たちへの態度も感動的で良かったな。

今回も安易すぎるストーリー展開なのは間違いなかったですが、人情味溢れる温かさが随所で
感じられて、清々しく読み進められました。最後はお決まりの亜岐本組長の交渉術によって、
スカっと読み終えられて、爽快な気持ちになりました。やっぱり、このシリーズの最後は勧善懲悪
であって欲しいよね。

日村さんには申し訳ないけれど、亜岐本のオヤジさんの好奇心がまたいつか傾きかけた商業施設に
向かうことを願っていたいと思います。
日村さん、気苦労が祟っていつかハゲなければ良いけれど・・・(頑張れ日村さん^^;)。