ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

湊かなえ/「境遇」/双葉社刊

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湊かなえさんの「境遇」。


誘拐事件の裏に隠された“真実”の意味とは!? 人と人との“絆”を描くヒューマンミステリー。
デビュー作の絵本『あおぞらリボン』がベストセラーとなった陽子と、新聞記者の晴美は親友同士。
共に幼いころ親に捨てられた過去を持つ。ある日、「真実を公表しなければ、息子の命はない」
という脅迫状とともに、陽子の息子が誘拐された。ふたりが辿り着いた「真実」とは・・・
(紹介文抜粋)。


今年一発目の読書記事はコレ。昨年最後に読んだ湊かなえさんの新作ミステリーです。ドラマの
原作として書き下ろされた作品。ドラマ放映はすでに終わってしまいましたけれど。ドラマ
放映時は読んでなかったので、敢えて観なかったのですが。一部の情報では、結構設定とか
違ってるみたいですね。どこが違ってたのか、ちょっと気になるなー。

今回もリーダビリティは抜群で、『先が気になって一気読み出来た』という意味では面白かった
のですが、残念ながら、ミステリーとしてはちょっと先が読めてしまう出来だったかな、という
感じ。陽子の息子を誘拐した犯人も、途中から多分その人物だろうなーという予測が出来て
しまったし、動機もちょっと薄くて、いまひとつ説得力を感じなかったです。
下田弥生の娘に関しても、思ってた通りでしたしねぇ。一応、最後までどちらかわからないような
書き方をしようと頑張ってる感じは伺えたんですけどもね(苦笑)。
それに、誘拐ものの割に、いまひとつ緊迫感がないんですよね。陽子のキャラクターが原因
だと思うんですが。陽子の一人称が敬語調なので、子供が誘拐されてるにしては、どこか
冷静に対処してる印象を受けてしまうんですよね。陽子の置かれた立場(県議会議員の妻)では、
取り乱したり出来ないこともわかるんですけど。

誘拐犯の正体がわかるくだりは、もっと犯人の悪意が全面に押し出されていたら湊さんらしかった
と思うんですが、そこもなんか、お涙頂戴よりの展開になってしまってちょっと肩透かしでした。
まぁ、そのおかげで読後感は悪くなかったのですけれど。でも、どうも初期の頃の毒が抜けて
しまった湊作品って、物足りなさを感じてしまうんですよねぇ。初期の頃は同じような毒作品で
マンネリとか言ってたくせに、我ながら勝手な読者だなぁと思いますけど(苦笑)。

中に出て来る『あおぞらリボン』は、実際絵本化されてるようですね。紹介されてるあらすじ
だけでも、ちょっと泣ける良い作品なのがわかるので、今度読んでみたいです。母の優しい愛を
感じる作品なのでしょうね。

読み始める前は、なんでスピンの青いひもが二本?と不思議に思いましたが、作品を読むと
理由がわかりますね。なかなか凝ってる装幀で素敵だと思いました。


ドラマありきの小説だから仕方ないとはいえ、最後にもう一捻りくらいはあっても良かったかな、
と思いました。いかにもドラマ化しやすそうって感じの作品でありました(苦笑)。