ミステリ読書録

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中村ふみ/「裏閻魔2」/枻出版刊

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中村ふみさんの「裏閻魔2」。

広島で奈津を探すも叶わず、失意のまま東京へ戻ってきた閻魔。その頃、東京では奇妙な自殺騒ぎが
続いていた。一方、不老不死の『鬼込め』を求める者たちは信正に代わり牟田家を継いだ惠子に
まで魔の手を伸ばす。死期を悟った信正から、奈津の居所を託された夜叉。自殺者たちの右手に
『鬼込め』があることに気づいた閻魔と夜叉は、梅倖にかつて破門された男の弟子を探しはじめる。
戦後復興期の日本で閻魔と夜叉が再び出会う(あらすじ抜粋)。


四カ国同時出版という華々しいデビューを飾った『裏閻魔』の続編。こんなに早く続編が出るとは
思わなかったです^^;前作が評判良かったんですかね~。
あとがきにもある通り、前作は数世代に跨って、80年間の話でしたが、今回はトータルで10年程。
その分ページ数も少なくなり、ちょっと内容的には薄くなってしまったかな、という印象でした。
多分、これ以上長い期間にすると、肝心の奈津さんの存命期限がオーバーしてしまうからだとは
思いますが、ちょっと二作のバランスが悪い感じがしてしまいますね。

前作のラストで奈津さんの本心がわかって、姿を消してしまった奈津さんを捜して再会するお話
なのかと期待しましたが、閻魔の前に現れたのは弟子希望の少年。この少年との因縁の10年間
を綴ったと言っても過言ではないような内容でした。
執拗に閻魔に弟子入りを迫る少年を閻魔は頑として受け入れず、結局別々の人生を歩むことに
なります。閻魔は少年を思えばこそ、弟子入りを拒んだのですが、少年にとっては裏切られた
としか感じられず、閻魔と別れた少年はどんどん悪の道へと進んでしまいます。閻魔の初めての
弟子(表面的には認めていませんでしたが)との出会いと別れが描かれるのですが、この弟子の
善哉のキャラがいまひとつ魅力的でないせいか、読んでいても前作ほどの盛り上がりを感じ
ませんでした。何といっても、奈津さんがちっとも出て来ないのが一番の敗因ではないかと^^;
閻魔の庇護者である信正さんも、老衰でほとんど出番ないし。彼とのお別れも悲しかったです。
来るべき時が来たって感じで。奈津さんとのお別れも近いのかなぁ・・・とか思ったりして。

善哉とのお話には決着がつきましたが、肝心の奈津さんとは会えないままなので、まだ続く
のかな・・・と思いながら読み終えたら、あとがきで『三部作』との情報が。なるほど、だから
繋ぎの一作っぽかったのかぁ、と腑に落ちたのでした。
次作ではいよいよ奈津さんとの再会と別れが描かれるのかな。閻魔には、きちんと自分の
気持ちをぶつけて欲しいですね。どんなに年を取っておばあちゃんになっても、彼女を思う心は
変わらないって、きちんと伝えてあげて欲しいな。例え一緒にいられる時間が少なくても、
二人が思いを伝え合って幸せに生きられる瞬間があるといいな、と思います。
ここまで来たら、最後まで追いかけなくては。

ちょっと残念だったのは、所々で文章的なミスが目についたところ。作者側の問題なのか、校正の
問題なのか、その辺りはわかりませんが、校正の段階でいくらでも指摘出来そうな間違いだった
ので、ちょっとガッカリしました。大々的に売り出すくらいなら、その辺りの最低限の文章
チェックはしてもらいたいと思ってしまいました。内容以前に、作家としてその間違いは
どうなんだ?って思う文章もあったので(てにをは的な部分も含めて)。


ところで、四カ国同時発売した前作、他の国での評価はどうだったんでしょうね。肝心の国内
では、いまひとつ話題にならなかったような・・・^^;;

それより、東野さんのエドガー賞候補ノミネートに仰天。もし、受賞したら、ミステリ界の歴史を
変えますね~。是非是非是非!!獲って欲しいなぁ(わくわく)。でも、やっぱり日本の
ミステリが受賞って難しいんだろうなぁ。
でもでもでも!!候補になったってだけでも、ほんとにすごいことですよね。
賞の発表っていつなんだろ。これでまた『容疑者X~』更に売れちゃうね。