18世紀のパリ。孤児のグルヌイユは生まれながらに図抜けた嗅覚を与えられていた。真の闇夜で
さえ匂いで自在に歩める。異才はやがて香水調合師としてパリ中を陶然とさせる。さらなる芳香を
求めた男は、ある日、処女の体臭に我を忘れる。この匂いをわがものに……欲望のほむらが燃え
あがる。稀代の“匂いの魔術師”をめぐる大奇譚(あらすじ抜粋)。
さえ匂いで自在に歩める。異才はやがて香水調合師としてパリ中を陶然とさせる。さらなる芳香を
求めた男は、ある日、処女の体臭に我を忘れる。この匂いをわがものに……欲望のほむらが燃え
あがる。稀代の“匂いの魔術師”をめぐる大奇譚(あらすじ抜粋)。
今月の一冊。映画『パフューム』を観た時、あまりにも衝撃的な内容だったので、原作も読んで
みたいなぁとずっと思っていた作品。先日読んだピースの又吉さんのエッセイに出て来て、
そういえば・・・と思い出したので、借りてみました。
みたいなぁとずっと思っていた作品。先日読んだピースの又吉さんのエッセイに出て来て、
そういえば・・・と思い出したので、借りてみました。
結論から言えば、ものすごく・・・面白かったです。感想がとても書きにくいのだけど、とにかく
物語世界に引きこまれました。のっけから、18世紀のパリ市内の悪臭についての描写で読者を
ドン引きさせるのだけど(苦笑)、それがかえって読者を惹きつけるというか。主人公グルヌイユ
のキャラ造形なんて、好感が持てるような描写が一切出て来ないのに、なぜか彼の次の行動が
気になって、先へ先へとページをめくっている自分がいました。感情表現が全く出て来ない
代わりに、彼の並外れた臭覚力のトンデモなさがこれでもかってくらいに強調されていて、
とにかく、あらゆる物の匂い(臭い)だけで物語を引っ張って行くところがすごいです。
これはもう、今まで読んだどんな小説とも違った、独自の世界観としか言いようのない作品。
グルヌイユの臭覚の凄さといったら、遥か海を超えた遠くの物でさえ嗅ぎ分けてしまうのだから、
ある意味、これはもう、ファンタジーとかSFの世界って感じです^^;どんな匂いも嗅ぎ分け
られる天才的な臭覚を持っていながら、自身は体臭が一切ないという設定も面白いですね。
逆に言えば、どんな体臭でも身につけられ、人から好かれることも、嫌悪されることも、意の
ままに操れる。彼が望めば、神にも悪魔にも存在を一切認識されない透明人間にもなれるのです。
何の抵抗感もなく次々と美少女たちの命を奪って行く彼の所業は、どこから見ても残虐で許しがたく、
悪魔のようなのに、さらっと読めてしまうのは、彼がそれを罪だと認識せずに、ただ純粋に自らの
求める匂いを得たいが為にしてるだけだからかもしれません。
物語世界に引きこまれました。のっけから、18世紀のパリ市内の悪臭についての描写で読者を
ドン引きさせるのだけど(苦笑)、それがかえって読者を惹きつけるというか。主人公グルヌイユ
のキャラ造形なんて、好感が持てるような描写が一切出て来ないのに、なぜか彼の次の行動が
気になって、先へ先へとページをめくっている自分がいました。感情表現が全く出て来ない
代わりに、彼の並外れた臭覚力のトンデモなさがこれでもかってくらいに強調されていて、
とにかく、あらゆる物の匂い(臭い)だけで物語を引っ張って行くところがすごいです。
これはもう、今まで読んだどんな小説とも違った、独自の世界観としか言いようのない作品。
グルヌイユの臭覚の凄さといったら、遥か海を超えた遠くの物でさえ嗅ぎ分けてしまうのだから、
ある意味、これはもう、ファンタジーとかSFの世界って感じです^^;どんな匂いも嗅ぎ分け
られる天才的な臭覚を持っていながら、自身は体臭が一切ないという設定も面白いですね。
逆に言えば、どんな体臭でも身につけられ、人から好かれることも、嫌悪されることも、意の
ままに操れる。彼が望めば、神にも悪魔にも存在を一切認識されない透明人間にもなれるのです。
何の抵抗感もなく次々と美少女たちの命を奪って行く彼の所業は、どこから見ても残虐で許しがたく、
悪魔のようなのに、さらっと読めてしまうのは、彼がそれを罪だと認識せずに、ただ純粋に自らの
求める匂いを得たいが為にしてるだけだからかもしれません。
映画では大きく端折られていたエピソードが、グルヌイユが洞窟で生活する所から始まるⅡの章。
確かに、なくても通じるエピソードではあると思います。ただ、この洞窟生活で彼は自分に体臭が
ないことに気付く訳ですし、彼が洞窟から出て来て保護され、モンペリエで領主のエスピナス侯爵
の致死液説の実験台になって一躍有名人になったり、人間の体臭の香水を作って、自らを大衆の
中に紛れこませる術を学んだりと、なかなかに奇抜なエピソード満載で作品の中の読ませ所の一つ
だと思うので、まるまる端折ってしまうのはちと勿体ないなぁと思いました。
確かに、なくても通じるエピソードではあると思います。ただ、この洞窟生活で彼は自分に体臭が
ないことに気付く訳ですし、彼が洞窟から出て来て保護され、モンペリエで領主のエスピナス侯爵
の致死液説の実験台になって一躍有名人になったり、人間の体臭の香水を作って、自らを大衆の
中に紛れこませる術を学んだりと、なかなかに奇抜なエピソード満載で作品の中の読ませ所の一つ
だと思うので、まるまる端折ってしまうのはちと勿体ないなぁと思いました。
映画のラストは、とにかく呆気に取られるような展開で、ほんとに観てて目が点って感じだった
ので、原作はどうなんだろう・・・と思っていたのですが、これがまぁ、なんと、ほぼ一緒^^;
グルヌイユのラストもほとんど映画は原作通りだったんですね。この上もなくグロテスクで
呆気無いラストですが、グルヌイユにはこういう結末が相応しいのかもしれないな、と思えました。
ので、原作はどうなんだろう・・・と思っていたのですが、これがまぁ、なんと、ほぼ一緒^^;
グルヌイユのラストもほとんど映画は原作通りだったんですね。この上もなくグロテスクで
呆気無いラストですが、グルヌイユにはこういう結末が相応しいのかもしれないな、と思えました。
とにかく、最初から最後まで『匂い』に拘った作品でした。良い匂い・悪い匂いも全て、この世には
いろんな匂いが溢れている、とつくづく思わされました。しかし、18世紀のパリの悪臭には
耐え難いものがありそうです・・・。今の『花の都パリ』なんてイメージは、この作品からは
かけらも感じられません。こんな時代に生きていたら、まともな臭覚なんて持てそうにない
ですねぇ。グルヌイユは、自らの体臭がないからこそ、あらゆる匂いが嗅ぎ分けられる才能を
神から与えられたのかもしれません。
いろんな匂いが溢れている、とつくづく思わされました。しかし、18世紀のパリの悪臭には
耐え難いものがありそうです・・・。今の『花の都パリ』なんてイメージは、この作品からは
かけらも感じられません。こんな時代に生きていたら、まともな臭覚なんて持てそうにない
ですねぇ。グルヌイユは、自らの体臭がないからこそ、あらゆる匂いが嗅ぎ分けられる才能を
神から与えられたのかもしれません。
興味深いのは、彼に関わった人間が、ひと度彼と離れると、その人間は必ず後日不幸に見舞われる、
という所。そのままグルヌイユと一緒にいる限り、彼らが死に直面することはなかったのかも
・・・と考えると、ある意味、グルヌイユって座敷わらしみたいな存在だったのかなぁ、とも
思ったり(笑)。まぁ、こんな人間とは関わらない方が幸せでしょうけどね。
という所。そのままグルヌイユと一緒にいる限り、彼らが死に直面することはなかったのかも
・・・と考えると、ある意味、グルヌイユって座敷わらしみたいな存在だったのかなぁ、とも
思ったり(笑)。まぁ、こんな人間とは関わらない方が幸せでしょうけどね。
パリが舞台だから、てっきり作者はフランス人かと思ったら、ドイツ人なんですね。いかにも
フランス文学っぽい内容な気がするのに(苦笑)。
フランス文学っぽい内容な気がするのに(苦笑)。
まぁ、なんというか、とにかくすごい作品でした。一言ではとても言い表せないなぁ。
グロテスクで不快な描写がたくさん出て来るのに、反面では純粋な愛を描いた作品と云えなくも
ない気がするし、なんとも不思議な物語です。一度読んだら忘れがたい作品ですね。
絶対臭覚を持った体臭のない男・グルヌイユの奇想な生涯の顛末に時間を忘れて読みふけって
しまいました。とても面白かったです。
グロテスクで不快な描写がたくさん出て来るのに、反面では純粋な愛を描いた作品と云えなくも
ない気がするし、なんとも不思議な物語です。一度読んだら忘れがたい作品ですね。
絶対臭覚を持った体臭のない男・グルヌイユの奇想な生涯の顛末に時間を忘れて読みふけって
しまいました。とても面白かったです。