ミステリ読書録

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桜庭一樹/「傷痕」/講談社刊

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桜庭一樹さんの「傷痕」。

この国が20世紀に産み落とした偉大なるポップスターがとつぜん死んだ夜、報道が世界中を黒い光の
ように飛びまわった。彼は51歳で、娘らしき、11歳の子どもが一人残された。彼女がどうやって、
誰から生を受けたのか、誰も知らなかった。凄腕のイエロー・ジャーナリズムさえも、決定的な
真実を捕まえることができないままだった。娘の名前は、傷痕。多くの人が彼について語り、
その真相に迫ろうとする。偉大すぎるスターの真の姿とは? そして彼が世界に遺したものとは?
(あらすじ抜粋)


久々に桜庭さんの新作が出ました。うーん、どうなんでしょうか、コレ・・・。正直、個人的には
あんまりはまらなかったなぁ・・・。
偉大なポップスターが突然死し、一人の娘が残されたところから物語が始まります。このポップ
スターのモデルが謎の死を遂げた、アメリカのあの超有名スターなのは一目瞭然。生い立ちも
スターとしての立ち位置も死に方も、ほぼそのまま。ただ、一つ大きく違っているのは、舞台が
日本だということです。当然、当のスターも日本人。でも、全世界に愛されるスーパースター
という立場は一緒。そこが、自分としては読んでいてすごく違和感を覚えました。全世界が
愛するスターが日本人ってのが、ねぇ。なんで、わざわざ舞台を移して日本にする必要性が
あったのかな、と。しかも、娘の名前が傷痕。桜庭さんのネーミングセンスはいつも面白くて
嫌いではないけど、さすがに娘に傷痕って・・・ひどすぎるでしょ^^;せめて、何でその名前を
つけたのか、とかその由来が書かれていたらまだ納得も出来たかもしれないけれども。

あのスーパースターの死に触発されて、なんとか彼の物語を小説にしたい、と思ったのは
わかるんですが、ここまで同じようなエピソードを採用するなら、いっそのこと本人を
主人公に据えちゃった方が潔かったんじゃないのかな。なんか、中途半端に日本のスターに
置き換えたせいで、話がやたらにウソっぽいというか、薄っぺらく感じてしまいました。
兄弟の中で、ポップスター本人の名前すら明かされていないのに、娘の傷痕と妹の孔雀だけ
名前が出されているのもなんだか不自然な感じがしたし。まだ、傷痕だけだったらわかるの
ですが。なんかこう、全体的にね、設定が中途半端って感じがしたんですよね。

読み終えて、「・・・で?」って言いたくなったというか、結局桜庭さんは何が書きたかった
のかなぁ、というところが、よくわからなかったです。もっと、傷痕本人に焦点を当てるとか
した方が、面白く読めたんじゃないのかなって気がする。いろんな人の視点から、亡くなった
ポップスターとの過去の出来事や思いが綴られるだけの回想録でしかないので、小説としての
読みどころがわからないんですよね。彼の死の真相がわかる訳でもないし、残された傷痕が
どうやって生まれたのかも謎のまま。そういう部分が最後に解明されていくミステリー形式
とかにしてくれたらまだ良かったのにな。

相変わらずリーダビリティはあるので最後まで読むことは出来たけれども、正直、途中から
だれて来て、惰性で読んでた感じでした。
最大の敗因は、私がそこまであの世界的スーパースターに思い入れがなかったせいだと
思うんですけどね・・・(ファンに殺されそうな発言ですみません・・・^^;;)。
彼のことが大好きな人なら面白く読めるのかもしれません。

なんだか、久々に黒べる記事になってしまった・・・うう、すみません(T_T)。
好きな人はすごく好きじゃないかな。賛否両論分かれる作品かもしれません。