ミステリ読書録

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古野まほろ/「絶海ジェイル Kの悲劇 ’94」/光文社刊

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古野まほろさんの「絶海ジェイル Kの悲劇 ’94」。

先の大戦中、赤化華族の疑いをかけられ、獄死したはずの祖父が生きている。そう聞かされた
「イエ先輩」こと八重洲家康は絶海の孤島・古尊島を訪れる。しかし、そこにあったものとは……!
 隠された孤島。鉄壁の監獄。一望監視獄舎。そして、「ここから脱獄してみろ」という悪意に
満ちた挑戦状。空前絶後の脱出劇が開演する!(紹介文抜粋)


またしても読んでしまいました、まほろタン(ファンはこう呼ぶらしいから真似してみた)。
だって、『群衆リドル』に続くイエ先輩ものだったんだもん。前作、ミステリ的な内容はもう
全然記憶にないんだけど(おい)、イエ先輩のキャラが気に入って、続編読みたいなーって
思っていたので。また再会出来て嬉しいです。イエ先輩大好きっ子のユカちゃんも晴れて
大学生(一浪でも、なんとまさかの東大合格!!!すごいよ、ユカちゃん!!)。イエ先輩
に弄られ意地悪されつつも、二人の仲は相変わらずよろしいようで。本書では、二人の
ムフフ~~なシーンも入っていて、ニンマリしちゃいました。ただ、今回ユカちゃんほとんど
出番がなかったので、もうちょっと二人のいちゃいちゃとイエ先輩のツンデレっぷりを堪能
したかったなーってのが正直なところでしたが(邪ま読者)。古尊島では、あのイエ先輩
が罵詈雑言を浴びせられたり、拷問にかけられたりと、読むに耐えないシーンの連続で、
イエ先輩ファンとしてはちょっと読むのが辛いところも多かったです。でも、人間扱い
されてるとは言いがたいような拷問を受けても、毅然とした態度を崩さないイエ先輩に
萌え~って感じでした(変態?)。ユカがああいうシーンを目撃してたら、間違いなく
卒倒してますね・・・彼女のキャラなら、逆上して相手を殺そうとしちゃうかも^^;

設定自体は、はっきり云ってツッコミ所満載。そして、謎解き部分もそれに負けないくらい
ツッコミ所の嵐でした・・・^^;イエ先輩が明かす謎解きには目が点になりっぱなし。
どう考えても、実現可能のトリックとは言いがたいです。っていうか、無理です。特に、
コーヒーにあるモノを入れるトリックにはあり得なさ過ぎて笑っちゃいました。だってねぇ、
どれだけ頭で計算したって、ソレ(○○○○○)のプロにだって無理なんじゃない?完全に
これはバカミスの域だと思います(苦笑)。これを説明されて真に受ける方も真に受ける方だよ。
私だったら、絶対納得出来ないと思うなぁ。どんだけ天才だってね、たった一度のチャンスに
それをやり遂げるのは無理だって。

本格ミステリ好きにはたまらない、読者への挑戦(しかも二回)を入れる位、作者はトリック
に自信があって、伏線もフェアだと思ってるのかもしれませんが・・・私的には、この情報で
この謎解きを導くのは無理なんじゃないかと思いました。特に、ある情報が明かされていない
のは全く読者に対してフェアではないと思います。私の読み落とし?と思って、もう一度
前に戻ってパラパラ読んでみたんですけど、その情報が書かれてるらしき箇所が見つからない
んですよね。もし、読み落としだったら、教えて頂きたいです・・・。だって、このトリック
で脱獄したとしたら、絶対その痕跡が残ってなきゃおかしいですもの。八重洲清康たちが
脱獄した後、独房は隅々まで調べられた筈ですから、その記述が残っていないのは不自然です。
百歩譲って、まだ清康以外の三人に関しては一見元通りにできなくはないかもしれないけれど、
清康の独房だけは絶対無理でしょう。その部分を何故波乃淵はイエ先輩に伝えなかったので
しょう?どうにもこうにも、その部分が納得いきかねて、消化不良な読後感になってしまい
ました。

ただ、そこ以外の謎解きは、やりすぎな位のトンデモトリック満載で、それ自体は面白かった
です。いちいち『無理だろ!』ってツッコミたくなりましたけど(苦笑)。まぁ、バカミス
として楽しむべき作品でしょうね。

とにかく、八重洲家には大天才の血が流れてるってことだけはよーーーーーく、わかりました(笑)。
凡人には到底、こんなトリック考えつかないですし、実行しようとも思わないでしょうからね(苦笑)。







以下、先述した部分のネタバレです。未読の方はご注意を。


















私がどうにも腑に落ちなかった点。
清康が独房から脱獄出来たのは、鉄格子を備長炭に火をつけて高温で軟化させたからですよね。
だとしたら、脱獄後にそのひしゃげた鉄格子は残されてる訳で。だって、一度曲がった鉄格子を
もう一度火をつけて元に戻すとか、絶対無理な筈。なのに、何故そうした記述が残されなかった
のでしょう?そこが予め明かされていたなら、その方法がわからないまでも、彼が窓から逃げた
ことなんて一目瞭然だったと思うんですけど。

それについては、他の仲間もそう。清康が用意した糸鋸で鉄格子を切って脱出したなら、その部分
の鉄格子が欠けてる筈です。縁と縁ギリギリに切って、元に戻しておいたと考えられなくもないけど、
そこが取れるようになっていたら、調べればすぐにバレてしまうと思うんですが。

波乃淵は、一番最初に、家康に舞台装置は出来る限り当時のまま用意したと言っているのに、
そこは何故鉄格子が異常ないままの状態になっていたのでしょう。

・・・私の読み落としでしょうか・・・誰か教えて下さい(><)。
















副題のKはもちろん、清康のK、なんでしょうね。彼の脱獄後についてが、一番驚かされたかも。
ツッコミ所は確かに満載なんですが、本格ミステリ好きにとってはなかなかに楽しめる一冊
でありました。
もちろん、所々で今回もイラっとさせられる描写がありましたけどね(笑)。まぁ、これが
まほろタンの個性なんでしょう。相変わらず、例の天帝シリーズに手をつける気には全くもって
なれませんが(^^;)、このシリーズは今後も追いかけて行きたいな(イエ先輩ファンびいき
なので^^)。