ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

飴村行/「粘膜戦士」/角川ホラー文庫刊

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飴村行さんの「粘膜戦士」。

占領下の東南アジアの小国ナムールで、大佐から究極の命令を下された軍曹。抗日ゲリラ、ルミン・
シルタと交戦中、重傷を負い人体改造された帰還兵。複雑な家庭事情を抱え想像を絶する悲劇に
見舞われる爬虫人好きの無垢な少年。陸軍省の機密書類を盗み出そうとして捕らわれた2人の
抗日分子。そして安住の地を求めて山奥に辿り着いた脱走兵……。戦時下で起こる不可思議な事件。
目眩く謎と恐怖が迫る、奇跡のミステリ・ホラー!(紹介文抜粋)


ついに出ました、粘膜シリーズ第四弾。今回は、シリーズ初の短篇集。ただし、短編だからって、
気を抜いて読むと、えらい目に遭う取り扱い厳重注意の短編揃いです。粘膜シリーズのあの濃密な
世界をぎゅぎゅっと凝縮してる分、一作だけでも息切れしちゃう人もいるかも^^;短篇集なので
本書単独で読んでも問題はないのですが、それぞれの作品ごとに今までのシリーズとちょこちょこと
リンクがあるので、前三作を読んだ人ならより楽しめるのではないでしょうか。私は大分忘れ
ちゃってたので気づかない部分も結構あったのですが、巻末の解説でその辺りはさらっと説明が
あるので助かりました。ヘモやんにまた再会出来るとは思わなかったなー(笑)。『粘膜人間』
に出て来たあの河童たちも名前だけは登場してきたし。

まぁ~、今回もエグいわグロいわエロいわ、読んでて度々気が遠くなりそうでしたが、この
ねっとりしたエログロな世界がたまらないんですよね・・・。もはや、粘膜中毒患者になりつつ
ある自分が怖い^^;怖いもの見たさで近づいてしまう、あの感覚。そして、私にとっては、
一度手を出したらもう後戻り出来ない、病みつきになっちゃう麻薬みたいなシリーズです^^;
ほんとに、飴村行って作家の頭はどうなってるんだろう、と思いますよ^^;まぁ、ある意味
天才なんでしょうね、ほんとに。唯一無二の作家なのは間違いないと、おもいます・・・。

ただし。グロいのとか痛いのとか、気持ち悪いのとか、ダメな人には絶対オススメしません。
いや、私だってそういうの好きじゃない筈なんだけどさぁ・・・。ヘタに薦めると、人格疑われ
そうだから、一応断っておきますよ。読む勇気がある人だけ、挑戦してみてください。


巻末の解説が杉江松恋さんじゃなくなったのがちょっと残念だったのですが、今回担当した
村上貴史さんの解説も、なかなか粘膜世界の魅力に取り憑かれた感が溢れでていてステキです。

『(中略)この新作には、五つの粘膜世界が収録されている。粘膜初の短篇集なのである。
粘膜長編未体験の方々で、その“濃そうな雰囲気”に手を出すのをためらっている方々で
あれば、本書の短篇で粘膜世界を垣間見てみるのもよかろう。十分に粘膜らしい粘膜を
味わうことができるので。』

粘膜らしい粘膜って^^;もはや、何が言いたいのかさっぱりわかりませんが(^^;)、
でも、このシリーズの読者ならばうんうん頷けちゃうから不思議。
そもそも、それぞれの短篇のことを『第一の微粘膜』『二枚目の微粘膜』なんて表現してる
所にウケてしまいました(笑)。短篇だから規模がちっちゃい粘膜ってことで微粘膜ね(笑)。


一作ごとに感想を書きたいところですが、ちょっと体調不良の為割愛^^;
二作目の『肉弾』『ルミルミルミ・・・』にも触れたかったし、四作目の『極光』の新たな
拷問手段『潜孔』のおぞましさについても言及したいところでしたが・・・思い出すと吐きそう
だからやめておきます・・・。とにかく、トンデモない発想と残酷でえげつない描写の連続で、
脳みそ溶けちゃいそうでした^^;;


どの短篇も粘膜世界の面白さを十二分に兼ね備えながら、オチまでしっかり考え込まれた逸品
揃い。シリーズファンなら間違いなく楽しめるでしょう。
ただ、解説の村上さんもおっしゃってますが、このシリーズ独特のユーモラスな部分が今回は
少なめだったのがちょっと残念だったかな。くすりと笑える笑いの部分が好きだったりするので。


今後はどんな粘膜未来が展開されるのか。私も、いちファンとして今後もずっと追い続けて行く
所存であります(これぞ粘膜宣言!?^^;)。