ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

有栖川有栖/「高原のフーダニット」/徳間書店刊

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有栖川有栖さんの「高原のフーダニット」。

「オノコロ島ラプソディ」容疑者には鉄壁のアリバイ。国産み神話の淡路島で、火村を待ち受ける
奇天烈な事件。「ミステリ夢十夜有栖川有栖は近ごろ怪夢を見る。火村と彼を次々と不可思議が
襲う夢だ。今夜もきっと…。「高原のフーダニット」弟を手にかけました…美しい高原を朱に染めた
双子殺人事件は、一本の電話から始まった。透徹したロジックで犯人に迫る、これぞ本格=
フーダニットの陶酔。ミステリ界の名手、初の中編集(紹介文抜粋)。


有栖川さんの火村シリーズ最新作。今回は、ちょっと趣向を変えた中編が三編収められています。
うち一作『ミステリ夢十夜は、漱石夢十夜からヒントを得た、アリスが見た夢の世界が
十通り描かれるという形の為、より異色の作品と云えるのではないでしょうか。私は面白かった
ですけど、純粋な推理ものが読みたい方にはちょっと戸惑うところもあるかも。まぁ、一作目と
三作目はしっかりいつものロジック重視の推理物なので、ちょっとした息抜きとして読むべき
作品かもしれないですね。一作目は孤島もの、三作目はフーダニットものと、ミステリファン
垂涎の題材を持って来ているので、ミステリとしてさほど物足りなさはないと思うのですけれど。
ただ、若干、今までの作品集に比べるとインパクトは弱い印象ではありましたけどね^^;


以下、各作品の感想。

『オノコロ島ラプソディ』
多忙な火村准教授が、淡路島を行ったり来たりしてヘトヘトになっているのが、ちょっと気の毒
になりました。その傍らでアリスは呑気に滞在しているしね(苦笑)。
冒頭の、アリスと編集者の叙述トリックものに関するやり取りが興味深かったです。アリスに
挑戦的な編集者の態度にちょっとムカっとしましたけど。実際の有栖川さんにこんな風に接する
編集者はいないでしょうけどねぇ。34歳のアリスの作家活動はまだまだ新人扱いって感じ
なんですかね(苦笑)。

『ミステリ夢十夜
先述したように、アリスの夢の世界が十通り出てきます。夢の中の話ですから、ストーリーに
脈絡がなかったり、オチらしきオチがなかったりしますが、まぁ、それはそれ。普段からは
見られない火村センセやアリスの姿も出てきたりして、私は結構楽しめました。それにしても、
夢の中ででも小説のネタ考えてるのね、アリス(笑)。いろんな脇役キャラが出てくるのも
楽しいですね。福男競争(かどうかは、最後に判明しますが^^;)に必死になる火村センセイ
が新鮮でした(笑)。たそがれ仮面のやつも面白かったな。
ちなみに、元ネタは未読^^;そんな訳で比較することが出来ないのがちょっと残念でした。

『高原のフーダニット』
双子のどっちがどっちで・・・ってのが終始読んでる間混乱してた気がします^^;
『風谷人』『フーダニット』って読ませるのは、ちょっと苦しくないかな~^^;;ミステリ
好きの私でも、絶対言われなきゃわかんないぞ^^;どっちかっていうと、『風の谷のナウシカ
のファン?って思っちゃうかも(笑)。
その喫茶店『風谷人』の本棚に、自著が置いてあったのをいち早くチェックして嬉しがるアリス
の反応が可愛くてニヤニヤしちゃいました(笑)。
ミステリ的にはそれほど意外性があったようにも感じなかったですけど、それ以外の部分で
ちょこちょこ楽しめたのが良かったです(読み方違う?^^;)。




まぁ、私は盲目的なシリーズファンなので。アリスと火村センセが一緒にいるってだけで、
もう十二分に満足なんですねー。ほんと邪まなファンですいません^^;
それにしても、装幀がいつもかっこいいね、有栖川さんの本は。最近、黒枠が多い気がするけど、
敢えて揃えているのかな。本棚に並べたら揃っていて綺麗そうだ。