ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

湊かなえ/「サファイア」/角川春樹事務所刊

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湊かなえさんの「サファイア」。

市議会議員の選挙アルバイトを始めたことがきっかけで、議員の妻となった私は、幸せな日々を
送っていた。激務にもかかわらず夫は優しく、子宝にも恵まれ、誰もが羨む結婚生活だった。だが、
人生の落とし穴は突然やってきた。所属する党から県議会議員への立候補を余儀なくされた夫は、
僅差で落選し、失職。そこから何かが狂いはじめた。あれだけ優しかった夫が豹変し、暴力を
振るうようになってしまった。思いあまった私は……。絶望の淵にいた私の前に現れた一人の
女性――有名な弁護士だという。彼女は忘れるはずもない、私のかけがえのない同級生だった……
(「ムーンストーン」より)7つの宝石が織りなす物語。湊かなえ新境地がここに(紹介文抜粋)。


一言メッセージでは返却期限に間に合わないから諦めたと書いたのですが・・・やっぱり、
意地で読み切りました(笑)。貫井さんに時間かけすぎちゃって、湊さんを読む余裕がないなー
と思ったんですけどね。この人の作品は読みやすいから、案外行けそうかな?と読み始めたら、
案の定、読みやすい、読みやすい(笑)。ページ数も少ないから、結構さくさく読めちゃいました。
なんといっても、湊作品は予約数が多いだけに、これを逃すと次いつ読めるかわからないですからね~
^^;;人気のある作品はなるべく早く読んで早く返すようにしてるんですが、今回ばかりは
返却期限当日の返却でゴメンナサイって感じです^^;

今回はまた今までとちょっと趣向を変えて、宝石をテーマにした7つの短篇が収められています。
宝石といっても、猫目石に見立てた猫の目、なんてのもありましたが^^;それぞれに違った
タイプの作品になってるので、マンネリな印象は全然なかったですね。湊さんらしい黒ーい
作品もありましたけど(笑)。

個人的に、一番あっと言わされたのは↑の紹介文にあらすじが載ってるムーンストーンですね。
あんまり書くとネタバレになっちゃうのでやめておきますが、完全に作者の奸計にはまって読んで
ました。他の作品があまりミステリ要素が強くないだけに、全く油断してましたね^^;最後の
反転はお見事、でした。

読んでて一番『黒っ!!』と思ったのは、さっきちょっと触れた猫目石。親切に愛猫を
助けてもらったくせに、なんて病んだ女なんだ、と呆れましたね。恩を仇で返すとはまさに
このことでしょうね。まぁ、猫を助けてあげた家族の方もそれぞれ問題ありましたが^^;
冒頭の『真珠』の林田と平田の会話も、のっけから湊節全開の黒さで『うわっ』と思いましたね
(苦笑)。実年齢33歳の人間に対して、サバ読んで40歳って^^;

あと、表題作のサファイアと、ラストの『ガーネット』が続きものになってるところも
良かったですね。『サファイア』のやりきれないラストには、胸が塞がる思いがしましたが、
『ガーネット』では、少し主人公に救いがあるラストになっているのが良かったです。
でも、『ガーネット』の冒頭部分は、湊さんが『告白』出した時の体験談かとちょっとドキッと
してしまいました(苦笑)。きっと、主人公と同じような感想がたくさんネットに寄せられた
んでしょうねぇ・・・。
『ガーネット』の後半の展開は、ちょっとご都合主義的過ぎないかなぁと思ったけれども、
まぁ、『サファイア』の主人公が抱える鬱屈を晴らしてあげるには、これ位の展開にしないと
無理だったんだろうな。物欲がなくておねだりが苦手、っていう主人公の性格は、ちょっと
自分と似てるところがあって共感出来ました。一人旅はしたことはないですけど、一人で出かける
のが楽って気持ちはよくわかりますしね。

『宝石』という綺麗なものがテーマでも、内容は湊さんらしい毒要素が多くて、結構ドロドロ
した作品が多かったかなー。でも、ラストの一作に救いがあったので、読後感は悪くなかった
です。湊さんの新境地、まで行くかは微妙な感じもするけれど、一つのテーマでこれだけ
毛色の変わった作品が書けるっていうのは、それなりに実力をつけている証拠なんじゃないのかな
(何気に上から目線?^^;)。
なかなかに楽しめた一冊でした。なんとか読みきれて良かった~^^;;
明日が返却期限だから、朝イチで返してこなきゃ^^;