ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

薬丸岳/「死命」/文藝春秋刊

イメージ 1

薬丸岳さんの「死命」。

榊信一は大学時代に同郷の恋人を絞め殺しかけ、自分の中に眠る、すべての女に向けられた殺人願望
に気づく。ある日、自分が病に冒され余命僅かと知り、欲望に忠実に生きることを決意する。それは
連続殺人の始まりだった。榊の元恋人だけが榊の過去の秘密を知るなか、事件を追う刑事、蒼井凌
にも病が襲いかかり、死へのカウントダウンが鳴り響く。そして事件は予想もしない方向へ
―衝撃の展開、感涙の結末(紹介文抜粋)。



えっと、久しぶりの記事更新で恐縮ですが・・・結構黒べるよりの記事になっちゃってます^^;
辛口記事が苦手な方、薬丸ファンの方はご遠慮頂いた方が良いかもです・・・すみません^^;;





薬丸さんの最新作。余命を宣告された男が、殺人願望に抗い切れずに次々と女性を殺害して行く。
一方、同じ病に犯された余命わずかの刑事が、自分の生命をかけて殺人犯逮捕に奔走する・・・
と、殺人犯とそれを追う刑事双方の視点が交互に出て来るサスペンスミステリ。今回も、
リーダビリティがあるのでぐいぐい引きこまれて読まされて行ったのだけれど・・・うーーん。
薬丸さんだし、何かいろいろと意味深な伏線らしきものがちょこちょこと出て来るので、
最後であっと言わせる展開が待ち受けているのかな、とかなり期待して読んでしまっただけに、
ラストで『・・・え、終わり?』みたいな感想になっちゃいました^^;;↑の紹介文にある
ような、予想もしない方向っていうのは、はっきりいってひとつもなかったです・・・。
例えば、榊の殺人衝動に関しても、もっと何か裏に深い理由があるのかと思ったら、そうでも
なかったし・・・殺人衝動が特定の女ではなく、すべての女に向けられる理由も、いまいち
はっきりしなかったし。きっかけは過去のある出来事っていうのはわかるんですが、その
出来事も、恋人だった澄乃が、その出来事が起きた時に自分がした行動をかなり重く受け取って
後悔しているので、どれだけ大それた事件が起きたのかと思っていたのに、真相は大した
衝撃でもなかったですし。主人公榊の殺人に関しても、内心で、実は殺人を犯していたのは
違う人物で・・・とか、そういうどんでん返し的なものがあるのかなーとか期待してたり
したんですよね。薬丸さんなら、何かしらのトリッキーな仕掛けを用意してるんじゃないか、って。
あと、刑事の蒼井が亡くなった奥さんと知りあったきっかけの事件に関しても、実は今追ってる
榊の過去の事件と関係があって、ラストで真相がわかったりするのかと思いきや、何の関係も
なく、結局真相は闇の中で終わっちゃったし。
何かいろいろ、拍子抜けだったなぁ、と。それに、澄乃の最後の言葉も、もっと衝撃的な
何かを言い残しているのかと思っていたのに・・・『え、それ?』って感じだったしなぁ^^;

どうも、前作の『ハードラック』から、薬丸さんらしからぬ作品が続いているような気が。
前作でも思ったんですが、薬丸さんはやっぱり司法の問題を掘り下げた作品の方が実力が発揮
出来るんじゃないのかなぁ。サイコキラーものとして、途中まではなかなか緊迫した展開で
読ませてくれただけに、結末部分のツメが甘かったのが残念でした。せめて一箇所くらい
どんでん返し的な展開があったら違ってたと思うのですが。



久々にちょっと辛口記事になっちゃいました。黒べるこが久々登場で嬉しそうです・・・(嘘)。
面白くなかった訳じゃないんですよ。読んでる時は十分のめり込んで読めましたし。
ただ、薬丸さんなだけに、もっと意外性のある結末が待ってると期待しちゃったのが
敗因かな、と。
また司法系の力作が読みたいな。次回作に期待します。