ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東川篤哉/「中途半端な密室」/光文社文庫刊

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東川篤哉さんの「中途半端な密室」。

テニスコートで、ナイフで刺された男の死体が発見された。コートには内側から鍵が掛かり、
周囲には高さ四メートルの金網が。犯人が内側から鍵をかけ、わざわざ金網をよじのぼって逃げた!?
そんなバカな!不可解な事件の真相を、名探偵・十川一人が鮮やかに解明する。(表題作)謎解き
の楽しさとゆるーいユーモアがたっぷり詰め込まれた、デビュー作を含む初期傑作五編(紹介文抜粋)。


だいぶ前に読み終わっていたのですが・・・なかなか記事を書く時間が取れずに時間が空いて
しまいました^^;
東川さんの文庫新刊・・・ってもう全然新刊じゃないですね^^;回って来るまでにかなり
待たされちゃいました。文庫だから蔵書も少なかったのかなー。
いきなり文庫で新刊が出たから驚いたのですが、デビュー作を含め、初期の頃に書かれた短篇
を集めたものだそうで。冒頭の一作以外は、大学生の敏ちゃんが探偵役のシリーズもの。敏ちゃん
と友人のミキオのキャラはなかなか良いのに、四作書いてお蔵入りになっていたなんてちょっと
可哀想。でも、まぁ、こうして人気作家になって目出度く日の目を見れたので良かった、良かった。
デビュー作からいつものゆるーいユーモアセンスは健在。そして、ユーモアの中にもしっかり
本格ミステリになっているところも。やっぱり東川さんはこうでなくっちゃねー!


以下、各作品の感想。

『中途半端な密室』
栄えあるデビュー作だそうです。テニスコートの変死事件と、巷で騒がれている暴行犯による
暴行未遂事件。一見まったく接点のなさそうな二つの事件が綺麗に繋がるところはお見事。
中途半端な密室の謎もなるほど~!って感じでした。一つ一つ説明されるとすとんと納得
できちゃうところがさすがですね。名探偵十川一人はこれ一作きりのキャラになっちゃったん
ですかね。ちょっとキャラ的にも中途半端な感じもしたので、仕方ないのかも(苦笑)。

『南の島の殺人』
南の島で起きた奇妙な殺人事件の顛末を友人から手紙で報告されたミキオと敏ちゃんが、殺人の
謎に挑む、というもの。言ってみれば安楽椅子探偵ものですかね。
南の島の正体(?)と、傘を指さなかった理由には驚かされました。これって、その場所だと常識
なんですかね、ホントに?

『竹と死体と』
竹の上の老婆の死体の理由は、大抵の人が見当がついてしまうのじゃないかなぁ。割と思った
通りだったので拍子抜け。老婆の死の理由も「えー」って感じでした^^;老婆の死の記事が
載った新聞の日付から前日の天気に思いが行くところは感心させられましたけどね。

『十年の密室・十分の消失』
またしても旅先で事件に巻き込まれた友人の則夫は、事件の謎を解き明かして欲しいと敏ちゃんに
手紙を送ってくる。でも、面倒くさがりの敏ちゃんは、自分で読まずにミキオに朗読させて、史上
類を見ない、ものぐさ探偵っぷりを発揮(笑)。丸太小屋が10分で消失した理由は、まぁ、
本格ミステリでは常套手段といえなくもないかな。美也子さんの態度がなんだかいろいろ怪し
かったから何かあるのかなーと勘ぐったりしたんですが、別に何もなかったからちょっと拍子抜け
でした^^;

有馬記念の冒険』
有馬記念の最中に起きた事件ということで、細かい時間設定が出来るという所が巧いですね。
HDDの機能を上手く使ったアリバイトリックで、烏賊川市シリーズ一作目の『密室の鍵貸します』
の内容を彷彿とさせますね。オーソドックスなアリバイトリックですが、なかなか良く出来て
いるのではないかなーと思いました。



ものぐさな性格の敏ちゃんとミキオのとぼけた会話が楽しかったです。このシリーズはもう
書かれないのかなぁ。たまに手紙で謎解きをお願いしてくる友達の則夫のキャラも面白かった
です。
とぼけたユーモアセンスとしっかりした本格ミステリを融合させた、東川さんらしい短篇集だと
思います。お気軽に読めて面白かったです。