ミステリ読書録

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有川浩/「空飛ぶ広報室」/幻冬舎刊

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有川浩さんの「空飛ぶ広報室」。


不慮の事故でP免になった戦闘機パイロット空井大祐29歳が転勤した先は防衛省航空自衛隊航空幕僚
監部広報室。待ち受けるのは、ミーハー室長の鷺坂(またの名を詐欺師鷺坂)をはじめ、尻を掻く
紅一点のべらんめえ美人・柚木や、鷺坂ファンクラブ1号で「風紀委員by柚木」の槙博己、鷺坂
ファンクラブ2号の気儘なオレ様・片山、ベテラン広報官で空井の指導役・比嘉など、ひと癖も
ふた癖もある先輩たちだった……。有川浩、渾身のドラマティック長篇小説(紹介文抜粋)。


有川さんの最新作。発売日に予約出来たので、目出度く一番手で回って来ました。人気作家は
入荷数が多いから助かります。でも、東野さんは発売日予約なのに反映されてみたら55番目に
・・・しかも、発売日(10日)午前中に予約したのに、予約日が12日にされててショック。
酷いよ。2日もずれてたら、そりゃ東野さんなら55番目になっちゃうよ。クレーム言おうかなぁ
・・・ぐすぐす(><)。

と、愚痴はこれくらいにして(失礼しました^^;;)。
久しぶりに有川さんの自衛隊もの。実は、ワタクシ、有川さんは大好きな作家さんなんですが、
彼女の自衛隊物ってすごく苦手なんですね。だから、今回もどうかなぁ、と思ったんですけど。
でも、まぁ、うん。なかなか面白かったです。今回、取り上げているのが、自衛隊自衛隊でも、
『広報室』ですから。今までの作品とはちょっと違った切り口だったせいもあるかもしれません。
自衛隊の中にも広報ってあるんですね。そこからして、目からウロコの思いがしました。確かに、
自衛隊って、偏見の目で見られることが多いでしょうからね。きちんと、自衛隊のお仕事を宣伝して、
正しく彼らのことを伝えることは大事なことなんでしょうね。私自身も、本書のヒロインである
稲葉リカ嬢ほどではないものの、自衛隊がどんなところなのか、どんな人たちなのかなんて、
全然わかってないですもの。といっても、身近で自衛隊に勤めてた人が何人かいるので、リカ
のように偏ったマイナスイメージなんてないですけどね。それよりは、災害時に危険な仕事を
請け負ってくれる、ありがたい方々、みたいな印象の方が強いかも。特に、昨年の東日本大震災
があってからは、世間的にもそういう見方をする人の方が多いんじゃないのかなぁ。リカのように、
『戦闘機=人殺しの為の機械』みたいに思う人なんて、そうそういない気もするんですけど。
また、随分極端な考え方するキャラを持って来たなぁ、と思いながら読んでました^^; まぁ、
彼女の考え方も、主人公の空井を始めとする、自衛隊広報室のメンバーたちと触れ合ううちに
変わって行くので、彼女自体の印象も大分後半からは良くなって行きましたけれどもね。

主人公の空井は、憧れだったブルーインパルスの操縦士に内定していながら、直前で不慮の
交通事故に遭い、パイロット免許を剥奪された挙句、広報室に異動になった自衛官。慣れない
広報活動に四苦八苦する中、広報新人の彼にあてがわれたのは、自衛隊嫌いの女性テレビ
ディレクターのお相手。彼女に自衛官のことをちゃんとわかってもらいたいと奮闘するうちに、
空井は、次第にパイロット剥奪の傷が薄れて、広報のしごとにも馴染んで行く、というのが大筋。

もともと、この話を書くことになったきっかけ自体が、自衛隊広報室長からの航空自衛隊
話を書きませんか』という申し出だったというのだから、そりゃ、リアルに書ける訳です。
広報室長の広報活動が、見事実を結んだという訳ですね。有川さんほどの人気作家に題材に
してもらえたら、そりゃ~いい宣伝になりますでしょう。多分、県庁おもてなし課を読んで
たんでしょうね、その室長。あれも、似たような経緯で、『高知を舞台に小説を』っていう、
相手からの売り込みが発端じゃなかったでしたっけ。

ただ、そういった内部取材が全面的に文章に反映されてる分、非常にリアルなのはいいんですけど、
その分、自衛隊内の専門用語や説明描写が多いので、ちょっと読みにくく感じることもしばしば。
有川さんの自衛隊ものが苦手な理由のひとつが、そこにあるんですけどね。わかる奴だけついてこい!
って感じの、ひとりよがりな印象受けちゃうんですよね。どうしても。この苦手感覚、なかなか
上手く説明できないのがもどかしいんだけど。有川ファンから総スカン食いそうなこと書いて
ますよねぇ、わたし・・・(すすす、すみません^^;)。
いや、面白かったんだってば。十分。でも、なんかね。有川さんの自衛隊愛が強すぎてね。
ちょっと退いちゃう自分がいるんですよね。ひねくれてて、すみません^^;


あと、今回残念だったのは、もうちょっと有川さんらしいラブ要素が入ってて欲しかったなー
ってところ。空井とリカの、そういうシーンがもっと見たかったなーってね。あと一歩、って
とこだったのに、なぜそこ止まりなんだーー!!って悶えました。いつもの有川さんだったら、
むりくりでもラブラブ方向に持って行くのにさ。柚木と槇のでさえ、強引に持って行ったのに。
そこが、読み終えて、なんか物足りなさを感じた一番の理由かも。最後に挿入されてる短篇の
『あの日の松島』で、もっと進展があるかと期待したんですけどね。やっぱり、内容が震災
のことなので、そういう要素を挟む余地がなかったってことなんでしょうかね。あの時の
自衛官たちの頑張りは、本当に頭が下がる思いがしましたからね・・・。生で、現地で体験
した自衛官たちが、有川さんの取材中、その時のことを話してる途中で不意に涙する、という
部分を読んで、胸が詰まる思いがしました。


本書を読んで、自衛隊のひとたちも、一般企業のように、自分たちの仕事を理解してもらう為に、
イメージアップ戦略に努めたりするんだなってことがよくわかりました。
あと、私も、ブルーインパルスの航空ショーが見てみたくなりました。