ミステリ読書録

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畠中恵/「さくら聖・咲く 佐倉聖の事件簿2」/実業之日本社刊

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畠中恵さんの「さくら聖・咲く 佐倉聖の事件簿2」。

中学生の弟・拓を養うため、元大物政治家・大堂剛の事務所で事務員として働く佐倉聖は大学三年生。
大堂のコネを使わずに、就職活動に励む日々を送っている。大堂門下の議員達から持ち込まれる
難問珍問を鮮やかに解決してきた手腕で、大企業の面接中、閉じ込められた社員救出(?)に一役
買ったり、加納代議士のストーカー騒ぎ、候補者の当落を予想する“神”の正体捜し等の謎を
次々に解明。一方で、インターンシップ先をなぜだか二ヶ月で首になったりと、就職戦線は波乱
含み。そんな聖のもとに、エントリーしていない五つの会社から「内定」通知が舞い込む……。
聖の前に広がるのは、果たしてどんな未来なのか? 人気シリーズ「しゃばけ」の作家が贈る
ユーモアミステリー最新刊。『アコギなのかリッパなのか』待望の続編!(紹介文抜粋)


奇しくも、畠中さん二連発になりました^^;別に狙った訳ではなく、たまたま同じ時期に
回って来ちゃったんですよね。
もう、作品があったことすら忘れかけていた(^^;)『アコギなのかリッパなのか』の続編。
政治の世界の話の割に読みやすかったというのと、主人公の聖が元不良の割には生真面目に仕事
に取り組むところに好感が持てて、結構好きな作品だったので、続編刊行は嬉しかったです。
畠中さんの現代ものってあまりいい印象なかったんですけどね。唯一、この作品だけは気に入って
たんですよね~。
聖の身の上のこととか大分忘れていたので、読み進めながら思い出すような感じでした。
大堂以外の脇役キャラのことはさっぱり覚えてなかったですね^^;弟がいたことくらいは覚えて
ましたけど。

今回は、中学生の弟を養う為に、政治の世界とは無関係な、まともな就職先に就くため、聖が就活
に四苦八苦するお話。元大物政治家・大堂の下でアルバイトしていることが、なぜか就活先で
知られていて、コネがあると見なされて社員から恨みを買ったり、インターシップに行った
商社で云われのない噂を立てられクビになったりと、聖の就活はなかなか上手くいきません。
そうやって苦労しながら就活を続ける中で、聖は本心ではまだ大堂や事務所のみんなと離れたく
ないのかもしれないと思い始め、就職に対する心が揺れ動くように。最終的に聖が出す結論とは?
というのが大筋。
弟の為に堅実な企業に就職したい、という聖の気持ちは立派ですが、読んでいて、どう考えても
大堂の下でテキパキ働いているのが一番生き生きしているのがわかるのに、ぐだぐだ就活に
悩む彼にちょっとイラっとしました。

『女子学生は超氷河期』と言われた時代に就活をしていた身としては、コネだって何だって就職
できればいいじゃん、とか不埒なことを思ってしまうのですけれどね。あの当時は、自分にコネが
あればなぁ・・・と何度も思いましたもん。聖が絶対大堂関係のコネでは就職したくない、と
自力で頑張ろうとする姿勢は偉いなぁと感心しましたけれど。聖って、元不良だとは思えない位、
今は好青年ですよねぇ。弟の為に家事は完璧だし、奨学金の関係で学力も良い成績をキープして
いるらしいし。ほんと、頑張りやさんだなぁ、と思う。だからこそ、もう少し自分の為に生きても
いいんじゃないのかなーと思ったりして。弟の拓もそうして欲しいと思ってる訳だし。
見てくれも悪くないようだし、女性にモテそうなのに、そういう要素は全く出て来なかったですね。
大堂の秘書(姪)の真木とそういう雰囲気になってもよさそうなものなのに、お互いに全くその気
なし、だし。まぁ、真木のあの男見る目のなさと、男に入れ込むダメ女加減をみたら、どんなに
美人でも恋愛モードにはなれないでしょうね(苦笑)。

結局、聖の就職がどうなるのか、という点については、正直ここまで引っ張っておいて、そんな
決め方!?とかなり肩透かしを食らった気分でした。そんなんで自分の人生決めていいのかよー!
とツッコミたくなりましたもん。このオチだったら、そのまま『アキラ』で就職、とかの方が
まだ納得出来たような・・・。まぁ、聖にとっては、最良の道、なのかもしれないですけども。
でも、あれだけコネ入社は嫌だって拘っていたのに、ねぇ。大堂たちとの縁が切れずに続きそう
なところは嬉しかったですけどね。大堂が、なんだかんだで聖が就職して自分から離れてしまう
のが寂しいせいか、聖に突っかかったり駄々をこねたりするところが、なんだか可愛らしくて
ちょっぴり微笑ましかったです。

ミステリとしては、相変わらずゆるいです。別にミステリを期待して読んだ訳じゃないから
その点に関してガッカリってのはあんまりなかったですけど。
しゃばけシリーズや他の時代もの作品とは全く雰囲気が違うので、そっちから入った人は
戸惑われるかもしれないですね。