ミステリ読書録

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東野圭吾/「虚像の道化師 ガリレオ7」/文藝春秋刊

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東野圭吾さんの「虚像の道化師 ガリレオ7」。

新興宗教の教祖が送る念、奇妙な幻聴、不可思議な殺人現場、犯人が仕掛けたトラップ。ガリレオ
こと湯川がすべての謎を解き明かす東野圭吾の代表作、「ガリレオシリーズ」の最新短編集。ビル
5階にある新興宗教の道場から、信者の男が転落死した。その場にいた者たちは、男が何かから
逃れるように勝手に窓から飛び降りたと証言し、教祖は相手に指一本触れないものの、自分が
強い念を送って男を落としてしまったと自首してきた。教祖の“念”は本物なのか? 湯川は
教団に赴きからくりを見破る(「幻惑(まどわ)す」)。突然暴れだした男を取り押さえようと
して草薙が刺された。逮捕された男は幻聴のせいだと供述した。そして男が勤める会社では、
ノイローゼ気味だった部長が少し前に自殺し、また幻聴に悩む女子社員もいた。幻聴の正体は――
(「心聴(きこえ)る」)。大学時代の友人の結婚式のために、山中のリゾートホテルにやって
来た湯川と草薙。その日は天候が荒れて道が崩れ、麓の町との行き来が出来なくなる。ところが
ホテルからさらに奥に行った別荘で、夫婦が殺されていると通報が入る。草薙は現場に入るが、
草薙が撮影した現場写真を見た湯川は、事件のおかしな点に気づく(「偽装(よそお)う」)。
劇団の演出家が殺された。凶器は芝居で使う予定だったナイフ。だが劇団の関係者にはみな
アリバイがあった。湯川は、残された凶器の不可解さに着目する(「演技(えんじ)る」)。
読み応え充分の4作を収録。湯川のクールでスマートな推理が光る、ガリレオ短編集第4弾
(紹介文抜粋)。


東野さんのガリレオ最新作。なぜか今回からタイトルに今までついてなかったガリレオ7』
副題が。
・・・い、今更?^^; でも、来月発売予定のシリーズ新刊にもガリレオ8』とつくようです。
まぁ、今まで出版形態がバラバラで、シリーズの順番がわかりにくかったから、出版社側の
配慮なんでしょうけども。これから再版される既刊のシリーズにはそれぞれに1とか2とか
つくんですかねぇ。

今回は短篇集。このシリーズは、短篇と長編が交互に出ることが多いですね。私は個人的には
キレのある短篇集の方がこのシリーズは好きなんですが、長編の方が読み応えがあって好き
という方も多いでしょうね。『容疑者X~』が東野作品の最高峰だと捉える人も多いと思います
しね(もちろん、私もそう思います。なんせ、海外の有名な賞レースにノミネートまでされ
ましたからね~)。
でも、私は物理トリックのキレがあるのは短篇の方だと思うんですよねぇ。長編だと、人間
心理の方に重点が置かれていて、本来の持ち味である物理トリックがちょっと弱くなるような
印象があって(前作真夏の方程式がまさにそんな感じだった^^;)。
私は元来完全文系人間なので、普段は理系のトリックってかなり苦手なんですけど、このシリーズ
だけは物理トリックなのにわかりやすくて、素直に感心出来るところが好きなんですよね。
だから、余計な要素がなくて、物理トリックだけで勝負する短篇が好きなんだと思います。
あと、捻りの聞いた(っていうか、普通に読めない^^;)短篇のタイトルの付け方も好き
なんですよね。

今回収録の四作も、それぞれに違った味わいで楽しめました。草薙刑事の出番が多かったのも
嬉しかったな。やっぱり、湯川先生の相棒は草薙刑事の方がしっくり来ると思うので・・・
内海さんのキャラも嫌いじゃないですけど、湯川先生のお茶目な面とか意外な面を引き出せる
のは、草薙刑事が相手の時だと思うんですよねー。なんせ、大学時代からの腐れ縁ですからね(笑)。
今回は二人で大学時代の友人の結婚式に出席するお話も入ってて、二人の学生時代の付き合いが
垣間見れたのも良かったですね。


では、以下、各作品の感想。

第一章『幻惑す(まどわす)』
指一本触れずに、信者を死に追いやった教祖の力は本物なのか。なんか、仲間さんと阿部ちゃんの
『トリック』みたいなお話でしたね~。いかにも教祖のやることは胡散臭くて、取材に行った
女性記者がまんまと騙されて取り込まれてしまうのが不思議でした。でも、その場で実際
こういうことをやられたら、心に迷いがある人間なんかは信じちゃうんだろうなぁ。ほんと、
宗教って怖いな。

第二章『心聴る(きこえる)』
ある特定の人にだけ幻聴を聴かせ、精神的にダメージを与える・・・なんとも、不確定ながら
恐ろしいやり方です。犯人が女子社員に耳鳴りを聴かせた理由にぞぞーっとしました。こんな
ことやられたら、絶対逆効果な気がしますが・・・。身勝手な犯行理由にムカムカしました。
病院で男を取り押さえる草薙刑事がかっこいい~と思ってた矢先、直後の奇禍に息を飲みました。
・・・無事で良かったよ~~~(ToT)。

第三章『偽装う(よそおう)』
先述したように、湯川先生と草薙刑事が、学生時代の友人の結婚式に出席する為地方に赴き、
殺人事件に遭遇するお話。被害者がロッキングチェアに座った状態で死んでいたことから、
真相を導く湯川先生の推理に感心しました。
それにしても、傘を借りただけであそこまで義理を感じるとは、湯川先生、意外に人情派?
それとも、単に綺麗な女性に弱いだけだったりして(笑)。
湯川先生と草薙刑事、どちらが先に結婚するかは・・・やっぱり草薙刑事の方に軍配が上がる
ような気が(笑)。恋愛に溺れる湯川先生・・・み、見たくない(ToT)。

第四章『演技る(えんじる)』
倒叙ミステリなのかと思って読んでいたのですが・・・あっさり騙されました^^;オーソドックス
な騙しの手法なのに、まんまとはめられてしまった。
これ、一体どこに物理トリックが使われるんだろう、と首をかしげながら読んでいたのですが、
最後にちゃんと出て来ました。
花火の写真の月の位置を見て、撮影場所を推理する内海さんの鋭さに舌を巻きました。ドラマと
違って、原作の内海さんはかなり頭がキレる女性ですよね。でも、脳内映像では完全に柴咲コウ
定着してますけどね(苦笑)。


今回も湯川先生素敵でした~。このシリーズは無条件で楽しめて大好きです。
来月発売の『禁断の魔術』も楽しみです!13日の土曜日発売だそうで。仕事あるから、その日に
予約は難しそうだなぁ(涙)。とにかく、早めに予約しようっと。