ミステリ読書録

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宮部みゆき/「ソロモンの偽証 第1部 事件」/新潮社刊

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宮部みゆきさんの「ソロモンの偽証 第1部 事件」。

クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。彼の死を悼む声は小さかった。けど、噂は強力で、
気がつけばあたしたちみんな、それに加担していた。そして、その悪意ある風評は、目撃者を名乗る、
匿名の告発状を産み落とした―。新たな殺人計画。マスコミの過剰な報道。狂おしい嫉妬による異常
行動。そして犠牲者が一人、また一人。学校は汚された。ことごとく無力な大人たちにはもう、
任せておけない。学校に仕掛けられた史上最強のミステリー(紹介文抜粋)。


宮部さん久しぶりの現代ミステリー。三部作で出る予定の第一作目。二作目も予約中ですが、
もう少し回って来るのはかかりそうかな。
総ページ数741ページ。いやー、時間かかりました。いつもの如くにぐいぐい読ませる
リーダビリティは健在ではあるのですが、いかんせん、私の側に読む時間がない^^;まとめて
数時間読書に割くってことが出来ない為、ちまちま読まなきゃいけなくて、やたらに日数も
かかってしまいました。一週間以上はかかったんじゃないかなぁ・・・。それに、内容も、
やたらに広げ過ぎていて、どこを焦点に読んだらいいのか途中からだんだんわからなくなって
来たんですよね。それもちょっとつらかった。枝葉末節までしっかり書き込まれていると
言えば聞こえは良いのですが、正直、私にはあちこちに飛び過ぎていて、散漫な印象しか
受けなかったです・・・。これが、第2部、第3部と進むにつれて、きっちり伏線が回収される
なら大したものだと思うのですけれど。いや、宮部さんだから、そうなっている筈だとも思うの
だけれども。それにしたって、第1部だけを読む限り、中だるみしてるなぁって思わずには
いられなかったんですよね。いつもは、先が気になって寝る間も惜しんで読んだり出来るんです
けど、今回はだらけた展開が続くので、若干辟易しながら読んでるところもありました。

人間心理の描き方なんかは、さすがに巧いなーとは思いましたけど。でも、出て来る登場人物が、
主要な登場人物も含めて、ほとんど全て好感持てない人物ばっかりなので、どんよりした気持ち
になりました。一見好感持てそうなヒロイン格の藤野涼子でさえ、どこか上から目線な物の見方に
何度もムカっとしましたし。一番嫌悪感があったのは、三宅樹理ですかねぇ。彼女の卑屈で
下劣な言動の数々には、ほとほと呆れ果てました。事件の被害者である柏木卓也も嫌でした
けどねー。まぁ、彼の場合は、他人からの憶測でしか人物像が語られていないので、実際の
性格とかまではまだわからないですけど。彼の母親にも嫌悪しか覚えなかったなぁ。兄と弟で、
あんなに差別しなくても。母親に、『あんたには関係ない』と言われた時の宏之の心の叫びが
胸に突き刺さって痛かったです。
もちろん、学園の問題児である大出の父親も最低の人間でしたね・・・この親にしてこの子
あり、の典型例じゃないでしょうか。権力振りかざして自分を正当化しようとするなんて、
ほんと、下衆な人間にしか思えなかったです。

嫌な人間ランクでいえば、女教師森内の隣人もすごかったですね。常人の理解を超える思考回路
に唖然としました。森内への恨みも、完全に逆恨みでしかないですし。こんな女に目をつけられ
ちゃった森内先生も可哀想だけど、彼女は彼女で問題ありの教師なので、自業自得なのかな、
とも思いました。生徒を人によってえこひいきするのはどう考えてもイカンでしょう。

構想15年、連載9年の大掛かりな作品だそうで。これだけいじめが問題になって、いじめ
自殺を隠蔽しようとする学校側の態度がメディアに取り沙汰され問題視されている今、この
作品が刊行されたというのは、やっぱり運命的なものを感じますね。宮部さんは、本当に
先見の明がある作家さんだと思います。社会問題を毎回先取りして書いてますからねぇ。

柏木卓也という中学二年の少年の死をきっかけに、様々な人々の様々な思惑が錯綜して行きます。
彼の死の真相はどこにあるのでしょうか。どうも、その肝心な部分を置き去りにして、話がどんどん
脇道にそれてだらけてる感がなきにしもあらずで、後半はちょっと読むのが辛かったです。
もう少し話の焦点を絞って、ページ数少なくても良かったんじゃないのかなぁ、この内容なら。
あと二作でどう話に収拾つけて行くのか、今のところ終着点が全く見えないので、さっぱり見当も
つきません。宮部さんのお手並み拝見、てなところでしょうかね(なぜに上から目線?^^;;)。

しかし、今の私に700ページ超えはしんどい・・・。第2部はそれほど分厚くないようなので
ちょっとほっとしてはいますけど。
これからどんな風に物語が動いて行くのか、続刊を楽しみに待ちたいと思います。