ミステリ読書録

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越谷オサム/「いとみち ニの糸」/新潮社刊

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越谷オサムさんの「いとみち ニの糸」。

濃厚な津軽弁と三味線の使い手、相馬いとが高校二年生になりました。でも、相変わらずちっこくて
泣き虫で、人見知りです。アルバイト先の本州最北端にあるメイドカフェでは、先輩たちから避け
られて、三味線コンサートもマンネリ気味。写真同好会に入ったものの親友と大げんかし、学校も
居心地が悪くて――。どうするの、いとっち!?(紹介文抜粋)


津軽弁で三味線を弾く高校生メイドのいとちゃんが活躍するシリーズ第二弾。引っ込み思案のいと
ちゃんも高校二年生に。新学期のクラス替えで仲の良い友達三人と離れ離れになってしまった
いとちゃん。凹みながらも、仲良しの三人と新たに写真同好会を立ち上げて、それなりに楽しい日々
が過ごせると思った矢先、親友と大げんか。一方、アルバイト先の津軽メイド珈琲店では、先輩
メイドの二人から知らない間によそよそしい態度を取られるようになって落ち込む毎日。
物語の前半は、いとちゃんの冴えない毎日が描かれるので、こちらまで胸が痛かったです。
それでも、小さい身体で一生懸命頑張るいとちゃんが健気で、応援したくなりました。小さい
すれ違いがいくつも重なってしまう時ってありますよね。何をやっても上手くいかない時とか。
今回のいとちゃんも、相手とのちょっとした誤解が生んだものばかりだったので、物語後半で
それぞれの誤解が解けて、いとちゃんに笑顔が戻ってほっとしました。

出て来る登場人物がみんな個性的で、でもあったかい人ばかりでいいですね~。特に、今回
初登場の鯉太郎君。最高にいいキャラです!最初出て来た時は、まさかこの子といとちゃんに
恋の発展があるとは、まったく予想してなかったです^^;こういう子をヒロインの相手役に
据えちゃうところが越谷さんの良いところですね~。見た目よりも中身重視って感じで。
前に読んだ『空色メモリ』もそうでしたもんね。
もう、いとちゃんとはベストカップルって感じで、微笑ましくってほのぼのしちゃいました。

そして、今回もいとちゃんの津軽弁が可愛かったー。メイド服姿で三味線を弾きこなしちゃう
ところは妙にかっこいいし。三味線持った途端に人が変わったみたいになるところも彼女の
魅力のひとつですね。後半、鯉太郎君のお母さんとセッションする所が素敵だったなー。なんか、
将来結婚しても嫁姑問題で苦労しなさそう・・・(←気が早すぎ^^;)。

それにしても、店長と幸子さんの関係の変化にはビックリ。いつの間にそんなことに・・・。
幸子さんの元の旦那の問題が完全に払拭された訳じゃないでしょうけど、幸せになって欲しいです。
周りの人がみんな協力的だし、二人ともしっかりしてるからきっと大丈夫ですよね。
智美さんがいなくなっちゃのはとても寂しいけれど、夢に向かって前進できたのだから
良かったですよね。彼女が最後にいとちゃんに言った『待ってるよ、東京で』のセリフの真意が
気になるところではありますが。

そういえば、今回いとちゃんたちが立ち上げたのも写真同好会。ちょっと前に相沢沙呼さんの
『ココロファインダ』でも女子高生たちが写真部で活躍するお話でしたっけ。いとちゃんや
他の友達たちが、写真の面白さにのめり込んで行くところがなんだか爽やかで良かったですね。
ちゃんと専門知識を身につけた上で写真を撮ると、奥が深そうです。ちょっと興味が湧きました。


最後は気持ち良いくらいの大団円で、楽しく読み終えました。面白かったです。いとちゃんは
ほんとにめごいのぅ。はっ、私まで津軽弁がうつってしまった(っていうか、使い方間違ってる
かもだけどw)。いとちゃんのおばあちゃんも可愛らしかったです。

三の糸もあるみたいなので、楽しみに待っていたいと思います。