ミステリ読書録

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柚木麻子/「早稲女、女、男」/祥伝社刊

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柚木麻子さんの「早稲女、女、男」。

面倒臭くて痛々しいけど憎めないワセジョと、5人の女子の等身大の物語  ●立教大学/立石三千子
 7割の力でそつなく生きる世渡り上手 ●日本女子大学/本田麻衣子 王子様を見定め中のみんな
のアイドル ●学習院大学/早乙女習子 実は型破りに憧れているコンサバ系 ●慶應義塾大学
慶野亜依子 5年先を見越し計画的に生きる素敵女子 ●青山学院大学/青島みなみ 地味な自分
を華やかさで上書きしたオシャレ上級者  それぞれが抱える葛藤と恋。彼女たちの目に、
ワセジョ早乙女香夏子はどう映る……? (紹介文抜粋)


『あまからカルテット』が面白かったので追いかけ始めた柚木さんの新作。タイトルから
人を食ってる感じですよね(笑)。内容は、タイトル通り、早稲田大学に通う男女の日常を
描いた連作集。早稲田の女性って、早稲女(ワセジョ)って呼ばれてるんですね。多分、
これに出て来る主人公の早稲女である香夏子って、かなり特殊なタイプに思えたのですけど、
いかにも『早稲女の典型』みたいに書いてるところにちょっと引っかかりを覚えました。
それとも、実際、早稲田出身の女性が読んだら「そうそう、そうなのよ~」って思うのかしら。
早稲田の実情を知らないので、何とも言い様がないのですけど^^;まぁ、早稲田に限らず、
どこの大学にも香夏子みたいな面倒くさいタイプの女性はいると思うんですけどね。

それにしても、これに出てくる大学卒の女の子たちみんな、面倒くさくてイタイ子ばっかり。
リアルなのは間違いないですけど、読んでていちいちイラっとさせられました。もちろん、
一番痛いのは主人公の早稲女、香夏子でしたけど^^;こういう子とは絶対友だちになりたく
ないなぁ。一見自分を持っていてかっこいい女性、に見えるんですけどね。でも、そういう子
に限って、男関係になると一気にだらしなくなる。どこから見てもしょーもない男にしか
思えない長津田のことを忘れられず、いつまでもイジイジウジウジ。せっかく、爽やかな
イケメンがアプローチしてくれたのに、長津田と比較して「長津田と比べて刺激がない」と
つれない態度。まぁ、どんなにイケメンでも、好きになれなきゃしょうがないのはわかるん
だけどさ。個人的には、エキセントリックなだけで甲斐性ゼロの男のどこに惹かれる要素が
あるのかさっぱり理解出来なかったですけど^^;自分が社会に出て、大手出版社に就職
して仕事バリバリ頑張ってるキャリアになって尚、長津田が良く見えるというのがどうにも
不思議でならなかったです。うーん・・・。ま、そこで安易にイケメンの方に気持ちが流され
ない所が、早稲女ならではなのかもしれないですけどね。でも、香夏子にアプローチしてくれた
吉沢さんと結婚してた方が絶対幸せになれたんじゃないかなぁ。妹が捨てちゃった香夏子の
指輪(長津田とお揃い←しかし、買ったのは香夏子自身^^;)を、わざわざ真夜中の池に
行って一緒に探してくれる人の好さにはある種の感動すら覚えたもの。勿体ないなぁ、と
思いました。

どの子もそれぞれひとくせあるような子ばかりだったのだけど、一番イヤだったのは二股で
悩む青学のみなみの性格かな。あの性格じゃ、香夏子とは衝突するだろうなぁ・・・と思い
ました。でも、観光目的で行った旅行なのに、いちいちその国の歴史とかをもっと考えろ
みたいに言われたら、私だってムカっとすると思うな。香夏子のそういう部分はほんとに
面倒だと思いました。どんな目的で旅をしようがその人の自由だし、それを非難したり、
強要するのはどうかと思う。余計なお世話ってやつ。
しかし、みなみの出した二股の結論には唖然。何の為の旅だったんだか。ラストの話で判明
したその後の展開に、そりゃそうなるだろうなぁと妙に納得してしまった。
香夏子は、長津田との再会で収まるところに収まって良かった・・・のかな。結局、この
二人って、腐れ縁ってやつなんでしょうね。指輪も結局戻って来たしね(笑)。

なんだかんだで文句つけながらも面白く読んだのですが、出て来る登場人物全部が全部
高学歴ってところがちょっと引っかかりました。高学歴の人間が付き合うのは男も女も
高学歴じゃないと・・・って言われてるみたいで。そういう趣旨の作品ってのはわかるん
ですけどもね。脇役くらい、高卒とか短大の子がいたりしても良かったんじゃないのかなぁ。

あと、この方の作品でいつも気になるのは、登場人物の名前。最近のDQNに物申したいのか、
なぜか主要登場人物の女の子の名前が大抵『~子』なんですよね。現代の話なのに、ここまで
狭い範囲の交友関係の中に子がつく名前ばかりいるってのが、どうしてもリアルに思えない。
DQNもイヤなんだけど、ここまで極端にすることもないのになぁと思ってしまった。
だって、今時の大学生の女の子の名前で子がついてるのって、せいぜいクラスに一人か二人
だと思うんですよねぇ。
単に、作者が子がつく名前が好きなだけかもしれないですけどね。