ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三木笙子/「金木犀二十四区」/角川書店刊

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三木笙子さんの「金木犀二十四区」。

金木犀の御神木が見守り、都心にあって古く懐かしい家並みが残る街。ここで和花屋を営む秋と
山伏の岳史は、隕石が引き起こす奇妙な現象に次々と巻き込まれて……!? 異色コンビが解き
明かす不思議事件簿!(紹介文抜粋)


ミステリフロンティアの帝都シリーズで気に入った三木さん初のノンシリーズもの。といっても、
今後シリーズ化される可能性もありそうですけれど。
今回は一応現代ものっぽいのですが、ちょっとファンタジックな設定も含まれているので、
パラレルワールド現代日本って感じかな。時代設定がはっきり書かれていないので、過去
かもしれないし、未来の設定なのかもしれないですけどね。
首都二十三区を区の前に花の名前をつけて区別する、という設定がなんだか風雅な感じで
素敵(朝顔三区とか桜十三区とか杜若二十三区とか)。
その中で、今回の舞台となるのは、樹齢千二百年の金木犀の大木があることから、金木犀
二十四区と呼ばれる地域。火伏と天狗信仰で知られる神社も置かれる、古式ゆかしい区域。
主人公は、この金木犀二十四区で和花専門の花屋を営む青年、秋。そこに、山伏の岳史と
天文台の職員敦志がやって来て、秋は不思議な事件に次々と巻き込まれる・・・というのが
大筋。

帝都シリーズ同様、ミステリ度はあまり高くないです。部屋の中が突然森林化してしまう
怪現象の真相もちょっと拍子抜けでしたし。
舞台設定は面白いのだけど、ちょっと全体的にそれぞれの掘り下げが足りないかなぁって
感じはしました。秋が靡(なびき)かどうか、という部分が物語の重要なポイントになって
いるのですが、肝心の靡という設定自体もわかりにくいので、靡だったらどうなるのか、
というのが見えず、どうもストーリーに乗り切れないところがありました。落ちた隕石が
天狗っていうのも、ちょっと設定に無理があるような気がしましたし。小説で読むよりは、
マンガとかにした方がすんなり入れるのかも。キャラ造形的にもマンガ向きですしね。帝都
シリーズもそうなんだけど、本書のキャラ造形もどう考えてもBLよりなんですよねぇ。作者、
絶対狙って書いてるだろう、ってつい勘ぐりたくなっちゃう(笑)。
ただ、秋のことって、実は中盤まで男か女かよくわからないで読んでたんですよね。
一人称は『俺』なんだけど、男っぽくしてる女って設定もよくあるし、これは作者の騙し
なんじゃないか・・・とか疑りながら読んでました。なんてことはない、普通に男の子
だったんですけど^^;秋も岳史も敦志も全員端正な顔立ちの男で、そんなイケメンが
一堂に勢ぞろいすりゃ、そりゃ変な勘ぐりしたくもなるでしょうが(開き直り?(笑))。
いや、別に、特別変なシーンが出てくる訳じゃないですけどね!(逆ギレ?^^;)
ただ、キャラ読みするにしても、ちょっと一人一人のキャラが薄いのが残念でした。
続編が出るなら、その辺り、もう少し書き込んでほしい気がしますね。秋と岳史の
友情関係ももう少し深く書いて欲しいかな(へ、変な意味じゃないってば^^;)。

季節になると、街中が金木犀の香りで満たされる、というシチュエーションはとても素敵
だと思いましたけどね。金木犀の香りは大好きなのでね。
あと、和花専門のイケメン花屋って設定は個人的にかなり萌え、でした(笑)。変に
ファンタジックな設定入れないで、普通に現代もので一話完結の日常の謎解き系みたいな
方が良かったんじゃないのかなーと、思ってしまいました。
個人的には、ァンタジー部分の設定がちょっと中途半端だったのが残念でした。