ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

森晶麿/「黒猫の薔薇あるいは時間飛行」/早川書房刊

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森晶麿さんの「黒猫の薔薇あるいは時間飛行」。

黒猫の渡仏から半年。付き人はポオをテーマに博士論文に挑むが、つい黒猫のことを考えてしまう。
そんなとき、作家綿谷埜枝の小説に「アッシャー家の崩壊」の構造を見出す。その小説を研究する
には、一晩で消えた薔薇の謎を解く必要があるらしい。私が新たに出会ったひそやかな恋ー。
付き人と黒猫は、それぞれ美しい庭園で“時間”にまつわる謎に出会う。アガサ・クリスティー
受賞作、シリーズ第3弾(紹介文抜粋)。


シリーズ第三弾。意外と早く出ましたね。前作で終わりかと危惧していたのは完全に杞憂でした^^;
しかも、まだまだ続きそうな気配ですね。良かった、良かった。だって、こんな中途半端な
ところで終わられちゃ、続きが気になって仕方ないじゃないのさ。しかし、何もこんなヘビの
生殺し状態のところで終わらなくても・・・ぐすぐす。でも、次の巻では、間違いなく付き人
ちゃんは行動に移しますね。ここまではっきり自分の気持ちを自覚したらねぇ。しかも、黒猫
の態度がまた。何、この思わせぶりな!
今回、黒猫のライバルになりそうな、付き人ちゃんを狙う青年も現れたことだし、黒猫側
にも、彼に恋する女の子が登場したりして、これからの恋模様が非常に楽しみです。

・・・って、本筋(ミステリ部分)そっちのけで、一体何の感想を話しているのやら(苦笑)。
でもさー、この終わり方がさー。もう、もう、他の部分の感想なんかぶっ飛んじゃったんだもん。
それに、今回のテーマって、要するに『恋』でしょう。みんな誰かに恋してるお話・・・あれ、
違う?^^;

綿谷さんのデビュー作、とても読んでみたい。星から花を作る男との一夜の恋。ラストは
なかなかに壮絶な光景ですが。綺麗というよりは、ぞっとするだろうなぁ、その眺め。
その綿谷さんの恋の真相は、意外でした。いや、王道といえば、王道な真相とも云えるの
だろうけれど。その前に、『私(付き人)』が推理した真相で結構納得させられちゃって
いたので、その裏があったことで驚かされたっていうのかな。確かに、付き人の推理だと
なーんかこじつけって感じがしなくもなかったのでね。真相は、よりシンプルだけど、確かに
それなら腑に落ちる、というものだったので、溜飲が下がりました。

スイフヨウの花って初めて知りました。見たことない・・・多分。こんな花があるんですね。
不思議だなぁ。ネットで検索したら『酔芙蓉』と漢字を当てるそうです。なるほど。この花の
特色をよく表してますね。写真載せようと思ったけど、ネタバレになっちゃうからやめとこう。

黒猫の方の真相は、それほど驚かされるってこともなかったんですけど。天地が逆転した庭園
っていうのが、どうも頭に思い描けなくて、イメージするのに苦労しました。すべての植物が
天井から生えてるってことなんですかねぇ。落っこちてこないのかな。土とか使わないで
植えてるんですかね。謎。ちょっと見てみたいですけど。

一番今回騙されたのは、プロローグのマチルドかなー。なんかあるだろう、とは思ってたんですが、
こういうことだったんですねぇ(読んだ方なら意味がわかるはず)。
最後まで読んで、もう一回冒頭に戻ると、ニヤニヤしちゃいますね。むふ。

作中で何度も出て来た『アッシャー家の崩壊』が無性に読んでみたくなりました。なんか、
ラストすごそうですね。どれだけの崩壊っぷりなのか、気になるなぁ。


題材とか文章とか、このシリーズはほんと私のツボをいちいちついてくるんですよね。作品
全体に、美的センスが漂っているというか。涼やかな透明感があるというのか。
まぁ、テーマが美学ですからね。
表紙も装幀もめっちゃ好みだし。中の猫のイラストも可愛らしい。

ということで、今回も多いに楽しめたのでした。でも、ラストがめちゃくちゃ意味深なフリで
終わってるんで、早く続きが読みたいっ。作者さま、よろしくお願いします。