ミステリ読書録

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近藤史恵/「近藤史恵リクエスト!ペットのアンソロジー」/光文社刊

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近藤史恵さんの「近藤史恵リクエスト!ペットのアンソロジー」。

読書家としても知られる近藤史恵が、今いちばん読みたいテーマを、いちばん読みたい作家たちに
「お願い」して作った、夢のようなアンソロジー。十人の人気作家によるペットモチーフの
新作短編集(紹介文抜粋)。


近藤史恵さんが、ペットに纏わるお話を書いて欲しいと思った作家に原稿を依頼し、快諾を
得て集まった作品をまとめたアンソロジー。もちろん、ご自身の作品も最後に収録されています。
この形で、他に坂木司さんリクエストの「和菓子編」、大崎梢さんリクエストの「本屋さん編」
が同時に刊行されています。もちろん他の二つも予約中。和菓子の方はリクエストし忘れていて
予約に乗り遅れた為、相当待たされそうですが^^;

さてさて本書。ペットに纏わる短篇集というだけあって、さまざまなペットが登場します。
もちろん、犬や猫が多いのですが、中にはゲテモノ系も・・・^^;;作風もそれぞれに
違うので、バラエティに富んだアンソロジーになっていると思います。寄稿した作家さんも
ほとんど好きな方ばかりでしたし。個人的にはとても楽しめました。とりあえず、初めまして
の作家さんはいなかったですね。汀こるものさんだけは、どっかのアンソロジーかなんかで
短篇を読んだきりで、長編は手を出したことがないのですけども。でも、意外にその汀さんの
作品が一番印象に残ったかも。結構強烈な作品だったので・・・^^;
作家さんが、自分の好きな作家さんに原稿を依頼する訳ですから、依頼された作家さんとしても
嬉しいですよね。依頼する側も、自分の好きなテーマの作品ばかりが集まる訳だから、読むのも
楽しいでしょうし。面白い趣向のアンソロジーだなーと思いました。




では、各作品の感想を。

森奈津子『ババアと駄犬と私』
森さんの作品、久しぶりに読みました。学生の頃ティーンズ文庫でお世話になっていましたが、
数年経って気付いたら、ビアン(百合)もの中心のエロ系作家さんになっていてビックリでした^^:
西澤保彦さんと同じ香りが・・・(笑)。今回の作品はその系統とは全く違いましたけど
(当たり前か(笑))。
こういうババアに飼われるペットは可哀想ですね・・・彼女の言動にムカムカしっぱなしでした。
でも、ラストはちょっぴり痛快な気持ちになりました。これから主人公とババアとケイトで
いい関係を築けそうです。

大倉崇裕『最も賢い鳥』
『小鳥を愛した容疑者』の須藤と薄コンビに再び会えて嬉しかったです。今回はオウムならぬ
ヨウム。最後に、再び元の飼い主の顔を見たヨウムが発した言葉にじーんとしました。ちゃんと
自分の飼い主を覚えているものなんですね。

大崎 梢『灰色のエルミー』
友人から預かった猫を巡ってトラブルに巻き込まれた男の話。ラストシーンに出て来る
アメショーとメトロの意味がわかんなかった^^;映画か何かなんだろうけど^^;
あと、ラストの美鈴のセリフは、永島のことを憎からず思っていると捉えて良いのかな?
ラストはちょっとほっこり出来て良かったです。

我孫子武丸『里親面接』
これはラスト、やられた!の一言でした。鮮やかな反転、さすがですね。佐々木と宮下の
関係と正体には意表をつかれました。よくある手なんですけどね~。それにしても、こういう
犯罪って実際あるんでしょうかね。あるとしたら、絶対に許せないです。動物を犯罪の道具に
使うなんて。ぷんぷん。

柄刀 一『ネコの時間』
まさか、柄刀さんがこういう直球のうるうる話を書いて来るとは思わなかったです。
猫の時間は人間の四倍の早さで過ぎるんですねー・・・。猫を飼われている方なら主人公に
共感出来るところが多いんじゃないでしょうか。予想通りの結末なんですが、やっぱり
切ない気持ちになりました。

汀こるもの『パッチワーク・ジャングル』
先述したように、これが一番印象に残った異色作でした。取り上げるペット自体が
おかしいですから^^;っていうか、こんなペットいらないーーー(><)。もし、私が
主人公の立場だったら、間違いなく離婚してますよ。だって餌やりとか絶対絶対無理だもん!!
これ読んでて、貴志祐介さんの榎本シリーズの某短篇思い出しました(勘のいい方なら
どの作品かわかるハズ)。でも、なんだかんだで主人公が旦那思いで、言いつけ通りに
いろいろペットの世話をしてあげてる所に感心しちゃいました。愛ですかねぇ。奥さんの
キャラ面白かったなー。他の作品も読んでみたくなりました。

井上夢人『バステト』
ホラーのような、幻想小説のような。井上さんらしい作品ですね。冒頭に出て来た銃が最後
にこういう形で使われることになるとは。世にも奇妙な物語とかで映像化されそうな
お話でした。

太田忠司『小犬のワルツ』
オルゴールを修理するってところが太田さんらしい設定ですね。なんか、そういう作品
ありましたよね。シリーズ物ではないと思いますけど。健太君の性格はちょっと思い込みが
激しすぎてムカっとしましたけど、大事だったペットにまた会いたかったんでしょうね。
彼のきなこがどうなったのか、真実はちゃんと伝えてあげた方がいいような気もするな。
子供だからって、その場限りの嘘を吐いたから、こういう事態になってしまったのでは
ないでしょうか。

皆川博子『希望』
皆川さんらしい変化球。守宮を題材に持って来るところがニクイ。名前がムザムザって所に
くすり。でも、ラストシーンの『飼ってるよ』にぞわり。不思議な余韻を残す作品です。

近藤史恵『シャルロットの憂鬱』
シャルロットのキャラが最高。元警察犬だからとても賢いのに、警察犬だったとは思えない
行動をしたりするところが何ともキュート。ラストで明かされるシャルロットの意外な秘密
にもくすり。あとがきで近藤さんご自身もシャルロットのことが気に入ったとおっしゃって
いるので、是非シリーズ化して欲しいですね。




一作づつは短いですが、どれもそれぞれに面白く、良作揃いの短篇集でした。
もっといろんな作家さんでやって欲しい趣向ですね。いろんなテーマのアンソロジー
組めそうだ。
和菓子編と本屋さん編を読むのも楽しみです。