ミステリ読書録

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伊坂幸太郎/「ガソリン生活」/朝日新聞出版刊

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伊坂幸太郎さんの「ガソリン生活」。


大学生の望月良夫は愛車のデミオ運転中に、偶然会った女優の翠を目的地へ送り届けることに。
だが翌日、翠は事故死する。本当に事故だったのか? 良夫とその弟で大人びた小学5年生の亨は、
翠を追いかけ回していた芸能記者・玉田と知り合い、事件に首を突っ込み始める。姉、母まで望月
一家が巻き込まれて、謎は広がるばかり――。朝日新聞夕刊の人気連載が待望の単行本化。物語の
語り手はなんと本邦初!?の「車」。町を走る様々な車たちの楽しいおしゃべりが全編にさんざめく、
前代未聞のユーモアミステリーにして、のんきな長男・大人びた弟…と個性的なキャラが揃った
家族の暖かいエピソードに溢れた、チャーミングで愛すべき長編家族小説! (紹介文抜粋)


伊坂さん最新作。いや~~~、面白かった!!これ好きだぁーーー。最初から最後まで楽しくって
楽しくって、読み終わっちゃうのがすごく勿体ないなぁって思いながら読んでました。この感じは、
『オー!ファーザー』の時と似てるなーと思っていたらば、途中でほんのちょっぴり彼らが登場。
おお、リンクしてる!と嬉しくなったのでした。伊坂さんたら、ほんと小憎いことをしてくれるわ。

この作品の最も愛すべきところは、語り手の存在。メインに登場する望月一家所有の自家用車、
緑色のデミオくんがそれ。車視点という斬新な一人称小説なのです。デミオ視点で、望月家が
巻き込まれた騒動が語られます。
このデミオくんのキャラクターがね、もー、めっちゃ可愛いんですわ。愛すべきデミオ。この
小説のおかげで、マツダデミオ(特にグリーン)の売上が倍増なんじゃないかしら。私も
欲しくなったもん(←すぐ影響されるヤツ代表)。

その発端は、望月家の長男・良夫と、次男の亨がデミオに乗っている時、仙台出身の有名女優・
荒木翠と出会うことから始まります。突然デミオに乗り込んで来た荒木翠は、誰かに追われている
様子で、良夫たちに助けて欲しいと願い出ます。そこで良夫たちは、翠が指示する目的地まで
彼女を送り届けることに。無事送り届けたものの、翠はその数時間後、愛人と乗っていた車で
パパラッチに追跡されている途中で、事故死してしまいます。けれども、その事故には裏がある
ようで、次第に望月一家はその事件に巻き込まれて行く――と、こんな感じ。荒木翠の事件の
傍らで、望月家長女・まどかが巻き込まれた騒動や、次男・亨のいじめ問題なんかも出て来て、
望月家のメンバーたちはみんな大忙し。それでも、悲惨な状況に置かれながらも、それぞれに
のらりくらりと乗り越えてしまう強かさを持っているので、さほど緊迫感もなくさらっと読めて
しまったのですが。よく考えるとかなりやばい状況に置かれていたりするんですけれど^^;
それでも、なんとかなっちゃうところが望月家のすごさ。運がいいだけって気もしますが^^;
ただ、終盤の一方通行逆走シーンは、さすがにハラハラしましたね^^;普通なら大惨事
になってるとこですよね・・・しーん・・・。でも、その状況を救った救世主が安田さんの『アレ』
だったり、その前にまどかのピンチを救った最大の功労者が、良夫が買って来た『アレ』だったり
するところが、伊坂さんの巧いところというか。散りばめられた伏線がきっちり後々効いて
来るんですよね~。ほんと、こういう所がツボに来るというか、巧いなぁ。あー、もう好きだぁ~
って思っちゃうんですよね。すいませんね、盲目的伊坂ファンで(なぜ逆ギレ?^^;)。

個人的に好きだったシーンは、デミオが他の車たちと井戸端会議するとこ。もちろん望月家の
お隣さんである細見氏の所有車、カローラGTのザッパとの会話も含めて。ファミレスやらファースト
フード店の駐車場や高速道路を含めた車道で、他の車と情報交換する様子がとても楽しかった。
所有者が犯罪者や悪人でも、車は悪人(悪車?)ではないところがいいですね。車によって微妙に
性格が違うところも面白かったな~。車が好きな人(うちの相方もそう)には、いろんな車種が
出て来るのも楽しいんじゃないかな。

キャラ的には、次男の亨のキャラが光ってましたね。達観しすぎる小学生。善人でちょっと
お馬鹿キャラっぽい長男の良夫と対照的なところが良かったですね。とても小学生の言動とは
思えないことだらけでしたが・・・(苦笑)。まぁ、身近にいたら可愛げのないタイプだとは
思うでしょうね(笑)。でも、身内にいたら絶対重宝するタイプだとも思うな。いろいろと
バカにされそうだけど^^;間違っても、敵には回したくないぞ。やさいトリオへの仕返しの
狡猾さを見れば、誰しも同じように思うハズ。こわこわ。
一番存在が薄かったのが長女のまどか。二章目はまどかが巻き込まれた事件の話なのに、ほぼ
出番がなかったし^^;終始不機嫌なキャラって印象。基本的にはいい子なんだろうけどね。
母の郁子も素敵なお母さんだったな~。伊坂キャラの母親像の典型、みたいな感じ。夫が
亡くなって、一人で子供三人育てて来たんだから、やっぱり強くなるよね。でも、まどかの
彼氏がイケメンってわかった時の態度の変化の露骨さには笑っちゃいましたけどね(笑)。
『オー!ファーザー』では父親しか出て来なかったから、今回は母親が活躍する話にしたかった
のかも。母はやっぱり強し、ですね。

とっても楽しい作品で、望月家のデミオのことが大好きになっていただけに、エピローグの
冒頭にはショックを受けました。まさか、そんなぁ・・・って、悲しくなりました。
でもでも、最後の最後に最高のサプライズ。さすが亨!!しかも、めっちゃいい男に育ってるし!
四台併せてのメッセージも伊坂さんらしくて、くすり。
最後はほのぼのと、幸せな気持ちで読み終えられました。
また望月家の家族たちと緑デミオに会いたいなぁ。特に、亨のキャラはこれっきりにするのは
勿体ないと思うなー。



はー、良かったよぉ。
この作品好きだー。大好きだー。伊坂さんがやっぱり大好きだーーーーー。


ということで、記事も、お・し・ま・い(読めばこの〆の意味がわかります(笑))。