ミステリ読書録

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近藤史恵/「キアズマ」/新潮社刊

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近藤史恵さんの「キアズマ」。

命をかける覚悟? 誰かを傷つける恐怖? そんなもの呑み込んで、ただ俺は走りたいんだ。
ひたすらに、自分自身と向き合うために。助けられなかったアイツのために――。一年間限定で
自転車ロードレースに挑むことになった正樹。「サクリファイス」シリーズ4作目、新たな舞台は
大学自転車部! ファン待望の最新長編小説(紹介文抜粋)。


サクリファイスシリーズ第四弾。引き取り期限を勘違いしていて、取置期限日を一日過ぎて
しまったのですが、相方が朝一で図書館に行って事情を説明してくれた為、なんとか借してもらう
ことが出来ました^^;他の図書館に移動する寸前だったらしく、朝一で行ってもらわなかったら
完全に多分アウトでした。危なかった・・・。読めるのをとても楽しみにしていただけに、借り
られて良かったです。感謝感謝。

さて本題。シリーズ四作目と銘打ってはいますが、主人公その他、出てくる登場人物も舞台も
全部を一新。共通しているのは、自転車ロードレースがテーマだという点だけです。唯一、
チーム・オッジの赤城がちらっと脇役出演しているところがあるくらい。
読み始めてしばらくは、そのうちチカか他の誰かが出て来るだろう、と思っていたのですが、
赤城以外は誰も出て来なかったですね。今までのシリーズとは全く違うお話がスタートしたと
思って頂いて良いかもしれません。ただ、赤城の意味深な登場から、今後は二つのシリーズが
重なって来ると推測できるのではないかと。あの流れだと、正樹は多分、チーム・オッジに
入団することになるのではないかなぁ(そうだと嬉しい)。
チカたちが出て来ないという意味では正直がっかりしたことは否めないのですが、内容は
既存のシリーズと遜色ないくらい、とても面白かった。そして、自転車ロードレースの魅力も、
今まで同様、十二分に伝わって来る内容でした。

今回の主人公は、フランス帰りの大学一年生、正樹。入学早々、バイクで事故を起こし、
大学の先輩に怪我を負わせてしまいます。怪我をした先輩の代わりに、なぜか頼まれて
その先輩の怪我が治るまで、一年間限定で自転車部に入部することに。負い目がある為
断れず、嫌々ながらも自転車部に通い始めます。次第に正樹は、今までの自転車の概念を覆す
自転車ロードレースの魅力に惹かれはじめて行き、その才能を開花させて行きます。同じ
自転車部のエース・櫻井の実力と能力にも触発され、正樹はどんどん力をつけて行く。
けれども、彼には、人に言えない重い過去があり、そのことが常に過去の自分との葛藤に
なってのしかかっているのです。一方、エース櫻井にも秘めた過去があり、ヤンキーっぽい
外見とは裏腹に、ナイーブな一面も垣間見せる為、正樹は彼との距離をどう取っていいのか
わからず戸惑うばかり・・・。とまぁ、こんな感じで、大学自転車部を舞台にした熱き青春
小説となっております(全然説明になってない?^^;)。

正樹が少しづつ自転車の魅力にはまって行く過程の描写はさすがに上手い。自転車で風を切って
走ることの気持ちよさが伝わって来て、こちらまで爽快な気分になります。とはいえ、人間
ドラマの点では結構ドロドロしてるので、爽やかな青春小説!って感じでは全くないんですが。
それでも、のめり込んでほぼ一気読み。近藤さんの作品はいつもながら、リーダビリティが
素晴らしいですね。

ところで、タイトルの『キアズマ』とは何ぞや?と思われるかもしれませんが、冒頭の語句説明
では、次のように書かれております。

【キアズマ】
減数分裂の前期後半から中期にかけて、相同染色体が互いに接着する際の数カ所の接着点のうち、
染色体の交換が起こった部位。X字形を示す。


・・・何度読んでも理解不能・・・^^;;正樹と櫻井が知り合ったことで、エースとアシスト
が交代したって言いたいのかな???誰か解説してください・・・(アホすぎ)。


今回は正樹のフランスでの生活のことがほとんど出て来なかったので、なぜその設定にしたの
だろう、と思ったんですが。読み始めは、フランス時代にチカと出会って・・・とか、そういう
流れになるのかなーとか思ったりもしたんですけどね。どうも接点はなさそうだし、謎です。
今後のシリーズではそこがポイントになったりするんですかね。ツール・ド・フランスにいつか
出場する時の為の伏線だったりして。

正樹は今後、チーム・オッジに入ることになるのでしょうか。そろそろチカの活躍も読みたい
ですね。