ミステリ読書録

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東野圭吾/「疾風ロンド」/実業之日本社文庫刊

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東野圭吾さんの「疾風ロンド」。

強力な生物兵器を雪山に埋めた。雪が解け、気温が上昇すれば散乱する仕組みだ。場所を知りた
ければ3億円を支払え―そう脅迫してきた犯人が事故死してしまった。上司から生物兵器の回収を
命じられた研究員は、息子と共に、とあるスキー場に向かった。頼みの綱は目印のテディベア。
だが予想外の出来事が、次々と彼等を襲う。ラスト1頁まで気が抜けない娯楽快作(あらすじ抜粋)。


東野さんの文庫新刊。『白銀ジャック』とタイトルが似ているので、続編なのかなーと
思いつつ、『白銀~』に出て来たキャラとか全然覚えていなかったので、繋がりがよく
わからずに読んでしまいました^^;なんとなく、根津って名前には覚えがあったので、
そうかなーとは思ったのですが。後で自分の記事を読み返してみたら、案の定根津が出て
来ていました。ただ、前回根津はそんなにメインで出て来た訳じゃなかったみたいですが
・・・(なんせ、あまり内容をよく覚えていないもので・・・すすす、すみません^^;;)。

今回も、ウィンタースポーツ好きの東野さんらしいスキー場を舞台にした娯楽作品になって
いると思います。ただ、前作でも感じたんですが、なーんか、どうもストーリー展開に
緊迫感がない気がして仕方なかったんですよねぇ。
そもそも、生物兵器を盗んでスキー場に埋めた犯人が、交通事故であっさり死んでしまう
ってところからして間が抜けているというか、何というか。そんなアホな展開あるかい!と
ツッコミを入れたくなりましたよ^^;肝心の交渉相手である犯人がいなくなっちゃうの
ですから。そこで、大学の生物学部長である東郷から、なんとしてでも埋められた生物
兵器の場所を見つけだして回収して来いと命令されたのが、研究員の一人である栗林。
この、東郷と栗林の会話がまた、若干ギャグっぽいというか、コント聞いてるみたいな
感じで全くもって緊張感がないんですよね。栗林のキャラって、テレビのガリレオシリーズ
の渡部いっけいさんが演じてた間抜けな研究員みたいだよなぁ・・・と思っていたのだけど、
よく考えたら、あの人も栗林さんじゃないか!!えっ、まさか何かの繋がりが・・・とか
思って調べてみたら、名前が違うみたいです。そもそも帝都大学じゃないしね(泰鵬大学)。
結婚して子供もいるし。一緒な訳ないかぁ、とちとガッカリ。
ちなみに、Wikiで調べたら、あっちの栗林さんは、宏美さんというらしい。本書に出て来た
栗林さんは和幸。まさか、兄弟とか親戚だったりして(笑)。なーんか、キャラ被ってるん
ですもん。緊迫した場面でもどっか間が抜けてるっていうか、のんびりしてるというか。
肝心なところで骨折しちゃって、あとの大事な生物兵器捜索を全部人任せにしちゃうし。
まぁ、憎めない人柄って部分でも重なっているかな。縁戚関係があったら面白いんだけどな(笑)。

で、慣れないスキーで骨折しちゃって動けなくなった栗林の代わりに、生物兵器探しに
奔走してくれるのが、スキー場でパトロールをしている根津。ただ、根津には探しているモノの
正体のことは秘密にしています。あんな胡散臭い栗林の説明を真に受けて、必死でブツを
探し回る根津って、ほんとに真面目でいいヤツだと思います。

んで、いまひとつ緊迫感がないままに終盤で問題のブツは見つかる訳なんですが。そっから
また一騒動。ブツを横取りしようと企む不審な男が出て来て、根津に協力してブツを探して
いたスノボー選手の千晶とちゃんばらごっこめいたことをしてみたり。出て来る悪役が小物
過ぎたのも盛り上がりに欠ける原因だったような・・・。

最後はどうなることかと思いましたが、ラストのラストである人物の功労によって、めでたし、
めでたしになったのはほっとしました。しかし、あんな強力な生物兵器を、一般人(しかも
中学生までも)が簡単に取り扱っていいものなんだろうか・・・。栗林は最後にどんな選択を
したんですかね。息子の願いが届いていたのならば良いのだけれど。せっかく真っ直ぐな息子に
育ったのだから、親の醜い姿を見せて歪めたりしないで欲しいものです。秀人の淡い恋の部分は、
『夢幻花』に出て来た中学生の恋愛部分を彷彿とさせましたね。雪国の中学生って、みんな
スキーが上手なものなんですかね。以前にも書いたかもしれませんが、実は私、スキーって
(もちろんスノボーも含めたウィンタースポーツ全般ですが)一度もやったことがないんですよ。
寒いのが大嫌いなので、なんでわざわざあんなに寒いとこ行かなきゃならないんだ!って思って
しまって。そういう部分では、栗林のスキーに対する感想には結構共感出来る部分が多かった。
だから、スキーとかスノボー用語が出て来る部分は相変わらずちんぷんかんぷんでした(ほぼ
読み飛ばしに近かった^^;)。

東野さんがこの手の作品を楽しんで書いてるのはよーくわかるんですが、正直B級っぽさは
否めなかったです。文庫だし、手軽に読めることを第一の目的としているのかもしれません
が・・・。もうちょっと、作品に深みが欲しかったかなぁ。この手の作品に深みなんて求める
方が間違っているのかもしれませんけどね。