ミステリ読書録

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森晶麿/「黒猫の刹那あるいは卒論指導」/早川文庫JA刊

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森晶麿さんの「黒猫の刹那あるいは卒論指導」。

大学の美学科に在籍する「私」は卒業論文と進路に悩む日々。そんなとき、唐草教授のゼミでひとり
の男子学生と出会う。なぜか黒いスーツを着ている彼は、本を読み耽るばかりでいつも無愛想。
しかし、ある事件をきっかけに彼から美学とポオに関する“卒論指導”を受けて以降、その猫の
ような論理の歩みと鋭い観察眼に気づきはじめ…『黒猫の遊歩あるいは美学講義』の三年前、
黒猫と付き人の出会いを描くシリーズ学生篇(紹介文抜粋)。


シリーズ第四弾。なぜか今回いきなりの文庫新刊。その理由は、巻末の著者インタビューで
触れられているので、そちらをどうぞ。
今回は、黒猫と付き人の出会いから卒業までの学生編を描いた連作短編集となっております。
一作ごとに二人の距離が近づいて行くところが読みどころのひとつでしょうか(といっても、
一作目であの状態なので、どれくらいの距離かは推して知るべし)。
相変わらず、黒猫の美学薀蓄にはさっぱりついて行けませんでした・・・^^;;
一作ごとにポオの作品のひとつがテーマとして取り上げられているのは本編と同じ。
今回は短篇ばかりのせいか、知ってる作品がひとつもありませんでした。いや、ポオの
短篇集は何冊か読んだことがあるので、もしかしたら読んだ作品が入っている可能性も
なくはないですが、覚えてないんだから知らないのと一緒ですよね^^;;

一話目で二人の出会いが描かれている訳なのですが、黒猫が初めて付き人を見た時に「寝癖が
ついていた」から印象に残ったっていうのは、やっぱり嘘なんでしょうね~。きっと彼女が
可愛かったからつい目が行っちゃったんじゃないのかなぁ。黒猫の座っていた場所から彼女の
寝癖が見える訳がないっていうのだし。もしかしたら、一目惚れってヤツだったのでは・・・。
彼女のお婆さんの若いころにそっくりだという話から、彼女自身も実は相当整った顔立ちを
しているようなのがわかりますしね。今まであまり彼女の容姿に関する記述が出て来てなかった
から、美人って意識で読んで来なかったんだけど。実は結構な美人さんなんじゃないのかしら~、
と今回初めて思いました。黒猫もうかうかしてられないわけだ。
冒頭(とエピローグ)の着物姿にも、内心ドキドキしていたのだったりして(笑)。

第一話、『数寄のフモールは、ある人物の意外な黒さにゲンナリしました。そこまで
やらなくても・・・。その人物の思い込みで巻き込まれてしまった付き人が気の毒でした。
第二話『水と舟の戯れ』、付き人の、高校時代の一途な片思い相手には完全に『やられた~』
でした。なるほどねぇ。そりゃ、その相手じゃ黒猫も太刀打ちできないでしょうね(苦笑)。
第三話『複製は赤く色づく』、黒猫が時鶏館から消えた理由は、ミステリ的にはかなり
使い古された感のある手法ですね。まぁ、推理出来なかったけどさ。
第四話『追憶と追尾』、付き人のお祖母さんがとにかくナイスキャラ。こういう風に年が取れ
たら素敵だなぁ。付き人のピンチを颯爽と救いに来る黒猫もカッコ良かった~。
第五話『象られた心臓』、黒猫がポーカーに負けていたらどうなっていたんでしょうかねぇ
・・・。全体的に、設定にちょっと無理があるかなぁ、とは思いました。
第六話『最後の一壜』、芙美のキープボトルの中身が○っていうのを読んで、前にも同じような
内容の作品読んだよなぁと思いました。誰の作品だったんだっけ。飲む人の健康を気遣って、
とかそういう話だったと思うんだけど・・・マンガの『ソムリエ』だったかなぁ。


黒猫と付き人、二人の出会いを読んで、最初から相手に執心だったのは、意外と黒猫の方
だったのかなーと思いました。真意はわからないけれどね。
二人の、つかず離れずの絶妙な距離感がほんといいですよね。今後もドギマギさせられるのかなぁ。
作者もそれを狙っているみたいだし。次回作は本編に戻るでしょうから、今後の二人の関係の
変化も楽しみですね。




さてさて、おそらく今日が今年最後の更新になるかと思います。
本当は、ベスト記事も書きたかったところですが・・・考える時間が^^;;
今年は本当に更新が少なくなってしまって残念でした。なかなかブログにじっくり向き合える
時間が取れないのが悲しいです。
ちなみに、今年読んだ作品は今日までの時点で118冊でした(読書メーター調べ)。
今読んでいるのが年内に読み終わるかどうか・・・(麻耶雄嵩氏の貴族探偵シリーズ)。
現在手元に抱えている未読本が5冊(京極さんの新刊アリ)。引き取っていない予約本が三冊
(宮部さんの新作アリ)。
うーん、読みきれん^^;;来年は150冊を目標に頑張る(目標は高く!)。
ブログももうちょっと頑張って更新したい・・・けど、だんだんフェードアウトしていく
かも・・・(弱気)。
読んでくれる人が少しでもいる限りは、なんとか続けたいと思っておりますけれどね。

というわけで、一年間お付き合い下さいましてありがとうございました。
また来年もどうぞよろしくお願いいたします。

みなさま、良いお年をお迎え下さいませ。