ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

百田尚樹「海賊と呼ばれた男 上下」/皆川博子「アルモニカ・ディアボリカ」

どうもどうも。この間の大雪すごかったですね~。
雪国の方にはあれ位の雪で大騒ぎしているなんて不思議に感じるかもしれませんが、
東京で積雪量20センチ超えって、ほんとにあり得ない異常気象なんですよ^^;
交通機関も乱れまくりでしたし。東京はほんとに大騒ぎでした^^;
当日は仕事で、朝はスタッドレスの義兄の車で送ってもらったのですが、
帰りは大雪の中てくてく歩いて帰りました。普通に歩いて20分くらいの距離
なんですが、倍の時間がかかりました^^;いやー、疲れた疲れた。
翌日は休みでしたが、午前中いっぱい雪かき。お隣のお家は駐車場が広いので、
大きなかまくらを作って子供たちが大はしゃぎしてました(笑)。


さて、今回の読了本は二作。二作なんで、記事タイトルに書名を載せました。
とはいえ、一作は上下巻の作品なので三冊読んだことになりますね。
ただ、上巻を読んだのは何ヶ月も前のことなので、正直大分内容を忘れた
状態でしたが^^;
なんでこんなに上巻から下巻の間が空いたかというと、単に図書館本優先で
読んでたからです。ちょうど図書館本を読みきってしまったタイミングで、
やっと読み切ることが出来ました。

では、一作づつご紹介。


百田尚樹「海賊と呼ばれた男 上下」(講談社
言わずと知れた、2013年の本屋大賞受賞作。職場の人が買ったのですが、
読み終わった後譲ってもらえてラッキーでした。
出光興産の創業者・出光佐三をモデルにした長編小説。小説の主人公は国岡鐵造。
敗戦後に立ちあげた国岡商店を、紆余曲折から大企業に成長させ、最後の瞬間、
息絶えるまでの壮絶な人生を描いています。
実際どこまで史実に忠実に描いているのかわかりませんが、大まかな企業の成り立ち
などは、ほぼ事実に近い感じなのではないでしょうか。小説を読んでいるというよりは、
伝記を読んでいる感覚に近かったですね。
読みやすいし、要所要所でドラマチックな出来事が出て来るので、もちろん小説としても
十分面白かったのですが。ただ、筆致が淡々としているせいなのか、史実に忠実なせいなのか、
ところどころで展開がご都合主義に感じてしまって、せっかく盛り上がる場面でもいまいち
感動が薄かったりすることが度々ありました。もう少し、小説的に面白く書けそうなのになー
と思うシーンが多かったんですよね。まぁ、敢えてそういう書き方をしているのでしょうけど。
だから、世間では泣ける泣けると言われているみたいなんですが、私はそれほど泣けるって
感じはなかったんですよね。もちろん、うるうるっと来た場面もいくつもあったし、日本人
としてぐっと来るシーンもたくさんあったのですけれどね。
これは個人的な好みの問題なので、評価が高いのも頷ける面白さがあったことは間違いないの
ですけれどね。
とにかく、鐵造の熱き日本人魂にはほとほと頭が下がりました。商売をしているのに、人生で
一度も金儲けの為に商品を売ったことがないという。すべては国岡商店の店員と、顧客である
国民の為に石油を売る。こんな素晴らしい精神を持った商売人が、実際にいたのだという
事実自体に、日本人として誇らしい気持ちになりました。だからこそ、鐵造にはたくさんの
敵がいたし、何度もどん底に突き落とされる羽目に陥るのですけれど。それでも、どんなに
商店の経営が厳しくても、絶対に店員の首は切らなかった。自分が乞食になることはよしと
しても、店員が不幸になることだけは耐えられなかった。どんな時でも他人の為に尽くそうと
する鐵造は、本当に素晴らしい経営者だな、と思いました。また、そんな鐵造が見込んだだけ
あって、国岡商店の店員たちもみんな素晴らしい人柄の人物ばかりなのですよね。実際、こんな
出来た人物ばかりが集まるものなのか、と疑問に思わなくもなかったけれど、それだけ鐵造の
見る目があったということだし、鐵造という素晴らしい経営者を尊敬して、彼の為に尽くそう
という意欲のある人物が集まっていたということなのでしょうけどもね。
多分、読んだ人は誰もが鐵造に惚れるでしょうね。出光興産の出光さんは、本当にこんな
感じの方だったのかな。現在の出光は、創業者のその精神を未だに汲んでいるのでしょうか。
そこがちょっと気になりました(笑)。
本屋大賞に選ばれるだけある作品だとは思いますね。面白かったです。ただ、正直なところを
言えば、私が書店員だったらこの作品は選ばなかっただろうなーとは思う。小説って感じじゃ
ないんだもの。あくまでも歴史をなぞった伝記って感じだったのでね。でも、いい作品なのは
間違いないですよ。



皆川博子アルモニカ・ディアボリカ」(早川書房
あの傑作『開かせていただき光栄です』の続編。続編が出るとは思っていなかったので、
書店で出ているのを見かけた時は非常に嬉しかったですね。前作の時は予約も多くて、
なかなか借りられなかったのですが、今回は続編と知られていないのか、すんなり開架で
借りられて良かったです。
登場人物が多いし、事件のからくりも結構複雑なので、多少読むのに苦戦したところもあったの
ですが、全体的には前作同様、非常に楽しめました。世界観の作り方が本当にお上手です。
ただ、残念だったのは、前作のようなコミカルさがほとんどなくなってしまった所。事件の
被害者が被害者なだけに、それも仕方がないところではあるのですけれどね・・・。前作の
ラストで気になっていた登場人物たちのその後が描かれるのですが・・・そのうちの一人
に関しては、ショックが大きかったですね。
前作の事件からは5年が経過しています。何かいろいろ書くと、前作のネタバレになって
しまうので、感想が非常に書きづらいです^^;
とにかく、いろんなドラマが詰まってますし、もちろんミステリとしても秀逸ですし(伏線の
貼り方は相変わらず素晴らしい)、切ない恋の物語でもありますし。読みどころ満載でした。
先ほど、コミカルさがなくなったと書いたのですが、一番くすりとしたのは、ネイサンが
乗合馬車の中で樽夫人に潰されそうになるくだり。ネイサンの苦しそうな姿を想像すると
可笑しくて可笑しくて。しかし、そこで出て来た樽夫人が、その後あそこまでこの物語にとって
重要な人物になるとは全く予想もしていませんでした。単なるお笑いキャラなのかと^^;
タイトルのアルモニカ・ディアボリカ」とは、悪魔のハーモニーという意味を持つ
楽器。ガラスのボウルをを組み合わせて水を充たして演奏するもの。実は、以前某お昼の
テレビ番組で、たままたこの楽器が紹介されているのを観たことがありました。日本で演奏
出来るのはたった一人だけなのだそうです。とても不思議な形と音色で、聴き入ってしまいました。
非常に曰くのある楽器だそうで、かつてブームが起きた時は5000台程作られたそうですが、
演奏する人物に次々と不幸が起こり、次第に「悪魔の楽器」と恐れられるようになり姿を消してしまう。
その後再びアメリカの職人によって数台が作られたものの、現存するのは世界でも十数台だとか。
今回はこの楽器にまつわる悲劇的な出来事が、その後の様々な事件のきっかけとなります。
アンディとエスターが二人でこの楽器を作るシーンがとても健気だったので、完成した時は
私も嬉しかったです。そして、それだけにその後の悲劇が悲しかったです。
でも、何より悲しかったのは、ラストでのある人物の手紙。ある人物に対する想いの強さが
切なかったし、やるせなかったです・・・。
最後に再び姿を消した人物のその後も気になるし、ネイサンの小説がどうなるのかも気になるし、
三作目も是非とも書いて頂きたいですね(どうやら、すでに構想はおありになる模様!)。
それにしても、90歳を超えてこれだけの緻密で繊細な物語が書けるというのは、本当に
驚嘆するし、賞賛すべきことですよね。こういう方にこそ、権威ある文学賞をあげるべきだと
思いますけどね。
どうか、まだまだお元気で書き続けて下さいね。




またそろそろ予約ラッシュが始まりそうなので、気合入れて読まなくては!
次回は吉田修一さんの新作(上下巻)の予定。
ちなみに、伊坂さんは13番目で、あと予約まで二人、ビブリア古書堂5巻は24番目で
予約まであと19人。伊坂さんは早めに回って来そうかな。かなり良さそうなんで、
楽しみです。