ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

湊かなえ「豆の上で眠る」/似鳥鶏「迫りくる自分」

8周年を迎えまして、初めての記事でございます。
8周年記事にたくさんコメント頂きまして、ありがとうございました。
どんどん見放されているような気がしていましたが、見ていて下さる方も
たくさんいるのですね・・・うう、ありがたや、ありがたや(ToT)。


今回の読了本は二冊。二冊までだとタイトルに作者名と作品名を載せられるから
ありがたい。他の方にTBする時、まとめ記事だと探せなくて困るんだもの^^;;
何冊もためずに一冊づつ記事にしろって話なんですけどね・・・(しーん)。
大人気作家の湊さんと、最近どうした?ってくらい人気が出て来た似鳥さんの二作です。
どちらもデビュー作から追いかけて来た作家さん。あんまり人気出ちゃうと、
図書館予約がなかなか回って来ないから、ほどほどにしてもらいたいところ
なんですけどね~って、なんて勝手な読者なんだ^^;もちろん、好きな作家
さんが人気出るのは喜ばしいことでもあるのですけれどね(っていうか、
図書館で借りている時点でそんなことを言う資格ないよね・・・)。


では、一冊づつ感想を。


湊かなえ「豆の上で眠る」(新潮社)
13年前に失踪した姉。二年後に戻って来た時、妹ははっきりとわかった。これは
姉ではない。仲の良かった「万佑子ちゃん」はもういない――。13年後、大学生に
なった妹は、入院した母の見舞いに故郷に戻り、姉の事件の真相に迫る。

湊さんの最新作。今回は姉妹の物語。幼い頃仲の良かった姉が、ある日突然失踪
してしまいます。家族は必死で姉探しに奔走します。姉の方をとりわけ可愛がって
いた母は、気が狂ったように人が変わってしまいます。姉探しに必死になるあまり、
行き過ぎた行為に走るようになり、世間の人々の目も変わってしまう。そうした
地獄の日々が二年続いた後、突然姉が帰って来ます。しかし、帰って来た姉は、
妹から見ると、どうしても別人にしか見えず、戸惑います。周りの誰もが姉だと
認めているのに・・・姉は本当に以前の姉なのか――というのが大筋。
13年前の姉失踪時の出来事と、13年後の現在とが交互に語られるのですが、
姉に対しての描写にかなり違和感があって、変だな、変だなーと思いながら
読んでました。もちろん、それにはきちんとした理由があることが最後にわかるの
ですが。なかなか巧い構成だなーと思いました。姉が失踪してから、母親が彼女を
探す為に、少しづつ異常な行動に走って行く過程にぞくりとさせられました。
特に、猫を探す口実を使って、妹を団地に行かせる手段の選ばなさには背筋が
寒くなりました。使えるものは、自分の子供さえ使うという・・・それによって、
子供が学校でいじめられるとか、悪く言われるとか、少しも考えなかったの
だろうか。何度も同じ手を使えば、悪い噂が立つのは当たり前なのに。残された
子供の気持ちも、もう少し汲んであげればいいのに・・・と思ってしまいました。

しかし、いくら子供とはいえ、二年くらいでそうそう人相が変わる訳ないと思う
のですが・・・結構無理のある設定だよなぁと思いました。ましてや、実の妹を
騙し続けるなんて、出来る訳がないのに。なんだかなーと思いました。
最近、同じような事例がニュースで報道されてましたよね。そこからヒントを得た
のでしょうか。

作中に重要な要素として出て来る『えんどうまめの上にねたおひめさま』、私は
読んだことがありませんでした。幼い頃に読んでたら、確かに私も頭のなかが『?』
で満たされただろうなぁ^^;不思議な話ですよね。今度、本屋で立ち読みしてみよう。

最後に、結衣子の前で激白する姉の言葉が痛いくらい胸に突き刺さって来ました。
彼女は彼女で、ずっと今までの理不尽と戦って来たのだろうな・・・。妹への複雑な
思いを抱えて。私にも姉がいるから、姉妹の複雑な心境には共感出来るところも
多かったです。
なんだかんだいいつつ、人間心理に切り込む手腕はさすがだな、と思いました。
えんどう豆の絵本の使い方も良かったですね。



似鳥鶏「迫りくる自分」(光文社)
今までの作風と随分変えて来ましたね。今までで一番シリアスな作品じゃないでしょうか。
一人称も『俺』だし。似鳥作品で『俺』っていうのが最初なかなか受け入れられなくて、
違和感ありまくりでした。途中で兄の視点に切り替わった時に『僕』だったので、
やっぱりそっちの方がしっくり来るなぁ、と思っちゃいました。まぁ、主人公が
置かれた立場を鑑みれば、『俺』の方がしっくり来るとは思うのですが^^;
主人公の本田は、自分とそっくりな容姿を持つ男と出会い、出会った記念に飲みに
行くことになります。相手のいい加減な性格に辟易して楽しい酒とはならず、飲んで
いるうちに酔って寝てしまいます。そこで、知らないうちに携帯の情報を盗まれた
ことで、本田の人生が大きく狂うことに。自分と同じ顔を持つ男は、本田の会社の
女性の元に本田として押しかけ、強姦しようとし、未遂に終わったものの逃亡。本田
は見に覚えのない罪で警察に追われる羽目に陥るのです。冤罪でこの先の人生を破滅に
追いやられることに腹を建てた本田は、逃げられるところまで逃げてやろうと決意。
そこから本田の逃亡生活が始まることに――。
まぁ、とにかく怖いというか、理不尽なお話です。全くやってもいない罪で、警察から
追いかけられることになってしまう男の逃亡劇。似鳥さんにしては緊迫感があって、
ハラハラしながら読みました。本田に罪を着せようとした男に対しては、怒りしか
覚えなかったですね。そもそも、本田を恨むことになった過程も、自業自得と言えなくも
ないですし。確かにきっかけは子供の頃に本田がした悪事ではあるので、そこは同情
出来なくもないですけど・・・だからって、その後の人生ダメにしたのは自分の至らなさ
なのに。こういう思考回路は全く理解不能ですね。

朴さんや兄のキャラは似鳥さんらしくてよかったですね。あと、本田の逃亡を助ける
路上生活者の佐伯さんとのやりとりが良かったな。こういう逃亡劇だと、やっぱり
最終的にはこういう人たちに助けてもらう以外にないのでしょうね。
本田の逃亡を読んでいて、家があって食事が摂れて、お風呂に入って普通に眠る場所が
あることが、どれだけありがたいことかを痛感しました。もし、自分がこういう理不尽な
目に遭っても、本田のように逃げ続けることなんて出来ないだろうなぁ・・・。

兄と話した後の携帯番号を見た瞬間に突破口が開けたシーンで、だいたい結末は読めて
しまったのですが、最後は因果応報の結末になってすかっとしました。
本田に平穏が戻って本当に良かったです。ただ、はじめに自分のそっくりさんを見て
本田が考えていたことだけは、意外だったのですが。本田の身に起きたことを理不尽だと
思っていたけど、実は、一歩違っていたら逆の立場だったかもしれないのですね・・・。
そういうことを考えていた本田に少し失望してしまいました。でも、人間なら、大事な
人が窮地に陥っていたら、こんな風に考えてしまうものなのかもしれない。それを実行
するかしないかが、犯罪者とそうでない人間の分かれ目なのかも。

今までの似鳥作品のようなギャグ要素はほとんどありません。いつもの作風を期待すると、
ちょっと肩透かしを食らうかも。
面白く読みましたが、やっぱり似鳥さんはもうちょっと軽めの作品を書いて欲しいなーと
いうのが本音かな。






恐れていた予約本ラッシュがやって来てしまいました。現在回って来ている本が
6冊程・・・手元には二冊抱えている状態。うう、全部読みきれるかな。困った、困った(><)。
一日一冊ペースで読んでいた頃が懐かしい・・・速読術でも習うべきなのか(ToT)。
ミッチーの新刊も回って来たので頑張らなくては。