ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

相沢沙呼「雨の降る日は学校に行かない」/若竹七海「暗い越流」

どうもこんばんは。ここ数日風が強い日が続いてますね。
今日の風の強さもちょっと異常なくらいでした。しかし、そんな風の強い日に
職場の人間から無常にも『外の掃き掃除してきて』・・・何の嫌がらせなんだーーー(怒)。
風が止んでからじゃいけないのかよ!とぶつぶつ毒を吐きつつ箒とちりとりを持って外へ。
当然ながら、掃いても掃いても地獄に陥るワタクシなのでありました・・・はぁ、
疲れた。


愚痴はそれくらいにして、今回は二冊ご紹介。もう一冊先程読み終えたのが
あるんですが、それは次回持越しで。

では一冊づつ。


相沢沙呼「雨の降る日は学校に行かない」(集英社
中学生女子を主人公に据えた短篇集。一作づつ主人公を変え、六作の短篇が収め
られています。どの少女も、どこかクラスに馴染めず、ヒエラルキーの下の方で
くすぶっている女の子ばかり。学校という狭い空間の中で、自分の居場所が上手く
見つけられず、窮屈に生きる女の子の心情がとてもよく描けていると思います。
毎回思うけど、この作者が男性だというのに一番驚きますよねぇ。
私も、学生時代はどちらかというと彼女たちよりの、地味で目立たない学生だったので、
彼女たちの鬱屈は共感出来る部分が多かったです。幸いなことに、いじめられてたとか
クラスから無視されてたとか、そういう陰湿な思い出なんてものはないのですが。
まぁ、私が学生だった頃なんて、ヒエラルキーの上の方の女子だってそれほど
お化粧ばっちりの派手な子たちがいた訳じゃないから、今の子たちよりずっと
生きやすかったのかもしれないけれど。そういう意味では、今は普通の子レベル
でもお化粧するのが当たり前なのだろうし、携帯スマホは持ってて当然、みんな
ラインだのSNSだので繋がっているのだろうから、そういうのについて行けない子
たちは大変だろうなぁ、と思う。そういう所からいじめがどんどん広がって行ったり
するんだろうし。LINEの既読がどうとかで問題になるケースもどんどん増えている
とか言われてますしね(私はLINE自体をやっていないので、正直いまいちピンと
来なかったりするのですがね^^;)。
だから、ちょっとしたことでクラスから省かれてしまって、孤立してしまう子が
出て来る。あからさまないじめ描写というのはそれほど出て来る訳じゃないの
だけれど、どのお話もヒエラルキーの下にいる子たちの辛い心の叫びがひしひしと
伝わって来て、息苦しさを感じました。本人たちがいじめだと認識してないいじめ描写
って、一番陰湿な気がするな。表題作なんかは、ほんとに読んでいて気分が
悪くなって来そうでした。牛乳の臭いのする雑巾・・・うえぇぇ(><)。

それぞれの話にリンクがある訳ではないと思って読んでいたので、ラスト一作の
仕掛けには素直に驚かされました。途中でアレ?とは思ったんですけどね。なるほど、
こういう風に繋がるのかーと感心しました。誰もが、コンプレックスを抱えて
生きているのですよね。自分だけが周りと上手くいかない、何をやっても
上手く出来ない、と思いがちだけれど。
中二病そのまんまのお話ばかりだけど、最後は少し前向きになれる終わり方で
良かったです。女子中学生の繊細な心をとても上手く描いているな、と思いました。
ちょっと、辻村さんの『オーダーメイド殺人事件』を思い出しました。
しかし、雨の降る日は学校に行かないって、お前はカメハメハ大王か!とツッコミ
を入れたくなるタイトルですよねぇ(え、私だけ?^^;)。
ま、気持ちはわからなくもないけどね。私も雨が降る日は仕事に行きたくない(中二病!?笑)。


若竹七海「暗い越流」(光文社)
大好きな若竹さんの新刊が出た!と書店で見かけて狂喜乱舞しました。しかも、
単行本ってほんとに久しぶりじゃないか?もともと寡作な作家さんではあるけれど。
というわけで、めちゃくちゃ期待して読み始めたら・・・なんと、冒頭の作品から
葉村晶さんが登場!ノンシリーズの短篇集だとばかり思っていたから、それは
それは嬉しい誤算でした。まさかここで晶さんに再会出来るとわ・・・(ToT)。
ただ、二作目からは葉村シリーズではない短篇だったので、ちょっぴりがっかり感
もあったのですが。ま、最後の一作も葉村シリーズだったから、十分満足。
それに、短篇としての出来は、やはり日本推理作家協会賞(短篇部門)を受賞した
表題作が突出してるのではないかと。実は、ラストのオチがいまいちピンと来なくて、
何度か読みなおしたりしちゃったんですけど・・・(アホ)。
ラストのオチの黒さがなんとも若竹さんらしい。二作目の『暗い越流』と三作目の
『幸せの家』は、同じ登場人物が出て来るから、語り手も同じかと思いきや、
違うんですね。そこがまた巧いところで。両方に出て来る南が、最後にああいうことに
なるとは・・・。『暗い~』の時から、『幸せ~』の構想があったということでしょうか。
二作づつシリーズものが入っているせいか、四作目の『狂酔』だけちょっと異色な感じが
したのですが、これはこれでラストの一撃がなかなかの破壊力を持った秀作。カレーを
食べさせる時点でもしや・・・という想像はしていたのですが。
葉村シリーズの二作ももちろん面白かったです。一作目の『蝿男』のオチはピンと
来ました。ラストの『道楽車の金庫』の、こけしに隠された金庫の番号の示し方が
面白かった。そういう手があったのか、という感じ。しかし、何千体というこけし
飾ってある光景って、想像するだけでホラー。こういう家に一人で乗り込んで行ける
晶さんってやっぱりすごいひとだ・・・と思わずにはいられないのでした。それにしても、
相変わらず晶さんは行く先々でヒドイ目に遭うなぁ。たまには、幸せな目にもあわせて
あげて欲しいなぁ、とも思うのだけど。でも、このシリーズはやっぱり晶さんが
満身創痍がナンボなのかもしれないな(苦笑)。晶さんが働く吉祥寺のミステリ専門書店、
めちゃくちゃ行ってみたくなりました。モデルが実在したそうで、行ってみたかったなぁ。
若竹さんの私家版短篇小説も読んだみたかったぁ(><)。
相変わらずブラックで小技の効いた短篇集でした。面白かったです。
今度は、葉村シリーズの長編をお願いしますっ。




全く毛色の違う短篇集二冊でした。短篇は読みやすくていいなぁ。オチもすぐわかるし。
でも、短篇が続くと今度はがっつり長編が読みたくなったりして。
予約が交互に回って来てくれるとちょうどいいんだけど。そうもいかないのが
現実なのですけどね(苦笑)。