ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どうもこんばんは~。5月も中盤を過ぎましたね。
みなさま、5月病などに罹られておりませんでしょうか。
ワタクシは、今年は最大四連休止まりだったので(ほんとに飛び石連休だった^^;)、
結構あっさり仕事復帰出来ました。いいのか、悪いのか(苦笑)。

前回からの読了本は三冊。毎度ながら予約本が絶妙に重なりまして、スピードアップ
しないととても読みきれない・・・^^;今借りて来ているのは絶対スルーしたくない
本ばかりなので、とにかくちょっとの時間を見つけては必死で読んでおります。
しかも、こんな時に限って分厚めの本がまだ三冊・・・しーん。がが、頑張ります。


では、一冊づつご紹介。


薬丸岳「刑事の約束」(講談社
ついこの間シリーズ二作目に当たる長編を読んだばかりなのですが、もう三作目が!
さすがに、ドラマ化されると続刊が早く出ますねぇ(笑)。まぁ、今回の作品は
一作目同様、雑誌に連載されたものをまとめたもののようなので(最後の一作のみ
書きおろしのようですが)、たまたまタイミングが合ったのでしょうけれどね(苦笑)。
さすがに今回は夏目さんのことをよーーーく覚えてました(当たり前だろ^^;)。
短篇が5作収録されております。
一見やる気がなさそうで、実は鋭い視線で事件を解決に導く夏目刑事の手腕はさすが。
鋭い洞察力を持っているところは、東野さんの加賀刑事のようです(一作目の記事でも
同じ感想を述べていました(笑))。
万引き少年の意外な真実を描く『無縁』、婚約者を暴行事件で失った男が、犯人の男の
結婚披露宴で復讐しようと企てる不惑、殺人容疑で警察に追われた男が、逃走中に
車に撥ねられて死亡。彼が最後に遺した言葉『頼む・・・』の意味に迫る『被疑者死亡』
親しくしていた筈のケアマネージャーを階段から突き落とした老婆の真意を探る『終の住処』
母子二人暮らしの母親を殺された、やせ細った娘。彼女の拒食症の裏にある真実を暴く
『刑事の約束』
どれも、意外な落とし所が用意されていて、最後になるほど、と納得しつつじんわりと心に
沁みる作品ばかりです。個人的には『不惑』とラストの『刑事の約束』が好きかな。夏目さんの
優しい目線がいいですね。彼自身も娘のことで酷い傷を負っているからこそ、他人の痛みがわかるの
かもしれません。刑事でいることに迷いや悩みを抱えながらも、事件と真摯に向き合う姿勢に
胸を打たれました。最後の表題作で、そんな夏目さんに希望の光が見えたことがとても嬉しかった
です。それは新たな苦悩の始まりかもしれないけれど、彼が何より望む願いがひとつ叶ったの
だから、どんな苦難でも乗り越えられると信じたいです。
続きがあるとしたら、新たな活力を得て、また少し強くなった夏目刑事が見られそうですね。



似鳥鶏「神様の値段 戦力外捜査官2」(河出書房新社
ドラマ化された『戦力外捜査官』の続編。最近の人気のせいか、かなり待たされました。
前は蔵書一冊くらいしかなくても、そんなに待たずに回って来ていたのになぁ・・・。
前回も、作風の軽さとは逆に、事件の大掛かりさに面食らわされたところがあったのですが、
今回はさらにそれがグレードアップ。このシリーズはキャラの軽さと事件が反比例するよう
ですね・・・^^;今回はいかがわしい新興宗教が戦力外コンビの相手。しかも、今回初登場の
設楽刑事の妹がその宗教の餌食になってしまいます。正直、教団の言うことをすっかり信じ
込んでしまった妹の言動を読むのがかなり辛かった。必死で改心させようと説得する設楽刑事
との会話の噛み合わなさがなんとも歯がゆくて仕方なかったです。宗教に染まった人間との
会話の虚しさをひしひしと感じました。まるで宇宙人と会話しているようなんですもの・・・。
教団が企んだことは、誰しもにかつてのオ○ム真理教事件を彷彿とさせるでしょう。今回の
彼らが企てた計画は、オ○ムのやり口よりも更に悪質です。実際もしこういうテロ行為が
行われたらと思うと・・・背筋が寒くなるどころの話じゃないです。それを正義だと思って
実行出来てしまう心理というのは、全く本当に理解不能です。モンスターとしか思えません。
なぜそういう人間が出来てしまうんでしょうね・・・。弱い者からお金を絞り取って、自分
たちは悠々自適の生活を送る。信じる者は救われる、なんて嘘ばっかり。虚飾で塗り固めた
教祖には、嫌悪しか覚えなかったです。一番ショックだったのは、設楽刑事の妹がその
おぞましい教祖の餌食になってしまったことです・・・。その部分は、書かなくても良かった
んじゃないのかなぁ・・・。もちろん、当然そうなるであろう展開ではあるんですが。でもでも、
設楽刑事の大事な妹なのに・・・。まぁ、正直、宗教にハマった後の妹の言動を読めば読む程、
彼女に嫌悪しか覚えなかったんですけどね。でも、弱いところにつけこまれた被害者とも云える
訳で。そこまで、彼女の人生に泥を塗らなくても良かったんじゃないかって思えて仕方なかった
です。自業自得と言えばそれまでですけどもね。
最後は、上手く行き過ぎな印象は否めなかったものの、戦力外コンビの活躍で事なきを得て
ほっとしました。妹の行く末にまで気を配る千波ちゃんはさすがですね。ほにゃほにゃしてて
そうで、実は誰よりもしっかりしているところが素敵です。意外と計算高そうな部分もちょこちょこ
出て来るんだけど、本音はあまり計算しててほしくないなぁって思う。彼女には、あくまでも
天然でいて欲しいなーというのが正直なところですね。
それにしても、今回の設楽刑事は満身創痍で痛々しかったです。それに加えて妹に関する
ダメージも大きかったし。ゆっくり身体を休めて、また次の事件に備えて欲しいものです。


大崎梢「忘れ物が届きます」(光文社)
大崎さんの最新作。主人公たちが、過去に起きた事件を回想して、腑に落ちなかった部分の真実に
たどり着くという形の短篇が5作収録されています。タイトルは、過去に解決されないまま
忘れていた真実が、現在になって解決して届くことを意味しているのでしょうね(多分・・・?)。
木の実のストラップが過去を遡るきっかけになる『沙羅の実』、学園の人気者が平凡な主人公と
三年前の女子暴行事件の謎を推理する『君の歌』、同棲を解消することになった恋人同士が、別れの日に
ふとした会話から気付くことになった半年前の出来事の謎を描いた『雪の糸』、引っ越したお隣
さんが十年前にしてくれたこと、そしてその真実を描いた『おとなりの』、鎌倉の豪邸に暮らす
富豪マダムの回想録作りを任されたライターの香留。インタビューの中で、徐々に明らかになる
依頼人の秘密の過去に迫る『野バラの庭へ』
私は一作目の『沙羅の実』が一番好きでした。過去の事件の真実にも意外性があるし、最後の反転も
お見事。短篇として非常にいい出来なのではないでしょうか。ラストの『野バラ~』の雰囲気も
好きなのだけれど、ちょっと終盤展開がわかりにくかったのが残念だったかな。ラストの切ない
余韻は良かったけれど。ラストの反転という意味では、『君の歌』も良かったですね。最後、主人公が
かけた電話の相手に驚かされました。その後良い展開になっていたら良いのだけれど。
大崎さんの作品の中では、非常にミステリ度の高い短篇集になっているのではないでしょうか。
なかなかの良作揃いで、楽しめました。過去の事件に拘ったところが面白いですね。ちょっと
変化球の安楽椅子探偵ものみたいな感じ?過去の回想だけで事件の真相を探って行くという意味で。
過去には実際推理する人間が事件に関わっていたりもするから、ちょっと違う気もするけど。
なかなかおもしろい趣向の短篇集だと思いました。




今回はミステリ三連発でした。短篇長編短篇と、バランス良く読んでますね。実は今読んでるのは
長編。別に意図してる訳じゃなくてたまたまなのだけれど(笑)。
来週は東野さんの新刊が出ますね。発売日に予約出来るかなぁ(平日だから無理かも・・・(><))。