ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どうもみなさま、こんにちは~。
ついにW杯始まりましたね!先日の日本戦は、観たあとショックで一日
無気力になりました・・・。
明後日は運命の第二戦、ギリシャ戦。絶対、絶対、絶対勝って望みを繋げて
欲しいっっ。みなさま、応援しましょう!!


余談はそのくらいにして、読了本は三冊。
今回は軽めの作品ばかりだったかな。前回の記事で取り上げた彩瀬さんの
作品も入っております。


では、一冊づつご紹介~。


越谷オサム「いとみち 三の糸」(新潮社)
シリーズ第三弾にして完結編。いとちゃんもついに3年生。受験と卒業が
待ち受けています。合間合間にメイドのバイトや写真部の活動なども挟みつつ、
勉強に勤しむ日々。どんなことにも必死で真摯に取り組むいとちゃんの姿は
好感が持てるし、応援したくなりますね。小さな身体、気弱な性格だった
あのいとちゃんが、自分の進むべき道をしっかり見据えて、行きたい大学を
選択する成長っぷりにはとても驚かされました。あまりにも考え方がしっかり
しているので、第三第四希望の大学に落ちて泣きべそをかいているところに
ちょっぴりほっとした気持ちになったくらいです(笑)。
メイドのアルバイト先でも後輩の子に対する態度で成長したことが伺えました。
いとの勤める津軽メイド珈琲店では、漫画家の夢を叶える為に東京に行ってしまった
智美の代わりに、彼女の妹が新たにメイド喫茶のバイトとして加わることになり
ました。ただ、このチハルの勤務態度が酷く、いとも他のメンバーたちも頭を
抱えることに。そんな時、ついに、いとの我慢の尾が切れる出来事が起こります。
我慢の限界を超えたいとが、チハルに思いの丈をぶちまけるシーンはスカッと
しました。チハルがそれを受けて、180度ころりと態度を改めるところは、
さすがにちょっと出来すぎかなぁと思いましたけど。まぁ、もともとは素直な
性格なんでしょうね。最初はチハルの言動にまったく好感が持てなかったのですが、
いとのおかげでバイトに対する姿勢も熱意もまったく変わった彼女のことは
とても好きになりました。いとちゃんが年下とはいえ、あそこまで他人に対して
厳しく言葉を吐き出すことが意外でした。彼女も先輩になったんだなぁ・・・と
感慨深いものが(親か(笑))。
あとは、やっぱり鯉太郎との恋愛部分にきゅんきゅんしちゃいましたね~。
んもう、なんて可愛いふたりなの!!お似合いすぎる~。4月からは離れてしまう
けど、きっと一年後にはまた同じ場所に立っていることでしょう。鯉太郎の
頑張り次第だろうけどね(苦笑)。
そして、今回もハツヱおばあちゃんは最高に粋だった~!いとちゃんのために
コンテストに出るくだりも微笑ましかったなぁ。その結果もですけど。優勝できなくて
落ち込む姿も可愛らしかったし。ラストで津軽メイド珈琲店とあんな繋がりが出来る
とは思わなかったけれど。まだまだご健在で元気でいられそうですね。
これで終わりとは本当に寂しい限りだけれど、三冊通していとちゃんの成長が伺えて
とても爽やかな青春小説でした。いとちゃんがいつか、地元に帰って来て、地元の
地域活性化を実現出来る日が来ればいいな、と思います。彼女なら、三味線の方で
てっとり早く地元を有名に出来そうだけれどね(笑)。


彩瀬まる「神様のケーキを頬ばるまで」(光文社)
読んだばかりの『骨を彩る』に続き、こちらもなかなか良かったです。今回も、微妙に
それぞれがリンクしている連作短篇形式。主人公はすべて違いますが、いくつかリンク
する要素が入っていて、全体的な繋がりを意識した構成になっています。大きいリンクは
ふたつ。駅前の古いデパートと、ウツミマコトという映画監督の『深海魚』という映画。
正直、映画の方に関しては、これだけ近いところにいる人たちが、全員同じ映画(しかも
それほど大ヒットした訳でもない)に関わる出来事がある、というのはちょっと偶然が
すぎるかなーと思わなくもなかったのですが。まぁ、そのキーワードがあるから、統一感の
ある短篇集になっているともいえる訳なのでね。
今回も、胸に鬱屈を抱えた人々が、日常を生きる中で少し前向きになれる何かを見つけて
行く物語集。派手な意識改革がある訳ではないのだけれど、ほんの少し見方を変えるだけで、
明日も頑張ろうと思えるようになれたりするんだな、と感じられる作品ばかりでした。
表題にも繋がるラストの『塔は崩れ、食事は止まず』が一番好きだったかな。出て来る
パンケーキが本当に美味しそうだった~。ラスト、主人公が晴彦少年にパンケーキを作って
あげるシーンがとても好きでした。多分そういう流れになるんだろうなーと思いながら
読んでたんですけどね。案の定パンケーキを作り始めたところで、内心快哉をあげたく
なりました(笑)。美味しい食べ物って、人の心を幸せにしますよね。ましてや、それが
その人の為を思って作った愛情入りなら尚更ね。
ちょっとした文章にもセンスが感じられて、なかなかいい表現をする方だなーと何度も
思わされました。これから注目の作家さんになりそうです。


坂木司「ホリデー・イン」(文藝春秋
大好きな『ワーキング・ホリデー』シリーズのスピンオフ。この間続編が出てビックリ
していたばかりだったのに、その上スピンオフまで出ちゃうなんて、嬉しい限りです。
映画化されたそうで、やっぱりメディアに出ると、そういう恩恵に預かれるのだから、ファン
としてはありがたいことです。映画はどんな感じだったのかなぁ。EXILEのAKIRA
ヤマトだったのか・・・なんか、イメージ違うような。
今回は、メイン登場人物たちの前日譚や後日譚がそれぞれに語られます。進君がヤマトと
出会う直前のお話だったり、ヤマトがジャスミンさんのお店に入るきっかけになったお話
だったり。前半のお話のキャラは大分記憶が薄れちゃってる人が多かったし、進君や
ジャスミンさんのお話を読んだあとでは余計に、一作目の『ワーキング・ホリデー』を
無性に読み返したくなりました。ああ、手元にあったらよかったのに・・・!!!
進君がヤマトに会いに来る為には、ものすごい覚悟が必要だったんだねぇ・・・。
ヤマトに会う直前の緊張してドキドキする様子が手に取るように伝わって来て、こちら
までドキドキして来ちゃいました。ヤマトがああいう人間で本当に良かった。進君を
まるごと受け入れてくれる懐を持っているひとで。精神年齢は子供みたいなヤツだけど(笑)。
雪夜さんの意外な一面が見れたのも良かったです。もっとクールなひとなのかなーと思って
いたので。雪夜さんの想い人にもビックリしたなぁ。ジャスミンさんの想い人にも意表を
つかれたけど^^;雪夜さんが意地になって辛い唐辛子の炒めものを食べるシーンが好き。
こんな風に熱くなるところもある人なんだなーとわかって嬉しかったです。なんか、飄々と
要領よく生きている人なのかな、と思っていたけど、彼は彼で抱えているものがあったの
ですね。
本編を読まないといまいちピンと来ないお話もあるかもしれないので、これから読まれる方は
是非シリーズ前二作を読んでから読まれることをお薦め致します。続けて読むと、より
楽しめるかもしれません。ああ、一作目、再読したい・・・。