ミステリ読書録

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岡崎琢磨「珈琲店タレーランの事件簿2 彼女はカフェオレの夢を見る」/「君のために棘を生やすの」

どうもこんばんはー。今日から9月ですね。学生の皆さんは今日から新学期でしょうか。
といっても、最近の学校って8月の後半からもう新学期が始まるらしいですが(私の
小学一年の姪っ子もそうだったらしい)。学校の制度もいろいろと変わっているんですねぇ。


今回の読了本は二冊。
では、一冊づつ感想を~。


岡崎琢磨「珈琲店タレーランの事件簿2 彼女はカフェオレの夢を見る」(宝島社文庫
先日読んだタレーランの第二巻。意外と早く回って来ました。今回は、バリスタ美星
さんの実の妹・美空が登場。都内で学生をしている彼女が、夏休みを利用して京都にやって
来ます。美星さんとは正反対の明るく屈託のない性格の彼女は、珈琲店タレーランの常連、
アオヤマともすぐに仲良くなります。けれども、彼女は、この休みを利用してある目的を
果たそうとしていました。彼女はある人物に会うため、京都に来ていたのでした。
こそこそと様子のおかしい妹を心配する美星さんでしたが・・・というのが大筋。
妹登場(しかも性格も正反対)で、ますますビブリア古書堂シリーズとの類似を
感じてしまったのですが(あちらにも雰囲気の違う妹がいるので)。
ミステリ的には、前回程仕掛けに対する驚きはなかったかな。美空が会いたかった人物
が怪しそうなのは感じていたし。
今回一番驚かされたのは、美星さんが言った「いつから付き合っていたのですか?」
くだりだなー。いや、まさか、そんな展開!?とビックリ。ってか、相手がすんなり
認めたのが一番ビックリしたのだけれど。かなりガッカリな展開で、読むテンションも下がり
気味ではあったのですが、おそらく、最後で何らかのからくりが明かされるんだろう、と楽観的に
考えてはいました(読んでない人には意味不明な感想ですみません^^;;)。だって、
そのままの意味だったら、ほんと今までの言動は何だったのさ!って怒りたくなるじゃないの。
まぁ、予想通りの展開になって溜飲が下がったのですけどね(苦笑)。今回の件で、さらに
距離が縮まったことは間違いないでしょうしね。二人にとっては、かえって良かったのかもね。
あとは、美星さんと美空の関係にも驚かされたかな。似てなさすぎだろ~!って
ツッコミ入れたくなりましたけど(笑)。
今回は、珈琲薀蓄が控えめだったのがちょっと残念だったかな。ジャズベという道具は
始めて知りましたが。そういえば、喫茶店かどこかで見たことがあるような。
ここまで来たら、三巻も早めに読まねばいけませんね。早速予約しておこうっと。


「きみのために棘を生やすの」(河出書房新社
官能系の恋愛小説アンソロジー。寄稿している作家さんが最近好きな女流作家さんばかり
だったので、借りてみました。花房観音さん以外は既読。読んだ時は全然意識してなかったの
ですが、ネット検索してたら、『略奪愛』がテーマのアンソロジーだったそう。なるほど。
最後の宮木さんのなんかは、略奪愛っていうのかちょっと疑問に感じるところもあるけど
(誰からも略奪はしてない・・・よねぇ??ファンからってことかしら・・・)。
官能的な描写はどの作家さんの作品にも入っているのだけど、それほど生々しい感じは
しなかったので、さらっと読めました。どの作家さんのもなかなか面白かったな。略奪愛
・・・つまり不倫とか浮気とか、そんなテーマではあるけど、それほど嫌悪感も覚えなかった。
ただ、自分には縁遠いお話だなーって感じはしましたね。こういう女性の心理は、正直
私には理解出来かねるなぁ。不倫願望とか一切ないんで(いや、あったら困るけど^^;;)。
一番好きだったのは、彩瀬まるさんの『かわいいごっこかな。白文鳥の行動がいちいち
面白かった。可愛らしいところと、小憎らしいところと両方あって、小鳥でもメスはメス
なんだなーと、変なところに感心しちゃったり。鳥って、つがいでなくても、発情すれば
卵を生むものなんですね。だから有精卵と無精卵があるのか。目から鱗でした(常識?^^;
相方は知っていた・・・)。でも、無精卵を生むことが命を削ることだとは。確かに、
出産は命がけといいますものね・・・。鶏も、命を削って卵を生んでくれているのだなぁ・・・。
主人公に小鳥を押し付けて姿を消した男にはムカっとしましたけど、ラストのミツル(白文鳥の名前)
の行動に微笑ましい気持ちになりました。彩瀬さん、やっぱりいいなー、と再認識できた一作。
千早茜さんの『夏のうらはら』も良かった。ラストはかなりベタな展開ではあるけど、
5作の中では一番まっとうな恋愛を描いている気がする。かなり遠回りはしているけれど。
ただ、お互いに不器用だっただけで。純愛、と言ってもいいかもしれない。
一番言動に嫌悪を覚えたのは、花房観音さんの『それからのこと』のヒロイン三千子。
あまりにも身勝手すぎる言動に、ドン引きでした。振り回された平丘がひたすら哀れでした。
冒頭の窪美澄さんの『朧月夜のスーヴェニア』は、過去の燃えるような恋愛の経験を糧に、
今を生きている年老いた主人公がなんとも逞しい。普段自分を見下している孫を、心の中では見下して
いる、女性特有の強かさや傲慢さをいまだ持ちあわせているところが、かえって好ましかった。男性に
激しく愛された経験っていうのは、女性をいつまでも枯れずに女性でいさせてくれるものなんで
しょうね。
ラストの宮木あや子さんの『蛇瓜とルチル』は・・・すみません、正直一番理解出来なかったです^^;
蛇瓜が散らばった部屋・・・お、落ち着かない^^;アイドルが好きなのはいいけど、手をつけちゃ
いかんでしょう・・・。業界って、こういう所なのかなぁ。なんか、芸能界の裏の汚い部分を
見せつけられた感じがして、ちょっと嫌だった。綺麗なものは、綺麗なままで鑑賞するだけに
しておけないのだろうか。

なかなか好みのアンソロジーでした(っていうと、なんか誤解を受けそうだが^^;;)。
寄稿作家さんがとにかく豪華でした。5人中3人が『女性による女性のためのR-18文学賞出身者
なのですね(窪さん、彩瀬さん、宮木さん)。この賞から出る作家さんはなかなか自分好みの
ようだ。これからも注目していこう。