ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

綾辻行人「アヤツジ・ユキト2007ー2013」/東野圭吾「マスカレード・イブ」

どうもどうも、こんばんはー。
今日の東京は久しぶりの快晴で、気持ちのいい天気でした。台風がどうなるかひやひや
しましたが、さっさと温帯低気圧に変わってくれてよかった、よかった。
昨日は六本木の国立新美術館で、オルセー美術館展を観て来ました。
パリのオルセーで観て感銘を受けたカバネルの『ヴィーナスの誕生』と大好きなギュスターヴ・モロー
の絵が観れて感激しました。『ヴィーナスの誕生』は、ボッティチェリの方が有名だけど、実は
私はこっちの方が好きなんですよね~。他にもマネの絵が結構来ていたのが嬉しかったな。
久しぶりに美術館賞して楽しかったです。


本の方は二冊。一冊づつ感想を。


綾辻行人「アヤツジ・ユキト2007―2013」(講談社
タイトル通り、2007~2013年にかけて雑誌その他に掲載された、『小説以外の文章』
をまとめたもの。エッセイ、評論、対談、解説etc.様々な文章を一冊にまとめた雑文集第三弾。
前二作同様、今回もとっても楽しめました。それぞれの雑文につけられた注釈を読むのもまた
楽し。
今回は、『Another』関係の文章が多かったですね。映画・アニメ・漫画と、いろんなメディアに
波及して大ヒットした作品でしたから、綾辻さんの仕事も多岐に渡ってとても多忙だったようです。
あとは、『深泥丘奇談』についてのコメントも多かったかな。綾辻さんご自身、かなり気に入っている
シリーズだそうで、主人公の作家は綾辻さんご自身が投影されているところも多いようです。
あとは、毎度のことながら、麻雀と楳図かずお氏と、ダリオ・アルジェントの映画への愛が
随所で溢れてます(笑)。よっぽどお好きなのね。
それと、今回も至る所で亡くなった講談社の名物編集者・宇山さんへの様々な思いが綴られて
います。綾辻さんにとって、本当に本当に、大事な人だったのですね・・・。
本格ミステリ大賞や横溝賞の選評を読むのも面白かったです。私も読んだ『消失グラデーション』
『ロスト・ケア』をかなり絶賛されていたのが印象的でした。確かに、どちらも面白かった。
6年分の小説以外の文章をほぼまるまる収録しているので、かなり読み応えありましたね。
でも、こうやってまとめてみると、六年なんてあっという間って感じもしますね。このブログだって、
初めてからもう7年?8年?経っちゃってるんだものねぇ。月日が経つのは、本当に早いものだ
(どうした?^^;)。
エッセイとはまた違った味わいがあって、こういう雑文集っていうのも面白いものですね。所々で、
素の綾辻さんが垣間見えるところが嬉しかったです。


東野圭吾「マスカレード・イヴ」(集英社文庫
『マスカレード・ホテル』の前日譚集。四作の短篇が収録されています。ホテルに勤める尚美と
刑事の新田が『マスカレード~』で出会う前にそれぞれ体験した出来事が描かれています。当然
二人一緒のシーンはなし。ただ、ラストの一作で惜しいニアミスはあるのですけれど(ニアミス
って言い方は正しくはないかもしれませんが^^;)。

一話目の『それぞれの仮面』は、尚美視点の話。かつての元彼が尚美の勤めるホテルに泊まりに
やって来て、ある問題に直面。尚美に助けを求める、というお話。途中、なんてロクでもない男と
付き合ってたんだー!と怒り心頭に達しそうになりましたが、彼にも事情があったことがわかり
納得。ミステリとしては何てこともない話ですが(^^;)、尚美のホテルの仕事に対する真摯な姿勢が
よくわかる作品でした。

二話目の『ルーキー登場』は新田視点の話。新田はまだまだ駆け出しで、新人の青二才って感じ。
帰国子女のエリートで、仕事の前に女といちゃいちゃしたりするし、ちょっと嫌味な印象が
ありますね。でも、捜査になると真摯に動いて鋭い閃きを見せたりもするので、そこは好感
持てたかな。

三話目の『仮面と覆面』は再び尚美視点。今をときめく美少女作家が締め切り前の缶詰の為に
尚美たちのホテルにやって来ます。その情報をキャッチしたファンのおたくたちが、一騒動起こす、
という話。作家の『玉村薫』は、ついつい頭の中で北村薫さんを思い浮かべてしまいました。
ていうか、どう考えても絶対モデルは北村さんだよね?^^;
確か北村さんも最初は覆面作家だったのですよね。作風からも名前からも、誰もが北村薫は女性だと
思っていたのじゃないかしらん。今回の話って、まさにそのエピソードそのまんまじゃん!とね。
とはいえ、それを逆手に取ったオチがついているので、そこはさすが東野さんって感じでした。

四話目の『マスカレード・イブ』は、まさに本編の前日譚。間接的にではありますが、尚美と
新田にちょっとした繋がりが出来ることになるお話。穂積理沙って、本編に出て来てたんでしたっけ。
全然覚えてないけど^^;明るさとやる気が若干空回りしている感じがなきにしもあらず。尚美が
地に足をつけたタイプの女性なので、対照的な印象を受けました。○○殺人ネタは、使い古された感
があるので、あまり目新しさはなかったのですが、尚美のホテルマンとしての優秀さが、理沙を
通したことでかえって際立っているところが良かったですね。

あくまでも『仮面』に拘った連作集になっているところも統一性があって良かったです。前日譚が
書かれたのだから、今度はちゃんとした続編かな?また二人の活躍が読みたいですね。