ミステリ読書録

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三津田信三/「どこの家にも怖いものはいる」/中央公論新社刊

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三津田信三さんの「どこの家にも怖いものはいる」。

作家の元に集まった五つの幽霊屋敷話。人物、時代、内容…バラバラなはずなのにある共通点を見つけた時
ソレは突然、あなたのところへ現れる。これまでとは全く異なる「幽霊屋敷」怪談に、驚愕せよ(紹介文抜粋)。


三津田さんの最新作。ルポルタージュ形式の小説といいましょうか。どこまで真実なのかそうでないのか、
よくわからない内容となっております。
いや、もちろんほぼフィクションなのでしょうけれどね。読んでいて、以前に読んだ小野不由美さんの
残穢を思い出しました。まさしく、あんな感じです(読んでない人には意味不明でゴメンナサイ)。
作家の三津田信三の元に、ある特殊な分野の専門出版社の編集者である三間坂秋蔵から、二つの奇妙な
怪談話が持ち込まれるところから物語はスタートします。三間坂曰く、その二つの怪談は、『まったく
別の話なのに、どこか妙に似ている気がして仕方がないという、うす気味の悪い感覚に囚われた』
なのです。
そして、そこから発展して、同じような感覚に囚われる話があと3つ出て来ます。結果、時代も登場
人物も内容も全く別の話なのに、どこか似たような感覚を覚える話が5つ紹介されます。
その怪談話に関わり始めてから、彼らの周りで怪現象が・・・。それでも、彼らは独自の推理で
5つの話に共通点を見つけ出し、隠されたミッシングリンクを探し当てる・・・と、そういうお話。
作中作の怪談は、それぞれにぞくっとさせられるところはあるものの、思った程には怖くなかった
かなぁ。一度、家に一人でいて、お風呂に入ってる時ふと思い出しちゃってぞーっとしたことが
ありましたけど。
5つの話は、基本的には全く別のお話なのですが、いくつかキーワードになる要素が共通しています。
そこを突き詰めていって、最終的には繋がりが見え始める訳なのですが。なるほど、と納得出来る
ものではあったのですが、若干強引な気がしなくもなかったです。でも、不可思議な怪異に合理的な
説明をつけてしまう三津田さんの手腕はさすがだな、と思いました。フィクションとノンフィクション
の境があやふやになるような書き方をしている分、ミステリ的な解釈がいつもよりも曖昧になって
いるのは計算してのことなのでしょうしね。
正直、三津田さんの著作に関する記述はほぼすべて事実を述べているようなので(『幽女の如き~
の執筆裏話とか、その合間に発表した短篇のことだとか)、最初は本気でノンフィクションなのかも、
と信じかけちゃいました(アホ)。その辺りは、『残穢』の時も騙されかけたんですけどね(笑)。
読んでて、本気で最後までページめくっていいのか迷ってしまいましたよ(最後まで読んだら、
読んでる人にも怪異が振りかかる・・・みたいな記述が出て来るんで^^;)。また、冒頭の
『お願い』の部分も、最後の参考文献の部分も、ノンフィクションっぽさを上手く演出してますし。
なかなか凝った趣向の作品だな、と思いました。
作中作の5つの怪談も、そこだけ読んでも面白いです。怪談短篇集としても楽しめるのでは
ないかな。先に、思った程は怖くなかったとは述べましたけど、一人で夜読んでたら、やっぱり
どれもそれなりにぞぞぞーっとするお話だと思う。自分がこんな体験したらと思うと・・・ひーー(><)。
っていうか、自分の家にこんな怪現象が起きたら、ほんとに暮らして行けないです・・・。

面白く読みましたけど、やっぱりそろそろ如き(刀城)シリーズの新刊が読みたいですねぇ。
ミステリ好きとしては、やっぱり年に一作くらいは、おどろおどろしい、がっちがちの横溝風本格
ミステリが読みたいですからね。