ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どもども。すっかり秋ですねぇ。

子供たちは運動会シーズンですね。我が姪っ子甥っ子もそれぞれに運動会があったようです。
しかし、最近の運動会って必ず土曜日にやるんですよね。私たちの時代は日曜にやっていた
ような気がするんですが(土曜も授業があったせいかな)。雨の日の振替の為に土曜日に
やってるらしいですけどねぇ。
そのせいで土曜に仕事がある私は観に行けたためしがありません。たまには応援に行って
あげたいのになぁ。

今回は久しぶりに三冊読了。三冊まとめて感想を。


北村薫「八月の六日間」(角川書店
湊さんの『山女日記』より少し前に刊行されていたと思うんですが、こちらも似たような
山ガールの山登り記録小説(勝手にジャンル付け^^;)でした。ほんとに世間は山登りブーム
なんですかねぇ。似たような時期に同じようなジャンルの小説が立て続けに出るとは。
結構話題にもなっていたようで、予約もかなりの数になってましたし(湊さんはジャンルに
関わらずいつも予約数すごいので、比較出来ないのだけど^^;)。
ただ、こちらの方が心理描写は控えめで、山登り紀行が中心かな。必ず、持っていくもの
リストが書かれているのが面白い。登る山や日数によって持っていくザックの大きさも
変わるし。細かい描写がほんとにリアル。主人公が楽しそうに持っていくお菓子を選ぶ
ところは、遠足の前の小学生のようで可愛らしかった(笑)。山歩きには、絶対カロリーの
高いお菓子を持って行くのが定石ですもんね(飴とかチョコとか)。
あと、持って行く本に悩むところも、編集者ならでは。普通は山登りに本なんてもってのほか
らしいですけれどね。旅に出る時は私も絶対本がないと落ち着かない人間なので、彼女の気持ちは
よくわかりました。
山紀行中心とはいえ、少しづつ主人公の私生活に起きた出来事も明かされて行きます。主人公が
なぜ山に登るようになったのか、なぜ山に癒やされるのか、彼女の側にもいろんな理由が
あるのです。
主人公は文芸雑誌の編集者。最初は副編集長でしたが、そののち編集長に昇格しています。
過去に辛い恋を経験し、現在はシングルのアラフォー女子(最初の話では三十代後半、
最後の話では四十代前半になっています)。
やっぱり、その年でバリバリ働くキャリアウーマンには、それなりのストレスが
たまっているのですよね。彼女が山にハマって行くのも、むべなるかな。
ラスト一作で、心の枷になっていた元彼とすっきり決別出来たことにスカッとしました。
忘れたと言いつつも、過去の恋を完全に吹っ切るのってなかなか難しいことですよね。
元彼と意外な場所で再会した彼女が、すれ違いざまに彼に告げた言葉、最高です(笑)。
逆に向こうから言われたら、これほど打ちのめされる言葉もないけれど^^;
主人公が山で出会った麝香鹿さんとの再会も嬉しかったですね。山では一期一会というけれど、
ちゃんと繋がって行ける出会いもあるのだと。

読む時期としては、例の噴火があった直後で、正直いい時期に読んだとは言い難いのですが
(ああいう出来事がなければ、今の時期は紅葉で山登りには最適の時期だったのでしょうが)、
山登りを通じて、そこで出会う人々との触れ合いや美しい自然に癒やされて行く主人公の
気持ちがリアルに描かれていて、爽やかな気持ちになれました。



彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない」(新潮社)
最近ハマりつつある彩瀬さんの代表作(かな?)。書店で新刊として並んでいた時から気に
なっていた作品ではあったのですが。
内容は、思っていたのとは全然違っていたなぁ。もっと耽美的な内容なのかと思ってたんですが、
結構現実的なお話でした。
ドラッグストアの店長として働く28歳の梨枝は、地味で冴えない女性。母と二人で実家住まい。
母からの度重なる拘束に、窮屈な思いで暮らしている。当然ながら、男性と付き合った経験も
なかった梨枝が、自分の店のアルバイト大学生とあろうことか恋に落ちてしまう。8歳も年下の
彼氏が出来た梨枝は、少しづつ私生活が変わって行く・・・という、ストーリー的には大した事件も
起きない静かな物語なのですが。やっぱり、文章が魅力的ですね。ぐいぐい引きこまれました。
実は、最初は冒頭の蜘蛛が殺せない中年店員の柳原さんと主人公が恋に落ちる話だと思って読み
はじめたんですよね。不倫の恋かぁ、みたいな、ちょっとしたガッカリ感があったのだけど。
その柳原さんが、まさかの展開。いや、まさか、ここで出番終了じゃないよね?と思いましたが、
その通りだったという(笑)。最後の最後でまたちょっぴり名前が出て来はするけれども。
タイトルにまでしておいて、この仕打ち(笑)。いや、ある意味非常に意表をつかれましたね(笑)。
三葉君との恋愛は、梨枝が高額なプレゼントを彼に贈り始めた時点で嫌な予感がし出しました。
結果案の定の展開になるのだけど、その後がまた予想外の展開でした。私にとっては、予想が
外れて嬉しかったですけど。でも、梨枝が二十代のうちはまだいいけど、三十代になったら
どうなのかなぁ、とついつい思ってしまった。梨枝が三十代後半になっても、同じような気持ちで
いてくれるといいと願わずにいられませんでした(余計なお世話かもしれないけど・・・8歳の
歳の差って、結構キツイと思うんで・・・)。
ただね、梨枝は自分のことをかなり『ダメな人間』だと思ってコンプレックスを抱えているけれど、
28歳でドラッグストアの店長としてお店を任されて責任ある仕事をしているってだけでも、
十分他の人より立派だと思うんだけど。私にしてみれば、よっぽど羨ましい身分です。彼女の
コンプレックスは、多分に母親から植え付けられたものなので、彼女が卑屈になってしまう心理も
理解は出来るのだけど。もっと胸を張って生きてもいいのにな、と思ってしまいました。
終盤、義理の姉の雪ちゃんと二人で餃子を作るシーンが好きだったな。母親にSOSを出した後の
母親の嬉しそうな参戦に、私も嬉しい気持ちになりました。しかし、雪ちゃんの料理、なぜそこまで
まずく作れるのだろう・・・。レシピの通りに調味料とかはかって味つけすれば、どんなに料理下手な
人間でも、そこそこは美味しく作れると思うんだけどなぁ・・・。目分量でやったらダメだろうけども。
ちなみに、ワタクシは、虫は大の苦手なので蜘蛛なら大抵見つけたら潰していまいます。が、相方は
蜘蛛は害虫を食べてくれるありがたい存在なのだと言って外に出してやる派です(他にも、庭のバッタ
やカマキリに名前をつけて可愛がっている変な人です・・・害虫は迷いなく殺しますが)。こういう
ところに人間性が出ているのかなぁ・・・(でも、虫嫌いなんだもんーーー(><))。
今回も、何気ない描写にすごくセンスを感じました。うん、この方の感性やっぱり好きだな。
今後の活躍も楽しみです。


大倉崇裕「蜂に魅かれた容疑者 警視庁総務部動植物管理係」(講談社
『小鳥を愛した容疑者』に続く、シリーズ第二弾。待ってましたー!って感じ。蔵書数が
少ないせいで、かなり待たされましたが、読み始めたらあっという間に終わっちゃいました。
今回は長編。そして、メインの生物は、タイトルからもわかるように蜂。雀蜂を使って無差別テロを
企む犯人を追って奔走する須藤と薄コンビの活躍が描かれます。
相変わらず、この二人のコンビは最高ですね。薄ちゃん、ますますとぼけた性格になってませんか?^^;
二人の噛み合ってない、コントみたいな会話に何度も吹き出してしまいました(笑)。
薄ちゃんの、動植物に関する専門的な知識は今回も冴え渡ってましたね。こんなに専門的な知識が
あるのだから、警察じゃなくて生物学者とかになればよかったのに・・・と思わなくもないです(笑)。
蜂は、私も大嫌い。昔、一度刺されたことあるんですよね。毒性のある蜂ではなかったから、ちょっと
チクっとして少し腫れたくらいで済んだのですけど。それ以来、蜂を見ると恐怖です。養蜂場のミツバチ
なら、まだ頑張って蜜集めて偉いなーって気持ちにはなりますけど・・・でも、大群で群がってる
画像とか、やっぱりぞぞーっとします^^;;
多分、今回のようないきなり蜂が出現するような場面にい合わせたら、それこそパニックになって
逃げまどってしまうと思います。でも、スズメバチに出会ったら、むやみに動いちゃダメなんですね。
じっとして、敵意がないことをわからせる・・・って、蜂を前にして、そんなの無理だー^^;;
あと、白い服がいいのね。
そういえば、蜂の駆除業者って真っ白な防護服来てましたね。山に行く時は白い服を着て行こう・・・。
蜂テロ容疑者の思惑は、意外なところに繋がって行ったけど、最後はちょっとあっけなかったような。
まぁ、それも薄ちゃんの慧眼のおかげなんですけどね。
今回初登場の田之倉刑事、いい味出してました。二人に振り回された挙句、散々な目に遭ったのに、
ちゃんと職務を全うしようとする姿勢が素晴らしい。それなのに、最後にはまた散々な目に・・・哀れ。
彼はとことんそういう役回りなのでしょうね。でも、これに懲りずに、また二人に会いに行ってあげて
欲しいです。また登場して欲しいですからね^^
今回もとっても楽しめました。このシリーズ好きだー。また続編読みたいです。


なぜか今回は二作昆虫タイトルが続きました(笑)。蜂と蜘蛛・・・どっちもイヤーーー(><)。