ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

桜庭一樹「ほんとうの花を見せにきた」/森晶麿「偽恋愛小説家」

みなさまこんばんは。先日の台風、大丈夫でしたでしょうか。
関東はちょうど深夜の時間帯に再接近だったので、さしたる被害もなく
通過したので、ほっとしました。
それにしても、今年は本当に自然災害が多いですね。噴火に土砂崩れ(大雨)に台風・・・
地球が怒っているのでしょうか・・・怖いよぅ(><)。


今回は二冊読了。読書の秋なので、もっと読書ペースを上げたいところですが・・・。
今年は去年以上に読了数が減ってそうだなぁ・・・。


では、一冊づつ感想を。


桜庭一樹「ほんとうの花を見せにきた」(文藝春秋
桜庭さん最新作。ここ数作どうも私の好みでない作品が続いていたので、読む意欲が
若干削がれ気味ではあったのですが、やっぱり新刊が出ると予約しちゃうんですよね。
が、しかーし。今回のは私の好みドンピシャ!久しぶりに心の琴線に触れる物語が読めた
感じがして嬉しかったです。
中国から海を超えてやって来た、竹から生まれた妖怪『バンブー』と呼ばれる吸血鬼たちを巡る
物語集。三話収録されています。
個人的には、一話目が一番好きでしたね。
マフィアに家族を惨殺された少年をバンブーの二人組が拾って育てるお話。吸血鬼の二人が、人間の
子供の成長をワクワクしながら見守るところがとても微笑ましかった。それだけに、
その後の悲劇的な展開にショックを受けたのだけれど。
人間の子供「梗」がバンブーたちと別れ、老境に差し掛かって再び吸血鬼たちと過ごした家に
戻った後の展開も悲しかった。でも、最後に一番大切なひとに再会出来て幸せだったと思う。
梗とムスタァの関係がとても好きでした。
二話目は、第一話で登場した女バンブーが主人公。一話で女の子にとっては絶望的な身体的
ダメージを受けてしまったので、その後の彼女のことが心配だったのですが・・・。
桃という新たな人間の協力者を得た女バンブーの茉莉花は、二人で協力して人間を襲い、いくらかの
血と金品を得ながら暮らしています。けれども、ある日茉莉花は襲った人間を勢い余って殺してしまい、
桃の不審を買うことに。そこから桃の態度が変わり、彼女は茉莉花の元を去って行く・・・。
数年経って桃の前に現れた茉莉花が、桃に見せに来たものが何とも悲しくて美しくて。とても
やるせない気持ちになりました。茉莉花にとっては一生大事にしたい桃との思い出も、桃に
とっては過ぎ去った人生の一ページくらいでしかないことが、余計に悲しかったです。それでも、
最後に桃にほんとうに美しくきれいな花を見せることが出来た茉莉花。それだけも、彼女に
とっては幸せだったんじゃないだろうか。大好きな桃の前で自分の一番きれいな姿を見せることが
出来たのだから。桃の中にも、一生忘れられない茉莉花の姿が記憶に残った筈だしね。
三話目は、少し過去に遡って、一話二話でも登場した、バンブーたちの組織を統べる若き少年王の物語。
彼がなぜバンブーたちの王となったのか、そのきっかけとなる出来事を綴った作品です。前二作とは
随分性格が違う感じがしたので、驚きました。王となって、自然と性格が冷酷になって行ったの
でしょうか・・・。それとも、もとの性格はそのままで、規律違反をしたバンブーに対する時
だけ冷徹になっているのかな。前二作では登場シーンがほとんどないので、その辺りはよく
わからなかったです。容姿は平凡でも、頭は優秀な姉が最後に弟に託した「外に出て生きる」ということ。
自分には出来なかったけど、弟にだけは未来の国に行って生き延びて自分の王国を作って欲しい、
という切実な願いが、胸に響きました。彼女の遺志を継いで、弟は遥か遠い国で自分の王国を
作り上げた。彼女が作った王国の規律の元に。そうやってバンブーたちは新たな地で自分たちの
生きる道を切り開いて行ったんだなぁ、と感慨深いものがありました。
竹の性質を利用したバンブーの設定がよく効いているお話でしたね。ありきたりな吸血鬼譚じゃ
ないところが気に入りました。規律違反をした者に対する罰則だけがちょっと厳しすぎかな、とも
思ったけれど。人間と共存していく為には、そうしないと生き残って行けないのかもしれない
ですけどね。
優しくて切なくてやるせない、でもとても美しい吸血鬼譚でした。うん、良かった。これ
好きだなー。不思議なバンブーたちの物語、またいつか読みたいな。



森晶麿「偽恋愛小説家」(朝日新聞出版)
「第一回晴雲ラブンガク大賞」を受賞し華々しく恋愛小説家としてデビューした夢宮宇多。
担当編集者の井上月子は、受賞後第一作を書いてもらうべく度々催促するが、夢宮が持って
来るのはなぜかミステリのプロットばかり。恋愛小説を書いて欲しい月子はすべてをダメ出し
するのだが、なぜか夢宮は恋愛小説を書こうとしない。そんな中、夢宮の受賞作は別人が
書いた盗作ではないかという疑惑が持ち上がる。月子はなんとか彼の盗作疑惑を晴らす
証拠を見つけ出そうとするのだが――。
小説家夢宮宇多と編集者の月子のキャラと関係が、どうも黒猫シリーズの黒猫と付き人に
被って仕方なかったです。まぁ、そういう二人の関係は個人的には好みなのですが、同じ
作者だと思うと、若干二番煎じの感が否めないような。
連作短篇形式ですが、冒頭に掲げられた、恋愛小説家の夢宮宇多は、本当に偽恋愛小説家なのか
という最大の謎は最終話で明かされる形になっているので、長編としても楽しめると思います。
一作ごとに既存の童話がモチーフに使われているのがいいですね。シンデレラ、眠り姫、人魚姫、
美女と野獣。夢センセのそれぞれの童話解釈がなかなか斬新で面白かったです。まぁ、グリム童話とか
ペローの童話とかって、だいたいが日本で出版されているものより遥かに残酷で黒いものがほとんどなの
ですよね。基本は教訓譚ですものね。
眠り姫の母親が人喰い人種っていうのは、学生時代にラジオの仏語講座を聴いていた時に、ペローの
童話が題材で使われていて、耳にした覚えがありました(今回読むまですっかり忘れていたけど)。
糸巻きが意味するものについてもどっかで聞いたことがありました。そういうひとつひとつの要素を
つきつめて行くと、思っていた童話の話と全然違う解釈になるんですねー。面白いです。
人魚姫が悲劇的な喜劇って解釈も面白いですね。喜劇とは思ったことがなかったなぁ。
もともと王子が勝手すぎて、あんまり好きな話じゃなかったんだけど。この人魚姫の回の話は、
全体的にご都合主義的すぎるのが気になりました。偶然が重なりすぎる。このお話に限らず、他の話でも
同じような偶然が重なりすぎる腑に落ちなさはちょこちょこと感じたのだけど。黒猫シリーズでも
似たような感想持った話があったなぁ。
ただ、夢宮宇多自身についての仕掛けの部分はよく出来てましたね。まぁ、こういうことだろうな、
という想像通りではあったのだけど。本木と夢センセのキャラが違い過ぎるからねぇ。そりゃ、
何かあるだろう、と勘繰るのも当然でしょう。
まぁ、ミステリとして腑に落ちないところはちょこちょこあったものの、全体的にはとても
面白く読みました。黒猫シリーズとキャラが被るとはいえ、やっぱり夢センセと月子の関係は
好きですね。何、あの寝言のシーンは!胸がきゅんきゅんしちゃったじゃない(笑)。
夢センセのツンデレっぽいところがいいですよねー。んもう。少女マンガ好きとしては、痛い
ツボを突かれるといいますかね。うほぅ。
しかしね、ひとつ不満は、夢センセのデビュー作の恋愛小説、ストーリー読む限り、全然面白
そうじゃないんですが。なんであんな平凡な不倫ストーリーがそこまで評価されるんだ!?と
不思議でならなかったです。文章が良かったってのはわかるけど、あの話でそこまで感動出来る
ものなんですかね。不倫でしょ。私なら、そのテーマってだけで、感動は出来そうにないけど(偏見?^^;)。
ただ、終盤で明かされた、違った解釈が出来ると知った上で読むなら面白いと思うし売れると
思う(イニシエーション・ラブみたいにね)。でもねぇ、それもちと腑に落ちないところがあるん
ですよ。同じ人物の一人称で俺と僕が出て来たら、その時点で校正する人が指摘すると思うんです。
出版する前に。百歩譲って、そこをクリア出来たとしたって、読者の誰かが指摘すると思うんだけどなぁ。
素人にだって鋭い読み手がたくさんいるからね。恋愛小説ってジャンルだったから、それほど疑問に思う
読者がいなかったのかなぁ・・・うーん。それにしたって、恋愛小説もミステリも好きって読者は
たくさんいると思うなぁ。うーんうーん。って、こんなところに引っかかるのは私ぐらいだろうな^^;
天邪鬼ですみません^^;;
夢センセと月子の今後の関係が気になりますね。まだまだ取り上げられる童話はたくさん
ありそうだし、続編書いて欲しいですね。