ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

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どうもおばんです(誰?)。
あっという間に11月ですね。今年も残り二ヶ月を切ったなんて!!
年末の各種ランキングも気になって来ました。今年も読み残しがいっぱいありそうだ・・・。

今回は三冊読了。相変わらず予約本ラッシュが続いておりまして、なんとかかんとか
時間を作ってがつがつ読んでいるところです。それでも、せっかく予約して回って来たのに、
結局期限切れで読めずに返す本が出てしまっているのが現実・・・トホホ。
12月は仕事がめちゃくちゃ忙しい時期なので、なんとか11月中に読める本は読んで
おきたいと焦る今日この頃なのでした。


では、一冊づつ感想を。


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東川篤哉「純喫茶「一服堂」の四季」(講談社
東川さん最新作。えーっと、えーっと、コレ、表紙、おもいっきり例の珈琲ミステリの
パクリっぽいけど、大丈夫か?^^;;(わかりやすいように、画像載っけておきました)。
まぁ、ここまであからさまだと、狙ってるのもまるわかりだから(誰の目からみても)、
東川さんらしくていいのかなぁ。
設定だけ見ると、完全にタレーランとビブリアを足してニで割ったような感じ。
バリスタにして安楽椅子探偵であるヨリ子さんのキャラは、外見と珈琲を淹れて推理する
部分はタレーランの美星さんで、極度の人見知りな性格はビブリアの栞子さんを下敷きに
してそう。舞台は京都ではなく鎌倉なのでビブリアよりでしょうか。
開き直ったかのような設定のオンパレードで、読み始めは非常に不安に思ったのですが、
フタを明けてみたら、内容はやっぱりどこまで行っても私の大好きな東川ミステリそのもの
なのでした。
っていうか、ミステリとしては、正直タレーランやビブリアよりも面白かったです。
一作ごとに今回もツッコミ所も満載ではあるんですが(^^;)、ラスト一作の大仕掛に唖然。
むむむ、そうきたか。いやはや、だからタイトルに『四季』とつけたんだなぁ、と納得。一作で
きちんと完結するよう考えたんだろうなぁ。
しかし、ラスト一作、驚かされたことは間違いないけれど、えげつなすぎて・・・。読むの
キツかったわぁ・・・。これは、絶対映像化出来ない作品でしょうね・・・っていうか、映像化、
してほしくないーーーッ(><)。
松尾由美さんの安楽椅子探偵アーチー』も、いままでになかった、文字通りの安楽椅子探偵
ものだと思ったのだけど、本書もそれに負けず劣らずの、文字通りの安楽椅子探偵ものと云える
でしょう。これは、ぜひとも読んでご自身で確認して頂きたいです。結構、ずっこけると思うけど(笑)。
ヒントはこの感想の中にもあるのだけどね。
どの作品もトンデモトリックが面白かったです。実現可能かどうかなんて、東川ミステリに
於いて議論するのは無意味だと思うわ(だって、大体が実現不可能だと思われるから(笑))。
今回は小説ならではの仕掛けも施されているので、今までの作品ともちょっと変わったオチに
なっていて楽しめました。ご自身を投影された(皮肉った?)東山敦哉のキャラが出て来た
ところも面白かったです。ただ、読んでる限り、より東川さんご自身に近いのは、売れない作家の
南田五郎の方なんじゃないのかなーと思ったりもしたんですが(デビューからの成功の軌跡は
間違いなく東山の方ではあるのですが・・・)。
まぁ、とにかく、見た目は完全にパクリですが(おい^^;)、内容はしっかり東川さんらしい
ひねったミステリになっておりますので、ご安心を。


歌野晶午「ずっとあなたが好きでした」(文藝春秋

※若干感想ネタバレ気味です。未読の方はご注意下さい!





こちらは歌野さんの最新作。手にとって、その分厚さにまず若干引いたのですが・・・^^;
読み始めて、恋愛短篇集だと知って、更に引いてしまい・・・正直、各短篇の恋愛のオチも
いまいちすっきりしないものばかり(というか、ほとんど上手くいかない恋愛ばかり)なので、
途中で飽きて来てしまって、何度か挫折しそうになってしまいました^^;
・・・が!あの、歌野さんですよ。そんな、アッサリした恋愛短篇集なんか、書く訳が
なかったのです。騙されました・・・。
延々と読まされた短篇たちが、まさかああいう風に繋がっているとは・・・(絶句)。
実に、11作目の『女!』を読むまでは、まーったく、気づいてなかったです。確かに、
語り手がアダ名とかハンドルネームとかで表記されている作品が多いなーくらいの疑問は
頭にあったのですが。
『女!』のラストで「・・・アレ?」と思った疑問が、続く『錦の袋はタイムカプセル』
一気にすべてが明らかに。
いやー、お見事です。登場人物の年齢も身の上も舞台になる地域もバラバラだったので、完全に
騙されてました。時系列の並べ方が秀逸ですね。
後で考えると、ほとんどが上手くいかない恋愛の話なのに、『匿名で恋をして』の結末だけ
ハッピーエンドだったのも意味があったんですよねぇ。
若干反則だろ!と思わないところもないとはいえないけれど、よく出来ていると思います。
ただ、ラスト一篇は正直蛇足に感じたなぁ。あの一作があることによって、なんだかせっかくの
仕掛けも凡庸な恋愛作品に成り下がってしまったような・・・。まぁ、あの主人公らしいラスト
とも云えるのでしょうけれど。
一作づつ単独で読むと、恋愛小説集としてはさほど特筆すべきところもないように思えます。
一作目の『ずっとあなたが好きでした』は、ラスト一行であっと言わせるフィニッシングストローク
の結末ですし、『幻の女』『舞姫なんかは本格ミステリーとしても読めるような書き方もされているし、
それなりにバラエティに富んだ作品集のように書かれてはいるのですが。
ただ、そうしたバラエティに富んだ書き方も、すべてが作者の意図する着地点の為だったと思うと、
作者の手腕に脱帽せずにはいられませんでした。

とにかく、これから読まれる方は、この分厚さと『恋愛作品集』という歌野さんらしからぬ作風に
戸惑わずに、是非最後まで読みきって頂きたいと思います。とても良く出来た恋愛ミステリーで
あることは間違いないと思いますので。最後まで読んで、また前の作品に戻りたくなるかも。
イニシエーション・ラブとはまた違った、新たな恋愛ミステリーの傑作と云えるのでは
ないでしょうか。


深水黎一郎「大癋見警部の事件簿」(光文社)
あの、どこででも寝ちゃう問題警部(笑)が主役の連作短篇ミステリー!タイトル見てびっくり
しちゃいました。え、あのヒト主役に据えちゃって大丈夫!?・・・と・・・。
いやー、さすがおーべしみ警部。主役に据えようがタイトルに名前が入ろうが、彼の『何の役にも
立たない』キャラは健在でした(笑)。ほんとに、よくこんなんで警部までのし上がれたよなぁ・・・。
ミステリー好きならば一度は聞いたことがあるであろう、ノックスの十戒やらヴァン・ダイン
二十則』といった、本格ミステリーの法則に真っ向から挑んだ問題作がズラリ。
っていうか、もう、こんなのアリ!?ってな作品ばっかで、呆れるを通り越して笑ってしまった。
刑事たちも、みんなひとくせあるようなひとばっかりだし。いちいち現実の事件を本格ミステリ
置き換えようとする江草刑事のキャラが笑えました。毎度、何の役にも立たないおーべしみ警部に
酷い目に遭わされてちょっと気の毒になりましたが^^;
本格ミステリーとしては成立しないような作品ばっかりのような気もしますが、ミステリーの
新たな可能性を打ち出したという意味では、価値ある作品なのではないかと・・・思う・・・ような、
そうでもないような・・・もごもご。
だって、何たって、おーべしみが出て来る時点でもう、何でもアリになっちゃってるんで(笑)。
登場人物たちが、『小説に出ている』ってことを認識している時点で、完全にメタミステリですよね(苦笑)。
海埜警部が出て来るシーンだけ、なんとなく捜査がまともに進むような気がしました(苦笑)。他の
キャラはみんな、どっかまともじゃないんで^^;;
芸術家探偵の瞬一郎が、このシリーズに出演することを頑なに拒むってところにウケました(笑)。
ファンとしては、出て来て欲しかった気もしますけど・・・でも、やっぱり出さなくて正解かも^^;
基本脱力系のオチばっかりでしたが、JAXAの殺人の密室の謎は面白かったです。絶対に文系の
私じゃ推理出来ないと思うけど^^;あと、『名もなき登場人物たち』のオチも面白かった。そんな偶然
あるかー!とツッコミ入れたくもなりましたけど(笑)。ラスト一篇のリドルストーリーは、いろんな
オチがあって面白かったけど、途中で同じ文章読むのに飽きてしまった^^;
まぁ、とにかく、いろんなミステリーの法則を逆手に取った作品ばかりで、ミステリー好きとしては
楽しく読みました・・・が、ミステリー好きだからこそ、本投げたくなる人もいるかもしれないなぁ^^;
ちなみに、今回もおーべしみ警部は、全く推理せずに寝てばかりでした(笑)。




今回はミステリー三連発でした。秋の夜長はやっぱりミステリーがいいですね!