ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

曽根圭介「TATSUMAKI 特命捜査対策室7係」/貫井徳郎「我が心の底の光」

こんばんは~。今日はほんとに寒い一日でした(><)。
早く春にならないかなぁ。寒いのもうやだー(子供か)。
でも、明日一日出勤したら、ニ連休。一泊二日で群馬の温泉に行って来る予定♪
楽しみだな~むふ。


今回は二冊。

では、一冊づつ感想を。


曽根圭介TATSUMAKI 特命捜査対策室7係」
久しぶりの曽根さん。予約本がちょうど切れていたので、開架で見つけて手にとって
みました。
18年前に殉職した父の遺志を継いで刑事になった鬼切壮一郎。ひょんなことから
手柄を立て、捜査一課に配属になることに。しかし、そこは未解決事件専門に扱う
特命対策室で、美人の女主任辰巳麻紀が取り仕切っていた。
ある日、窃盗の容疑者から5年前に起きた未解決の失踪事件の情報を得たことから、その事件
を辰巳たちのチームで洗い直すことになるのだが――と、いうのが大筋。
テンポ良く読み進められたところは良かったのですが、いかんせん、タイトルにもなって
いるTATSUMAKIこと辰巳麻紀のキャラ造形に致命的なまでに魅力がない。タイトルにする程
活躍する訳でも鋭い推理を開帳する訳でもないし。その傍若無人な言動には、嫌悪感しか
覚えなかったです。特に、主人公の壮一郎に対する非道の数々には、読んでいてムカムカ
しっぱなしでした。S気質のこの手の女上司キャラはいろんな作家が書いていると思うけど、
ここまで好感持てないキャラも珍しいのじゃないかな。同僚からは有能だと言われているけど、
今回の話でそういう部分もほとんど感じられなかったし。まだ、ドS刑事のあの女刑事の
方が可愛げがあったような。
肝心のミステリ部分の方も、なんとなく肩透かし。それなりに事件のからくりは上手く
繋がっているのだけど、最後、もうちょっといろんな部分もフォローが欲しかった。
え、ここで終わり?って感じなので。少なくとも、亮一のラストを受けて、太一(息子)
に対する何がしかのフォローの場面は書くべきだったと思うのですが。
とにかく、もし文庫化されることがあるなら、タイトルと表紙は再考すべきだと思うな。
タイトルや表紙になるほど、辰巳麻紀刑事に存在感がある訳ではないので。彼女のキャラが
もう少し魅力的だったら、もうちょっと評価出来たかもしれないんですけどねぇ。
久々に、黒べるこ作品だったかも・・・。曽根さんは、短編の方がミステリ的なキレが
あるような気がするな。


貫井徳郎「我が心の底の光」
5歳の時に父親が母親を殺し、伯父夫婦に引き取られて育った峰岸晄。伯父の家では
厄介者扱いされ、学校ではいじめられ、晄の人生はずっと孤独な暗闇の中にあった。そんな中、
幼馴染の木下怜菜だけが子供の頃からずっと変わらず晄に声をかけてくれる存在だった。
しかし、そんな怜菜の心配をよそに、晄は人知れず犯罪を重ねて行く。そうした悪事の裏には、
驚愕の動機が隠されていた――。

貫井さんの最新作。帯では『衝撃のラスト』みたいな煽り文句がついているようです。
うーん。確かに、ラストは衝撃的ではあったのですが、それはミステリ的な驚きとは別のもの
でした。
構成としては、晄が14歳から29歳に至るまでに犯した犯罪が、章ごとに時系列を追って
語られて行く形。最初は万引きから始まって、詐欺やらサイバーテロやら、いろんな手口で
他人を陥れて行く。完全に体裁は悪漢小説なんですが、主人公の生い立ちを知って同情出来る
面もあり、さほど嫌悪感を覚えずに読み進めて行けました。こんな育ち方したら、誰だって
性格が歪んで当然だと思うもの。父親は遊び人で妻子を放棄、母親はホストにはまって
4歳の幼児の育児を放棄。育ての伯父夫婦からは虐待こそされないものの、食事も満足に
与えられず、学校が終わったら自営のラーメン店の手伝いを強要(息子にはやらせないのに)。
なんかもう、読めば読む程可哀想な人生で。ネグレクトを受けた幼い子どもに、誰か一人でも愛情を
与えてあげていたら、晄の人生はあんな風にならなかったんじゃないかと思うと、やりきれない。
もしかしたら、伯父夫婦に引き取られないで、児童養護施設にでも行った方がまだ幸せだった
かもしれないな。いや、でも、トラスケの一件があるから、どっちみち同じだったのか。

終盤で、晄の数々の悪事にはきちんと動機があり、ほとんどの犯罪がその動機1つに繋がって
いたと知って驚かされました。それが動機になるほど、晄にとってその存在は大きなものだったの
ですね・・・。4歳の時の記憶なのに。
でも、それよりも驚かされたのは、晄が終盤見せたある人物への非情さ。あそこで、ああいう
決断をするというのが、どうにもこうにも、受け入れられなかったです。最初から、いつでも
切り捨てられる存在だったということなんでしょうか・・・。晄がそんな人間だったと知りたく
なかったです。犯罪を犯していても、どこかで優しい一面がいつも見え隠れしていたから。
ラストは、おそらくそうなるだろうと思っていた、その通りの結末。あまりにも救いがなさすぎて、
読んだ後どんよりしてしまいました。
日野との友情が本物だったなら、晄のその後の人生も変わっていたかもしれないな、と思うと
悲しくなりました。あそこまで犯罪を犯して生きてしまったら、もう普通の人間との普通の友情
なんて到底望めないのはわかっているのだけど。
ひとつ気になったのは、晄の父親のこと。晄が29歳の最終章までのどこかの時点で、刑期を追えて
刑務所から出て来ている筈だと思うのですが、全く触れられていなかったのが不思議でした。
そりゃ、晄と連絡を取ることは出来なかっただろうけど。伯父の方に連絡が行ったら、さすがに
晄にも知らされると思うんですけどねぇ。まぁ、晄にとっても、あんな酷い父親の存在なんて
もうどうでも良かったんでしょうけどね。母親を殺された訳だし。といっても、母親がまた
最低な人物だったんですが。4才児を何日間も放ったらかしてホストに入れあげるとか、ほんと
理解不能です。最後に晄が発見される間際のエピソードが凄まじかったです。トラスケまでを
・・・(絶句)。こんな人間たちが子供を作ったこと自体が、そもそもの間違いだったんでしょうね・・・。
晄の心の底にあった光は、たった4才の時にすべてなくなってしまっていたんですね・・・。
光の意味を大幅に勘違いしていました。多分、ほとんどの人がそうだと思うけれど。そういう意味
では、してやられた感はあったかもしれない。
でも、決して好きな作品ではないです。読み終えて、やるせない気持ちと虚しい気持ちだけが
残りました。
相変わらずリーダビリティは抜群で、一度読み始めたら読む手を止めたくなくて困りました
(もう寝る時間なのに!とかお風呂入る時間なのに!とかね)。
面白かったのは間違いないのですが、読後感は最悪でした。多分好き嫌いが大きく分かれそうな
作品だと思うな。衝撃のラストをどう捉えるかで、評価も分かれるでしょうね(個人的には、
思ったのとは違う部分で衝撃が大きかった^^;)。