ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

湊かなえ「絶唱」/窪美澄「よるのふくらみ」

どうもこんばんはー。今日は2月14日のバレンタインですね。
みなさま、チョコレートはあげましたorもらえましたでしょうか(笑)。
うちは相方が今日夜勤なので特に何もなし(苦笑)。一応事前に簡単ガトーショコラと
テンパリングして型で固めただけのコアラ型のチョコはあげましたが。
甘いものそんなに好きじゃないんで、別にバレンタインなんてなくてもいいじゃんと思うんですが、
なぜか毎年手作りを欲しがる厄介なヒトです(苦笑)。


今回、読了本はまた二冊。
順番に感想をば。


湊かなえ絶唱
南国の島国・トンガ王国を舞台に繰り広げられる、四人の女性たちの喪失と再生の物語。
良かったです。冒頭の『楽園』は以前アンソロジーで既読だったのですが、こんな風に
連作集として繋がる物語になる作品だとは思わなかったです。最後の作品まで読むと、
すべての作品が、ある人物に対する郷愁の物語であることがわかります。各作品では
何気なく登場し、さらりと作品に溶け込んでいる脇役(とはいえ重要な役割を担っている)
なのですけれど。それでも、日本から離れて南の島に渡った女性たちにとって、その
人物がどれだけ心強い存在であるかは、どの作品からも伝わって来ます。
各作品の主人公たちは、みんなそれぞれに心に傷を負い、事情があってトンガにやって来る。
一作目の雪絵は、震災で亡くなった双子の毬絵との決別の為。
二作目の理恵子は、婚約者の宗一に別れを告げ、ある人物との約束を反故にする勇気を得る為。
三話目の杏子は、5歳になる子供の父親から逃げ出し、忘れられない人を捜す為。
四話目の千晴は、震災で失った大切な人との別れを受け入れ、新しい一歩を踏み出す為に。
それぞれの人物の根底にあるものが阪神淡路大震災なだけに、心にずしりと来るものがあります。
震災がすべてを変えてしまったことが、痛いくらいに胸に迫って来るから。月日が経って
復興が進み、街が平常に戻ったとしても、心に抱えた傷が癒えることなど一生ないことが
わかるから。それでも、残された人間は生きて前を向いていかなければならない。彼女たち
それぞれの、その再生を支えたのが、トンガ王国での日々なのです。日常から切り離された
南の楽園。全く違う風土と人々との生活。そして、優しく包み込んでくれる一人のひとの存在。
それだけに、最後の絶唱のラストが悲しかった。ヒロインの千晴によって明かされる
ある事実に打ちのめされました。なぜそうなったのか、詳しい事情が全く描かれないので、
どうして、という、やりきれない思いでいっぱいになりました。たくさんの人がその後も
トンガをひっきりなしに訪れている、という事実だけでも、いかにそのひとがたくさんの
人に愛されて、たくさんの人を救っていたかがわかって、胸が詰まりました。幸せな最後
だったら救われるのだけれど。
最後のヒロイン千晴は、あたかも湊さんの実体験のようにも読めてしまいます。もちろん
フィクションなのでしょうけれど、阪神淡路大震災を経験し、トンガに行ったのは事実
なのだそう。リアルなのも当然なのですね。
それぞれのヒロインに共感出来る部分と出来ない部分はありましたが、物語自体はとても真に迫る
重さと説得力があり、心に響く作品だったことは間違いありません。
トンガの美しい風景を私も見てみたくなりました。トンガは昔読んだマンガの影響で
いつか行ってみたい国のひとつでもあったので。
湊さんらしい黒さはほとんど今回ありません。それでも、湊さんの新たな代表作と
言っても過言ではないのではないかな。湊さんご自身にとっても、震災を取り上げた
ということもあって、とても大事な一作になったのではないでしょうか。


窪美澄「よるのふくらみ」
保育士のみひろと圭佑・裕太兄弟三人による三角関係を軸に繰り広げられる恋愛模様を描いた
連作集。みひろ→裕太→圭佑→みひろ→裕太→圭佑と、各人物の視点が二巡します。
それぞれの内面心理が実にリアルに迫って来ます。それぞれの視点に立つとその人物に
共感出来るのだけど、他の人物から語られると、一転してあまり共感出来なくなってしまったり
するのが不思議でした。内面を知らないとその人の本質はわからないってことなんでしょう。
今回もあからさまな性描写が出て来たりするのですが、なぜかさほどいやらしく感じない
んですよね。人間の営みとして当然の行為だという書き方だからかもしれませんが。女性の
性欲をこうまで真正面から描かれると、同じ女性としてちと恥ずかしくなりますが。
結婚する前だったらみひろの心理はあまり共感出来なかったかもしれませんが、今は結婚
しているので、理解出来る部分も多かったですね。ただ、みひろにしても圭佑・裕太にしても、
彼(女)らの母親に関しては、嫌悪感しか覚えなかったのですが・・・。思春期に母親が
「いんらんおんな」なんて陰口を叩かれているのを知ってしまったら、恥ずかしくて外歩けなく
なるだろうなぁ・・・。みひろの母親の言動にはほとほと呆れました。夫と子供を捨てて男に走って、
ダメになったらあっさり家に帰るって。その神経が信じられないです。でも、それを受け入れて
非難しなかった父親にも問題あると思いました。
結局最終的には収まるところに収まった感じでしたが、そもそもこんなにこじらせたのは、
高校時代にはっきりお互いの気持ちを伝えなかった彼らに原因がある訳で。圭佑だけを
責めることは出来ないだろうなぁ、と思いましたね。何より、彼だけが正直に自分の気持ちを
伝えていたのですから。先を越されたからって引いてしまった裕太も悪いですよねぇ。まぁ、
そうそう上手くいかないのが恋愛というものなのでしょうけれど。でも、これで圭佑が普通に
性生活が出来る身体だったら、みひろとの恋愛も続いていたんですかね。そもそも、付き合って
いる時は普通にできていたのに、なぜ出来なくなってしまったんでしょう。みひろに対してだけ
ダメなのかとおもいきや、体質的なものだったみたいだし。いろんな要因があるのでしょうけども。
最後、圭佑があまりにも可哀想だな、と思っていたのですが、一応どん底だった彼の人生にも
光が指して救われた気になりました。ただ、その相手がねぇ。もうちょっと他にいなかったのか。
まぁ、彼の病気のことを考えると、ああいう人で良かったとも云えるのかもしれませんが・・・。
でも、相手の素性知ったら絶対母親は反対するでしょうね。不思議だったのは、あの母親が
大事な長男を不幸にしたみひろをすんなり受け入れたところ。普通は反対しないかなぁ・・・。
私が親だったら、「ふざけんな!」って放り出すと思うけど。だって、あまりにも調子が
良すぎないか?そんなのどうでもよくなるくらい、どっちの息子でもいいから結婚して欲しかった
ってことなんですかねぇ。まぁ、幼馴染だからってのもあるかもしれないけど。それにしても、ねぇ。

どうしようもない人間の欲望を実にリアルに描いていると思います。窪さんの小説って、ほんと
内面心理が巧みだなーと思いますね。人間の醜かったり恥ずかしかったりする部分を真正面から
赤裸々に描き出しているというか。上手く表現できなくてもどかしいのだけど、こういうのが人間が
描けているっていうことなのかな、と思う。バカで不器用でも、最後には一生懸命生きている
登場人物たちが愛おしく思えてくるんですよね。
結婚してる私にとっても、いろいろ考えさせられるところの多いお話でした。面白かったです。