ミステリ読書録

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森見登美彦/「有頂天家族 二代目の帰朝」/幻冬舎刊

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森見登美彦さんの「有頂天家族 二代目の帰朝」。

狸の名門下鴨家の三男・矢三郎は、親譲りの無鉄砲で子狸の頃から顰蹙ばかり買っている。
「面白きことは良きことなり」という父の教えを胸に、誰もが恐れる天狗や人間にちょっかい
を出しては、愉快に過ごしていた。
そんなある日、老いぼれ天狗・赤玉先生の跡継ぎである“二代目”が英国より帰朝。狸界は
大混迷し、平和な街の気配が一変する。しかも、人間の悪食集団「金曜倶楽部」は、恒例の
狸鍋の具を懲りずに探している…。
阿呆の誇りを賭けて、尊敬すべき師を、愛する者たちを、毛深き命を守れ!待ちに待った
毛玉物語、再び。愛おしさと切なさで落涙必至の感動巨編(あらすじ抜粋)。


待ちに待ったあの毛玉たちが帰って参りました。いやぁ、もう、ほんとに面白かったです。
毛玉たちの愛らしさといったら、前作を凌ぐほどと言っても過言じゃありません。
愛すべき狸四兄弟は相変わらずで、今回もそれぞれに活躍の場が容易されております。
今回、赤玉先生の跡継ぎで英国に行っていた二代目が突如帰朝したことから、狸と天狗と
人間を巻き込んだ様々な騒動が巻き起こることに。終盤はこれぞモリミーの世界!とでも
言わんばかりの一大エンターテイメント作品となっております。前作で下鴨四兄弟の虜に
なった読者であれば、間違いなく本作も多いに楽しめる筈です。

英国から帰朝した二代目のキャラがなかなか立っていてよかったですね。英国帰りを
鼻にかけた嫌な奴かと思ったのですが、意外といい奴だなーというのが私の感想。
帰朝の際にあちこちに散らばってしまった二代目の家具を集めてくれた矢三郎に
律儀に借りを返そうとする辺り、結構義理堅い性格だなーと思いました(矢三郎は
頑なに拒否したけれど)。
その割に、弁天に対する憎悪は完全に言いがかりのような感じでしたが^^;
弁天と二代目の争いは、どうも憎悪よりも愛情を感じる気がするんですけどねぇ。
二人とも、意地はってるだけっていうか。気のせいかなぁ。本当は二人とも、相手の
ことが気になって仕方ないんじゃないのかなぁ。穿ち過ぎかしら?

今回は、恋のさやあて話もちらほらと。矢一郎と玉瀾にはじれったい思いをしたなぁ。
矢三郎と海星の方も。まさか、海星が矢三郎に姿を見せなかったのがあんな理由だった
とは・・・!か、カワユすぎる・・・!!(笑)海星を見た途端にああなっちゃうなんて(笑)。
それを受けて、海星も矢三郎の為に姿を見せなかったなんて、なんて健気な毛玉ちゃんなの!!
今回は完全に海星の萌え~って感じだったなー(笑)。
実は、矢三郎と海星は、最初から赤い毛で結ばれた存在だったのでしょうか。
でもでも、そうなると、気になるのは、矢三郎の弁天への想いですが。そっちは
憧れなのか、それともそっちの方が本当の恋なのか。ラストを読むと、まだまだ
弁天に対しても少なからぬ想いを抱えているようだし。次作では、もっと絡まった
恋模様になったりするのかな。

電気ブラン工場の阿呆兄弟金閣銀閣も元気で良かったです。夷川早雲の悪役っぷりも
一段と板についてましたね。次から次へと、よくもまぁ下鴨一族を陥れる企みを思いつく
ものです。そのつけが回って哀れついに・・・と思いましたが、最後までやっぱり早雲は早雲
でしたね。まぁ、復活してほっとしたのも事実ですけどね。別に好きじゃないけど、
やっぱりいなくなっちゃうのは物語的に寂しいですしね。
夷川家の長男・呉一郎に関しては、なーんかいいやつ過ぎて怪しい気がするなぁ、と
思っていたんですよね。何か企んでそうっていうか。案の定な展開だったな^^;

まぁ、とにかく、今回も毛玉たちの阿呆っぷりに大いに笑わせてもらって、その
愛らしさに身悶えさせられました。
今回も下鴨母のキャラが愛らしかったなぁ。次男の旅立ちには驚いたけれども、
長男は愛らしい毛玉と契りを交わしたし、四男は意外な能力を開花させたし、
三男は・・・相変わらず阿呆の血のしからしむるままに阿呆なことばかりやって
いたけれど、最後は大活躍だったし、下鴨一家の毛玉たちは、今回もとっても
素敵だったのでした。
奇想天外、奇天烈でハチャメチャだけど、とびっきりオモチロい毛玉たちの物語。
ああ、なんて阿呆で、なんて素敵なの。

『面白きことは良きことなり!』

その言葉そのまんまのお話でございました。
巻末には第三巻の予告があります。この毛玉物語はどうやら三部作で完結のようです。
前作から7年待たされたから、また7年後ってことは・・・ない、と信じたい^^;
まだまだ伏線だけで解決してない問題も多いし、早めに三巻をお願いしたいですね。