ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どもども。梅雨らしいすっきりしない天気が続いていますね。
休みが雨だとやっぱり憂鬱になりますねぇ。早く梅雨が明けて欲しいけど、
明けたら明けたで夏の暑さがやって来て、また憂鬱になるのでしょうけれど^^;

そういえば、芥川賞直木賞候補が発表されましたね。案の定、芥川賞
『火花』がノミネート。個人的には、受賞して欲しい気持ちはあるけれど、
現実的にはノミネート1回目での受賞はちと厳しいかなーとも思ったり。
ただ、話題性重視の傾向が大きい賞だから、いろんな思惑が絡んでの受賞
もあり得そうではありますが。
直木賞の方は柚木さんの一作のみ既読。馳星周さんが今回六度目のノミネート
らしいので、受賞させる可能性はありそう。他の作品読んでないから何とも
言えないですけど^^;若冲のやつは書店で見かけた時に絶対読みたい!と
思っていたのだけど、気がついた時には予約数がすごいことになってて、
断念しちゃいました。受賞したら更に読めるのは先になりそうだ^^;
さてさて、どうなるでしょうかね。発表は来月の16日だそうです。


読了本は今回三冊。一冊づつ感想を。


市井豊「人魚と金魚鉢」(東京創元社
聴き屋シリーズ第二弾。前作が結構気に入った作品だったので、続きも
読んでみました。すっかり前作の設定忘れちゃってたんだけど(^^;)、
軽めのミステリということで、さらっと楽しめました。
まぁ、ミステリとしては何ということはないのだけども。主人公で聴き屋の
柏木が所属している大学のサークル『フール』のメンバーたちが、今回も
個性的で面白かったです。特に、名前が出てこないのに強烈な個性を放つ
『先輩』のキャラが良かったです。大人気マンガ君に届けの爽子(貞子)
みたいだなーと思いました。ただ、爽子はその陰気なキャラクターで
やたらに存在感があるのに対して、先輩は陰気で幽霊みたいなのに(だから?)、
誰からも存在を認められない程存在感の薄いキャラという違いはありますが・・・。
でも、なんだか妙に可愛らしいと感じたのは私だけでしょうか。っていうか、
柏木だって絶対気に入っているのじゃないかしら。なんか、やたらと彼女のことを
いじってるし(笑)。第四話で川瀬に陥れられて、二人が手錠で繋がれてしまい、
ずっと手を繋いで行動を共にするくだりでは、二人の距離がなんとなく縮まった感じが
して、ちょっとニマニマしちゃいました(笑)。以外といいカップルになりそうな
予感が・・・気のせいかしらん。
第二話『恋の仮病』のオチは、個人的には非情にツボでした。始まりは嘘でも、
それが本当になる時だってあるのよね。
第三話『世迷い子』で、小学生タレントの良介くんが収録中に奇妙な行動に走った
理由は、ちょっとこじつけっぽいなーと思いました。美しい虹を見て、ああいう
想像をするって、ちょっと無理があるような・・・。
第五話の表題作は、師が弟子を思う気持ちにじーんとしちゃいました。そこまで
しなくても、もっとほかにやり方がありそうには思いましたが・・・^^;
イタリアで、金魚を丸い金魚鉢で飼うことが禁止されている、というのは
初めて知りました。丸い金魚鉢の中からだと、外の景色が歪んで見えて、金魚が
可哀想だからだそう(ホントかな?)。金魚にやさしい国なのね(笑)。

聴き屋の柏木のキャラも相変わらず飄々とした感じでいいですね。基本はいい人
なんだけど、嘘がつけないせいか、相談者に結構毒舌吐いちゃうところも割と好き。
ただ話を聴いてもらうだけなのに、なぜか柏木に話すとすっきりしちゃうというのも、
彼のキャラならうなずけるものがありますね。
第三弾も楽しみです。


森晶麿「四季彩のサロメまたは背徳の省察」(早川書房
森さん最新作。
えーと、あのー。これは、ダメ、でした・・・。
主人公の忍の曾祖父は、彼が通う扇央高校の創始者。つまり彼はこの高校の
後継者。高校を卒業したら進学せずに家業を継ぐ予定になっています。
忍は権力者の息子ということで、校内ではやりたい放題。校内にいる女生徒の
顔はすべて網羅しているという女たらしでもあり、とっかえひっかえ女と
寝ている。そんな彼が所属しているのが、朗読部。部員数四名の少数精鋭部。
そのうちの一人が、カラスと呼ばれる美少年の後輩。この春入学してきたこの
後輩から、忍はこの高校にいる筈のある女生徒を探していると相談されます。
忍は頭の中のデータから特定の人物を思い浮かべますが、それは存在し得ない
女性でした。カラスが出会ったのは一体誰だったのか?
とまぁ、こんな感じ。オスカー・ワイルドサロメが題材に使われている
だけあって、全体的にタイトル通りの背徳的で耽美な作風。普段の私なら
こういう世界観はキライではない(いやむしろツボな・・・)筈なのですが。
しかし、これはダメだった。そもそも、全体的に挿入されているエ○描写が
くどい。いちいち、そういう行為に至らないといけないわけ?あんた高校生だろ!
と言いたくなりました。多少入っているならいいんですよ。でも、全面的は
やりすぎです。いらないです、こんなに。官能小説書きたいんだったら、他で
やってください。忍とカラスの関係は、いかにもBL狙ってる風だし。そういう
描写こそ出て来ませんけども。
でも、何より嫌だったのは、主人公忍の人物像。なんで女生徒たちが、
この男をここまでちやほやするのか、全くもって理解出来ませんでしたね。
顔が良かったら他はどうでもいいのか!みたいな。
自分に都合の悪いことは、すべて嘘をついて他人になすりつけるし。自分
だけは傷つかない場所に避難しようとする、その浅ましさに吐き気がしました。
婚約者がいるのに、他の女と平気で寝る神経にもぞっとしますし。これが
高校生だっていうのだから、呆れ果てます・・・。
何かいろいろ、あり得ない設定の連続で、読んでいてイライラしまくりでした。
唯一カラスのキャラだけが良かったのですが・・・ラストで、まさかの事実が。
っていうか、個人的にはこの事実を受け入れていない自分がいるのですが。
嘘でしょ、誰か嘘と言って!!と思いました・・・。なんか、ビジュアル的に
重なるものがあるなぁ、とは思っていたのですけどね・・・。いやでも、直接
そうだと書かれている訳じゃあないので、まだそうと決まった訳では・・・!
とか往生際の悪いことを言いたくなるのだけれど、作者がご自身のブログでほぼ
公言されてる事実らしく・・・むぅぅ。
美学の本とか、読まないでよー(涙)。もしそうだとしたら、なんかちょっと、
(というか、かなり)幻滅です・・・。
ミステリとしても、ツッコミ所しかありません。そもそも、姉と妹でいくら
メイクを工夫しても、あんな○○○○は無理じゃないでしょうか。

なんかとにかく、読んでて不快なお話でした。合わなかったです。by黒べるこ・・・。
オスカー・ワイルドの『サロメ』も、ギュスターヴ・モローの『サロメ』の絵も、
大好きなのに(涙)。
これから、黒猫シリーズ読むのにもちょっと偏見を持ってしまいそうだわ。あーあ。


乙一/ 原作:岩井俊二花とアリス殺人事件」(小学館
アニメも映画も全く観たことがなかったのですが、ノベライズを書いているのが
乙一さんだと知り、予約してみました。
確か、映画は蒼井優さんと鈴木杏ちゃんが主演ですよね。アリスを蒼井さん、花を
杏ちゃんが演じられたようですね(本書のアニメ映画でも声優を担当した模様)。
同タイトルのアニメ映画とは少し設定が変わっているそうです。実写映画の方は、
この作品の後日譚になるようです。これは、アリスと花が出会う前日譚。
ということで、俄然映画の方も気になる訳なのですが。今度レンタルで借りて
みようかな。花とアリスがこの後どんな関係になっているのか気になります。

転校生の有栖川徹子(アリス)は、転校早々クラスメートから嫌がらせを受ける
ようになります。彼女の机の下の床に、奇妙な六芒星が描かれているのにも
気付き、気味悪く感じます。どうやら、彼女の席は呪われていて、敬遠されている
ようなのです。原因は、前年のクラスの生徒の死にあるらしい。その生徒は、
四人のユダに殺されたという。その不可解な謎を解く為、アリスは事情を知って
いそうな、自分の家の隣に住んでいる不登校児の荒井花を訪れます。花は、アリス
の後ろの席の生徒らしいけれど、4月から一度も登校していないどころか、昨年の
5月下旬から突然不登校になったというのです。昨年の5月というのは、アリスの席
の生徒が死んだとされる出来事が起きた月でした。花に話を聞くと、昨年死んだ
生徒を死に追いやったのは自分だと言い張って来て――と、こんなあらすじ。

さくさく読めて、なかなか面白かったです。ただ、ツッコミたくなる部分も
多々ありましたけれど^^;
光太郎が花以外の女生徒に婚姻届を渡した理由って、一体何だったんでしょうか。
花に対する何らかのメッセージだったのかな、とも思うけれど、意味がよく
わからなかったです。好きでもない生徒に何がしたかったのかな。あと、光太郎は
花のことを結局のところはどう思っていたんでしょうか。花と再会した光太郎が
告げた言葉は、私にはどう考えても愛の告白には思えなかったんですが・・・。
花って、名前の通りお花畑な性格なんだなーと思いました^^;
花とアリスが終盤、車の下で暖を取るシーン、読んでるだけで冷や汗が出ました。
特に、トラックの下で寝ちゃった時は、突然走りだしたらどうするんだ!と
叫びたくなりました。そして案の定・・・。あわや、の結末に、呆れ果てました。
今回は最悪の事態にはならなかったから良かったものの。街なかの人々に理由も
わからず追いかけられるトラックの運転手さんに同情の念を禁じ得なかったです・・・。

所々、文章では乙一さんらしさが伺えましたが、やっぱり原作があるものなので、
乙一さんらしい突き抜けた感じの設定がないのがちょっと残念ではありました。
機会があったら、アニメの方も観てみたいです。