ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

貫井徳郎「女が死んでいる」/夏川草介「神様のカルテ0」

どうもこんばんは。
じめじめした天気が続きますねー。早く梅雨明けないかなぁ。
朝から雨だと仕事に行くのがほんとに憂鬱なんですもの。
夜に降る雨は好きだけど、日中は勘弁して欲しいというのが正直なところ・・・。
まぁ、作物にとっては雨が降らないと困っちゃうんですけどね^^;


読了本は今回も二冊です。

一冊づつ感想を。


貫井徳郎作 藤原一裕モデル「女が死んでいる」(KADOKAWA/メディアファクトリー
・・・率直な感想は『なんじゃ、こりゃ』です。
ダ・ヴィンチ ビジュアルブックシリーズと銘打っておりまして、
中編小説+写真集の体裁なんですが・・・内容がないにも程がある^^;;
貫井さんだから手に取ったけれど、他の作家だったら絶対読みきれなかったと
思います。
なんせ、写真集の方のモデルが、お笑い芸人ライセンスの藤原。なんで、
この人選なのか、理解に苦しみます・・・。せめて、本当のモデルさんか、
百歩譲ってもうちょっと顔の良い素人さんとか、なんとか出来なかったの
だろうか。だって、主人公の設定が一応『顔は整っている』って設定なんだもの。
性格やら素行は褒められたものじゃないにしてもね。もうちょっと、ビジュアル的に
見目の良い人物だったら、もうちょっと印象変わっていたかもしれないのに。
藤原さんが好きとか嫌いとか、そういう話じゃなくて、お笑い芸人が真面目な顔
して写真に収まっていても、全然絵にならないんですよ。なんか、滑稽に感じて
しまう。まぁ、お笑いの人だって顔がいい人はいるだろうけれど・・・。
写真の撮り方にも問題があるのかもしれませんが。ストーリーと写真が全く
シンクロしてなくて、ちぐはぐな印象しかなかったです。
企画した人は一体何考えてたんだろうなぁ。これがウケると思ったんだろうか。
こんなの、喜ぶのは藤原さんのファンだけじゃないかしら。貫井ファンは多分、
怒ると思います・・・(私だけじゃなくて!)。
肝心の貫井さんの小説の方も、ちょっとイマイチだったしなぁ。ホストの男が、
ある朝自分のベッドで目覚めたら、同じ部屋の中で見知らぬ女が死んでいるのを
発見、全く身に覚えのない男はパニックに陥る。このままでは自分が殺人犯に
なってしまうと恐れた主人公は、昨夜の記憶を辿りながら女の死の真相を
探って行く、という話なのだけど。女の死の真相、やっぱり、って感じでした。
現場の状況を考えれば、その真相が一番あり得そうなのに、主人公がそこに
考えが至らないのが不思議でした。まぁ、パニックになっていたから仕方が
ないのかもしれないですけど。主人公の男の屑っぷりにムカムカしました。
あんな、最後だけ殊勝になったところで、本質は変わらないと思うけどなぁ。
あんなその場限りの○○の言葉を真に受けて、智花があっさり主人公のことを
信じるところが理解出来ませんでした。
うーん、一番理解出来ないのは、貫井さんがなぜこの仕事を受けたのかって
ところかもしれません・・・。
とにかく、がっかりな作品でした。写真がとにかく邪魔だった。
ビジュアルブックって・・・一体何がしたかったんだろ(呆)。
最近黒べる登場率が上がっているような・・・むぅぅ。


夏川草介神様のカルテ0(ゼロ)」(小学館
ようやく回って来ました。シリーズ最新作・・・ってもう出たの相当前だけど^^;;
タイトルの『0(ゼロ)』が指し示すように、本編よりも前の出来事を綴った
作品集。4つのお話が収録されてまして、それぞれ主人公も違います。
一話目は、一止の医学部時代からの友人・進藤辰也の学生時代の話。
二話目は、一止が来る前の本庄病院に勤める古狸先生こと板垣医師の話。
三話目は、一止が本庄病院で勤め始めたばかりの研修医だった頃の話。
四話目は、ハル(榛名)が一止と結婚する前、写真の仕事で雪山に登った時の話。

どれも良かったです。出て来るキャラクターたちがほんとにみんな魅力的ですね。
シリーズキャラクターたちの若かりし頃が知れて、嬉しかったです。
好きなお話はやっぱり三話目と四話目かなぁ。一止が、研修医の頃から医療に対する
真摯な思いを持っていたことがよくわかりました。勤め始めて間もない頃に、
國枝さんのような大変な患者さんを任されるのは、とても荷が重かったことだろうと
思います。でも、國枝さんは、一止のような医者と出会えてきっと幸せだったで
しょうね。一止にとっても、いまだに忘れられない患者さんになっているのじゃないかな。
國枝さんがせめて、娘さんの結婚式に出席出来て良かった、と思いました。
御嶽荘の住民たちが、國枝さんの為に祈ってくれるシーンが好きでした。みんな
ほんとにいい人たちばっかりだなぁ。一止は出会う人に恵まれていますよね。
もちろん、本人自身がいい人だからなのでしょうけれど。
最後のハルのお話は、彼女が思った以上に重いものを背負って生きてきたことが
わかる作品でした。一止といる時の彼女は、のほほんとした、のんびりした
空気をまとっているから、雪山での厳しい一面には驚かされました。写真家として、
そこまで有名な人だというのも意外でした。過去にぐれたことがあるってところも
びっくりしました。ぐれたって一体どんな・・・^^;いろんな意味で、凄い人だ、と
思わされました。でも、そんな彼女が、一止のことを聞かれた時に、顔を赤くして
照れているところがとても可愛らしくて、微笑ましかったです。
でも、せっかく前日譚ならば、ハルと一止の出会いが一番読んでみたかったなぁ。
二人がどんな風に出会って、どんな風に惹かれ合ったのか、気になります。
いつか書いて欲しいですね。

貫井さんの作品でがっかりしていたところだったので、口直しには最適でしたね。
医療の厳しい現実と、それに負けない医者たちの真摯な思いがしっかり誠実に
描かれているところがいいですね。
どのお話も心に温かく沁みました。読後感も爽やかで良かったです。
続きも楽しみにしていたいです。