ミステリ読書録

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似鳥鶏「青藍病治療マニュアル」/大倉崇裕「福家警部補の追求」

どうもこんばんは。
毎日じめじめ嫌になっちゃいますねぇ。
今日は朝からなでしこの試合にショックを受け、余計に一日ブルーな気持ちで
過ごしてました。といっても、試合は仕事でほとんど観戦出来なかったのですが。
まぁ、準優勝でも十分立派だと思いますけどね。負け方がちょっと、ね。
冒頭の4失点がね~。はぁ(がっくり)。


読了本は二冊です。

では、感想を。


似鳥鶏「青藍病治療マニュアル」(角川書店
タイトルから全くどんな話か予想出来なかったのですが、予想外の内容
でしたねー。
青藍病という珍しい病気(症状?超能力?)にかかった人々のお話です。
かかる人によって症状は様々なのですが、共通して、症状が出る際に
罹患者が青藍色の光を自覚することから、青藍病と呼ばれています。
説明が非情に難しいんですが^^;病気というよりは、変わった超能力
みたいな感じなんですよね。ある種の強迫観念が産んだ特殊能力というか。
極度の不安から生まれる心の病とも言われ、異能症とも呼ばれています。
例えば、犬が嫌いなあまり、犬を始めとする動物全般から威嚇される能力
を身につけたり(全く身につけたくない能力ですが・・・^^;)、
知らぬ間に虫を潰した時の感触や体液が付着した時の不快感が嫌なあまりに、
念じただけで対象物を殺すことが出来るようになったり、父親の、金にだらしない
面が嫌いなあまりに、他人の年収が読み取れるようになったり。ラスト一篇は
他人の胸に青い蛍のような光を見ると、その人の死期が近いことがわかって
しまう能力を持った男子高校生の話で、この力も、ある出来事が原因で
症状が出るようになるのですが、そこはネタバレになるので明かさずに
おきますね。
そうした青藍病を発症した患者たちが一話ごとに登場しますが、共通で
出て来るのが、青藍病を専門に研究している靜医師。男か女かわからない
けれど美しい容姿を持っており、それぞれのケースごとに治療法を模索します。
結局治療法は確立されていないので、患者本人がその能力をコントロール
して折り合いをつけていくしかないのですけどね。

不安に思うあまりに思いがけない能力が身についてしまう、というのは
なかなか面白い設定だなぁと思いました。似鳥さんらしい奇抜なアイデア
というか。
一話目の、動物全般から威嚇される能力なんて、ほんとあったら迷惑な
だけの能力ですよね^^;動物園なんて絶対行けないという・・・。
でも、主人公が好きな女の子の為に、彼女の犬を必死で助けるシーンには
胸を打たれたなぁ。
個人的には三話目の年収が見えちゃう女の子のお話が面白かった。雰囲気も
このお話だけやたらにコミカル。主人公と靜先生との関係も良かったし。
他人の年収がわかるって、便利なのかそうでもないのかよくわからない
ですね(苦笑)。確かに気になることではあるけど、変にわかっちゃうと
余計な感情とか生まれそうだ。同じ職場で同じ仕事してて自分より
年収が多かったら、やっぱり不公平に感じて嫉妬心とか芽生えるだろうしね。
二話目の、念じただけで人を殺せる能力のお話は、一番読んでて怖かった
です。『どうして人を殺してはいけないの?』という少女の問いかけにドキリ
としました。絶対にダメだとわかるけど、相手を明確に納得させる答えって
すごく難しい気がするもの。主人公の少年が、彼女に同調しなかったことに
ほっとしました。
四話目は、人の死期がわかる能力があることによって、救える命があるのでは
ないかと思い悩む少年の話。病弱な幼馴染との恋愛模様にドキドキしました。
終盤ハラハラしましたが、読後は爽やかでした。

なんとも不可思議な設定で、引きこまれましたね。男か女かわからない
靜先生のキャラも良かったです。優秀そうなのに、異様に犬が好きって
設定も可愛らしい。で、結局男なの?女なの?^^;

しかし、ひとつ残念なことは、あとがきがないことです。似鳥さんといえば、
あとがき。あの面白いあとがきがないと、なんかこう、寂しいというか。
読後感は悪くなかったのだけど、なんかちょっぴり物足りなさを感じた
のでした。



大倉崇裕「福家警部補の追求」(東京創元社
シリーズ第四弾。今回も倒叙形式の中編が二作入っています。今回も、冷静に
犯人を追い詰めて行く福家警部補の手腕はさすがでした。小さな違和感も
見逃さないその慧眼には、ただただ頭が下がるばかりですね。
どちらのお話も面白かったです。どちらのお話も大倉さんらしい題材を
取り扱っています。一話目は山だし、二話目は動物だし。だから、短篇集
ではなく中編集になったのだろうなぁ。どちらもお得意の主題だからね。
一話目の『未完の頂上(ピーク)』は、登山家の狩が、自分の夢を引き継いで
登山家になった息子の、未踏峰のチャムガランガ登頂への挑戦を成功させる為、
殺人を犯す話。
狩の犯行を暴く為に、キツイ山登りまでさらっとこなしてしまう福家警部補に脱帽。
プロでも難しい最高難度のクライミングコースを苦もなくクリアしちゃうし。
どんだけ超人なんだ!と唖然。相変わらず全然寝てないし^^;身体は大丈夫なの
だろうか・・・といつも心配してしまいます。まだ多分30代だと思うんだけど・・・
こんなにハードな仕事して、よく倒れないよなー。私生活とか、ほんとに謎です。
最後の、犯人陥落のシーンはちょっとあっけなかったかな。この犯人の性格
だったら、もうちょっとうだうだ粘るかと思ったけど。それだけ、福家さんの
手腕が見事だったってことなんでしょうけどね。
二話目の『幸福の代償』は、ペットショップの経営者が、悪徳ブリーダーの
弟を殺す話。動物が関わるお話なので、総務部総務課の須藤警部補が出て
来ます。パートナーの薄木ちゃんは、残念ながら研修中で出て来ませんでしたが。
姉に殺された悪徳ブリーダーの弟は、殺されても仕方ない人物だなぁと
思いましたね。
弟が管理していた犬達の惨状は、想像しただけでほんとに怒りがこみ上げて来ました。
お金儲けだけを考えて、動物がどうなろうとどうでもいい、というそのやり方には、
吐き気がするほど嫌悪を覚えました。弟に関しては完全に自業自得だと思います。
ただ、弟の彼女まで手にかけたのは、どう考えてもやり過ぎだし、その上罪を
着せようとしたのだから、なんとも身勝手な犯行だな、と思いました。
憎らしいほど冷静沈着な犯人を、それ以上の冷静さで追い詰めて行く福家
警部補がカッコ良かったですね。
ただ、今回はそんな超人福家さんにも、弱点があることが判明。なんと、
○が苦手。意外なような、納得出来るような(笑)。そういえば、似鳥さんの
話にもコレが苦手な人物が出て来たなぁ。なんと奇偶な(笑)。
あと、相変わらず福家さんにこき使われて家に帰れない二岡君がちょっと可哀想
でした(笑)。

福家警部補と話をした関係者たちは、大抵が彼女が去った後で、彼女の言葉を
反芻して、ほんの少し前向きな気持ちになれるんですよね。完全犯罪を目論む犯人に
とっては疫病神のような彼女ですが、それ以外の善良な人物にとっては、
福の神か座敷童子のような存在になるところが面白いと思います。
クールで非情に切れる頭を持ちながら、すぐに警察バッヂを失くしたりする
そそっかしい面を垣間見せたりもする。彼女のたまに見せる人間味のある
部分がとても好きです。
今回も、とてもおもしろく読みました。やっぱりこのシリーズは面白いなぁ。