ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

伊坂幸太郎「ジャイロスコープ」/畠中恵「なりたい」

どうもこんばんはです。
先日のPC不調騒動ですが・・・結局、新しいPCの方に乗り換えました^^;
インターネットのブラウザを違うものに変えたら、一応TBも出来るように
なったっぽいので・・・。
前のPCには写真のデータなんかもたくさん入っていたので、完全にぶっ壊れる
前になんとかそっちも新しい方に移しておかなければ・・・^^;
というわけで、今回の記事からまたニューパソコンからの投稿です。


読了本は今回は二冊。
ここのところ、パソコンは不調ですが、読書の方はまずまず快調。予約本も
続々回って来そうな気配なので、ここで頑張らないと。

では、1冊づつ感想を。


伊坂幸太郎ジャイロスコープ」(新潮文庫
伊坂さん初の文庫オリジナル短篇集(だそうです)。既読も二作ほどありました。
ピンと来ない作品もあったのですが、概ね楽しめたかな。

軽く一作づつ感想を。

『浜田青年ホントスカ』
これは東京創元社から出たアンソロジー『蝦蟇倉市事件』で既読でした。
細かい内容は忘れていたのですが、「ほんとすか」が口癖の青年のことは
覚えていました。「ほんとすか」の、もうひとつの意味の方はすっかり忘れていたけど^^;
浜田青年の正体は意外でしたね~。既読の筈なのに、また驚いてしまった(苦笑)。
とはいえ、伊坂さんらしい正体でもあったのですけどね。
ラスト一編を読む限り、浜田青年は最悪の選択はしなかったということだと
思うのだけど・・・(そうであってほしい)。

『ギア』
これはちょっと、よくわからなかったなぁ。謎の生物セミンゴは、なんとなく
ナウシカに出て来たオームを思い出したんだけど(多分ビジュアルは全然違うの
だろうけど^^;)。ラストで大量のセミンゴに追いかけられるシーンなんか
特に・・・。想像したら鳥肌たちました。怖っ。

『二月下旬から三月上旬』
これもちょっと謎だったんですよね。結局、坂本ジョンって一体何者だったのか・・・。
途中主人公の妄想の人物なのかな、と思ったりもしたんだけど・・・。SF苦手なんで。
どなたか解説してほしいです^^;;

『if』
最初、もしあの時Aの選択ではなくBの選択をしていたら、こうなっていた、という
話なのだろうと思っていたのですが・・・ラスト読んで、こういうことだったのかー!
って感じでした。二十年経ってバスの乗客がアレっていうのは、正直都合良すぎかなーと
思いましたけども。まぁ、地方ならそういうこともあり得るのかなぁ。

『一人では無理がある』
これはなかなか良く出来た作品ですね。最初、元夫に襲われた娘から母親が電話を
受けるシーンで始まるのですが、その後いきなり全く違う、サンタクロース業(?)を
請け負う会社(正確に言うと会社ではなく非営利団体みたいなものらしいですが)の
社員たちの物語が始まるのだから、目が点になりました。この2つの話がいったい
どうやって繋がるのだろうと思っていたのですが・・・こういうことでしたか。
松田さんのうっかりミス、グッジョブ!鉄板やドライバーをクリスマスにもらって
嬉しい子どもはいないでしょうけどね(苦笑)。

『彗星さんたち』
これは働く女性を主人公にしたアンソロジーで既読。新幹線の清掃人さんたちのことは
何度もテレビの特集で観ていて、いつもすごいなー、日本の誇りだなーと思っていました。
これに出てくるコメットさんたち、みんな仲が良くて、気持よく仕事をしていて
素敵だなーと思いました。たかが清掃、されど清掃。彼らの仕事っぷりは本当に
清々しい。私たちが気持ちよく新幹線に乗れるのも、みんな彼らのおかげなんですよね
(まぁ、そうそう新幹線に乗る機会はないけれど・・・)。頭が下がります。
主任の鶴田さんが愛読しているパウエル国務長官の名言集に出て来る言葉が度々作中に
引用されているのですが、なかなか胸に響くいい言葉が多かったです。

『後ろの声がうるさい』
これだけ書きおろし。バラバラだった他の短編が、ひとつに繋がる、伊坂さんらしい
作品。なくても別に成立するとは思うけれど、あった方がまとまりのある短篇集って
印象にはなるでしょう。蛇足に感じる人もいそうですけど。
新幹線で後ろに座った男二人の会話に耳を傾ける男の話。他人の話し声ってうるさいと思いつつ、
ついつい話してる内容を聞いてしまったりしますよね。二人の男は、たまたま隣り合った
かのように思えたけれど、最後には意外な事実が判明し、思わぬ感動が。お互いにお互いが
わかった上で、そのまま何も告げずに別れてしまった二人が切なかった。手紙読んで
欲しかったなぁ。いつか、そういう日が訪れるといいけれど。



畠中恵「なりたい」(新潮社)
しゃばけシリーズ第十四弾。若旦那の病が早く良くなるよう、神様を呼んでお願いする
ことにした長崎屋一行。祝宴を開き、おもてなししたところ、神様たちから一太郎
来世で何になりたいか聞かれる。答えが神様たちの気に入るものであれば、一太郎
望む来世を引き寄せてあげるというのだ。悩む一太郎が出した答えとは――。

一話目は、妖になりたい養蜂家の甚兵衛さんのお話。
二話目は、人になりたい妖(道祖神)の勇蔵さんのお話。
三話目は、猫になりたい紅松屋さんのお話。
四話目は、親になりたい長崎屋の女中・おようさんのお話。
五話目は、りっぱになりたい茶問屋古川屋の万之助さんのお話。

それぞれ、いろんな人のいろんなものになりたいお話を通して、一太郎も自分自身の
なりたいものを探して行きます。
最終的に、一太郎は何になりたいかを神様に告げることになるのですが・・・
それが、文庫で出た外伝の『えどさがし』に繋がって行くことになる訳だったのですね。
こっちを先に読んでいたら、あの時の妖たちの苦労の理由がわかっただろうけど。
そういうことだったのかーと思いました。
今回、栄吉の出番が全然なかったのが残念でしたね。やっぱり、前作で結婚しちゃった
からなぁ。栄吉の奉公先は出てきますけどね。栄吉と一太郎の友情関係が好きなんですよね。
相変わらず一太郎は病弱だけど、みんなの役に立ちたい、妖たちを幸せにしてあげたい
という気持ちは人一倍強くなっているように感じます。本当に、みんなのことが大好き
なんでしょうね。その健気な気持ちに胸を打たれます。
一太郎は、神様たちに、「健康になりたい」って言えばよかったのになーとちょっと
思ったりしたんだけどね(苦笑)。でも、きっとその答えだと神様は気に入ってくれなかった
でしょうね。