ミステリ読書録

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加藤実秋/「ロケットスカイ インディゴの夜」/集英社文庫刊

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加藤実秋さんの「ロケットスカイ インディゴの夜」。

ある午後、「club indigo」に凶器を持った男たちが押しかけてきた。2部ホストの酒井くんに
恨みがあるらしいのだが、出勤してきたばかりのジョン太たちを人質に、店内に立てこもってしまう。
主力メンバーが動けない中、仲間のミスを挽回すべく2部の若手ホスト達が事態の収拾に当たるが…。
など、全4話を収録。そして今回、あの人気ホストに大きな決断のときが訪れー。波瀾万丈の第6巻!
コミカライズ同時発売記念、スペシャルコラボマンガ&イラスト収録!(紹介文抜粋)


インディゴシリーズ第六弾。新刊が出る度に出版形態が変わっているこのシリーズでしたが、
どうやらこの集英社文庫で落ち着きそうですね。
今回は、オーナーの晶さんにとっても、インディゴのオリジナルメンバーにとっても、
変化がある巻となりました。ラストでは、1巻から活躍していた、あるホストがインディゴ
を去ることに。これはびっくりしたなぁ。まさか彼が・・・。まぁ、その前のお話から
ちょっと言動にその片鱗が見えてはいたのですが・・・。インディゴにとっても、とても
重要なホストの一人だったので、彼の選択はちょっと寂しかったですね。でも、確かに
ずっとホストなんてやれないものねぇ。その証拠に、今回は若い二部ホストの活躍が目立って、
正規メンバーはちょっと押され気味でしたし。世代交代の時期なのかなぁ、と思ったりして。
晶さんの方は、フリーライターの仕事の方で、長年付き合って来た健康実用書の出版社の浅海
から正社員で働かないかと打診されます。しかも、ゆくゆくは編集長のポストも用意すると。
浅海からの再三の熱心な誘いに揺れる晶さんでしたが、そうした気持ちの揺れがホストたち
にも伝わってしまい、軋轢を生む原因に。いつになく険悪ムードになってしまった晶さんと
インディゴメンバーたちの間の冷ややかな空気が悲しかったです。
いつも晶さんとインディゴのホストたちがわいわいがやがや楽しそうに事件を解決する所が
このシリーズの良い所だったのですが・・・。でも、これもシリーズにとっての通過儀礼
みたいなものだったのかも。晶さんが、昼の仕事と夜の仕事どちらを取るか、どっちつかず
の今までは、多分どこかに迷いみたいなものがあったのだろうから。今回のいくつかの騒動の末、
晶さんはそれに関して、自分なりの答えを見つけます。一人のホストとの別れはあったけれど、
オーナーとして、また新たな決意が芽生えたようなので、まだまだシリーズは続きそう。
去って行くホストも、インディゴでは会えなくなるだろうけど、何か事件が起きたら
いつでも駆けつけてくれるだろうしね。

相変わらず謎が多い憂夜さんですが、今回は晶さんに出すコーヒー(&お茶)がいちいち『糞』に
拘ったものばかりで、ウケました。前回はハーブティーに拘っていたけど(しかも怪しげな
原材料の・・・)、そっちはもう飽きちゃったんですかね(笑)。しかし、糞から抽出する
コーヒーにこれだけ種類があるとは思いませんでした。ジャコウネコのやつは有名だから
知っていたけど。ゾウの排泄物から取ったやつとか、アフリカの猿とベトナムのタヌキの
糞からとったやつとか、ほんとに実在するんでしょうか・・・。最後のなんて、憂夜さんの
ブレンドとか言ってるから、怪しいですけど^^;パンダの糞を肥料にして栽培したお茶
ってのもねぇ。聞いたことないけど・・・^^;排泄物から取るって聞いただけで、晶さんじゃ
ないけど、抵抗ありますよね・・・美味しいらしいけど・・・。憂夜さんって、ほんとに
一作ごとに謎になっていくなぁ。そもそも、そんな珍しいコーヒー豆、どうやって取り寄せて
いるんだか^^;

ストーリー的にはちょっと変化があって、シリーズ的にも佳境に入って来たって感じなのかな。
あのキャラとの別れは寂しかったけど、また新たな展開がありそうで楽しみです。