ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

福田栄一「青春探偵ハルヤ」/大崎梢「空色の小鳥」

どうもこんばんは。秋めいて来ましたねー。
紅葉を観に行きたくなりますね。日帰りでもいいからどこか行きたいなぁ。
去年は山梨の昇仙峡に行ったのだったかな(一昨年だったかな??)。
綺麗な眺めだったなぁ。


読了本は二冊です。


福田栄一「青春探偵ハルヤ」(創元推理文庫
現在テレビドラマが放映されていますね。実は、ドラマ化されるとか全く知らずに、
図書館の新刊案内で見かけて、福田さんの新刊だーと思って予約していました。
が、これって、ミステリ・フロンティアで出た『エンド・クレジットに最適な夏』
文庫化だったんですね^^;実は、単行本の時は読もうかどうしようか何度も迷って、
結局スルーしちゃった作品だったんですよね。タイトル全く違うから、全然気づかな
かったです^^;まぁ、未読だったので、読めて良かったですが。
内容は、初期の福田さんの作品らしい、お人好しの主人公が、他人のトラブルを芋づる式に
どんどん抱え込んで行く話。複数の問題がいろいろと絡み合って、最後なかなか
すごいことになっていきます^^;でも、それほど混乱せずに読めましたね。
主人公ハルヤのキャラがなかなか良いです。ドラマは一話目だけ観たのですが、
主演はKis-My-Ft2玉森裕太君が演じています。個人的にはあまり好きな顔では
ないんですが(ファンの方ごめんなさい^^;)、これを読む前にドラマの一話目を
観てしまっていたので、完全にハルヤのビジュアルは玉森君になっていました(笑)。
いつものお人好しなだけの青年キャラではなく、学生時代のハードな体験のおかげで、
ヤバそうな修羅場にも冷静に対応出来るタフさがあるところがかっこいい。大学生とはだ
思えないハードボイルドさがあるといいますか。見た目は貧乏くさい学生という描写
なのですが。友人の俊喜との関係も良いですね。和臣の方は打算的なところがあまり
好感持てなかったけれど、なんだかんだで最終的にはハルヤに協力してあげるので、
基本的には悪いやつではないんでしょうね。
終盤はうまく行き過ぎな感もありましたし、美羽を拉致した人物についてはすぐに
オチが読めてしまったりもしたのですが、葵のことに関しては全く予想外でした。
まさか、ああいうオチが待っているとは・・・。ちゃんと伏線は張ってあったのに、
全く思い至らなかったな。
ほろ苦い結末でしたが、読後はさほど悪くなかったです。だいたい青春小説っていうのは
こういうものでしょうからね。
青春探偵っていうのは何だ?というツッコミはさておき(笑)、こういうタイトルに
したことで、若い読者なんかは手に取りやすくなったかもしれませんね。元の
タイトルだと、何が何やらって感じだからね(苦笑)。
ハルヤのキャラはなかなか気に入ったので、ドラマ化もされたことだし、続編の
予定とかあればいいのにな。
いい意味で、福田さんらしさが詰まった作品だと思いました。面白かったです。


大崎梢「空色の小鳥」(祥伝社
大崎さん最新作。いつもの作風とは違って、かなりシリアスな内容。でも、ぐいぐい
惹きつけられて、先が気になってほぼ一気読みに近かったです。
主人公の西尾木敏也は、大企業総帥の息子の立場であるものの、後妻の連れ子で
父親とは養子縁組をしていない為、親族の中では肩身の狭い思いをして育ちます。
父親の愛情と関心は、実の息子である兄の雄一のみに向けられていました。そんな父親の
干渉が鬱陶しく窮屈だった雄一は、実家を飛び出し行方知れずになってしまいます。
しかし雄一の居場所を突き止めた父親は彼を実家に連れ戻す。実家に戻された雄一は、
友人に飲みに誘われ、その先で火事に巻き込まれ命を落としてしまう。それから三年、
敏也は雄一が家を飛び出して東京にいる間に、入籍間際の女性がいて、子どもまで
作っていたことを知ります。そしてその女性が末期の癌に冒され余命わずかである
ことも。二人に会いに行った敏也は、彼女の入院を世話し、残された子どもの
面倒を見、彼女の臨終を看取る。その際、敏也は子どもを引き取ることを申し出て
いた。彼女の死後、友人の汐野と恋人の亜沙子の手伝いのもと、雄一の忘れ形見の
結希を育てる敏也だったが、その裏にはある目的が隠されていた――。

最初から敏也には何か裏がありそうな雰囲気があったので、読み始めはあまり彼に
好感が持てませんでした。結希に対しても、どこか面倒臭い感じに思っているフシが
あったので。その割に結希が真っ直ぐに育ったので、その思いは必死に表に出さないように
していたのはわかるのですが。でも、彼の境遇を考えると、彼が西尾木の家に復讐したいと
考えるのは当然のことのようにも思えて、そこからは少し敏也に対する見方が変わりました。
ただ、彼の復讐が成功したとしても、彼が幸せになれるとは思えなかったので、あまり
応援してあげようとは思えなかったのですが。
DNA鑑定をする話になった時、なんとなくオチが見えてしまったんですよね。敏也に
とっては厳しい現実だったけれど、彼らの幸せの為にはかえってその事実があって
良かったと思いました。
これはどこまでも血の繋がりのない家族の物語ですが、血が繋がっていてもばらばらな
西尾木の家族たちよりも、敏也たちの方がずっと温かい絆で結ばれた家族のように思えました。
オネェの汐野としっかり者の亜沙子のキャラがとても良かったです。敏也の側に
こういう存在がいたことが、敏也にとっても結希にとっても良かったなぁと心から
思いました。二人がいなくて敏也だけだったら、結希はもっと曲がった性格になって
しまっていたかもしれないなぁと思う。もちろん、一番彼女の世話をしたのは敏也
なのだけどね。でも、敏也には根底に抱えた鬱屈があって、それがある限り、どうしても
まっすぐ彼女を可愛がることが出来なかったと思うから。その分、腹蔵なく彼女を
可愛がれる汐野と亜沙子がいたのは救いだったと思う。

雄一が敏也のことをどう思っていたのかは最期までわかっていませんが、多分心配
していたのじゃないのかな。もっとお互い、心のうちを伝えあえれば良かったのに。

敏也の義父や親戚たちには腹が立つばかりだったけれど、義父の最後の計らいには
温かい気持ちになりました。血がすべてじゃないと、敏也や結希のことでほんの少しは
気持ちが動いたのかな、と思いたい。

敏也の復讐は失敗したけれど、それによって彼は大事なものを手に入れることが
出来たのだと思う。光の見えるラストでほっとしました。