ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

はい、どうもこんばんは。
先日のパリのテロはショックでした。
パリは大好きな街で、過去に三度訪れていますので・・・。
あの美しい街が、テロの標的となって、たくさんの血が流れたなんて・・・。
被害者の方々はどれだけ無念でしょうか。ご冥福をお祈りするばかりです。
そして、フィギュアスケートのフランス大会中止もショックでした。
もちろん、当然の措置だとは思うけれど。選手みんな、フリーも滑らせて
あげたかったな。昌磨くんのフリー見たかった(><)。ショートの順位が
そのままファイナルへの獲得点になるとしたら、フリーで挽回のチャンスが
大きかった(パトリック)チャンが一番可哀想な気がする・・・。
どうなるんでしょうかね。


読了本は久々に三冊。事情あって記事更新出来なかった分たまってしまった^^;


では、1冊づつ感想を。


辻村深月「きのうの影踏み」(角川書店
辻村さん最新作。ホラーよりのお話ばかりを集めた短編集。ショートショート的な
ものも含め、全部で13編が収録されています。
ちょっとオチでぞくぞくってくらいの作品がほとんどでしたね。
さらっと読めるものばかりなので、忘れていくのも早そうですが・・・^^;
冒頭の『十円参り』は結構怖かったですね。仲の良い三人組で他の二人が
仲良くしてるとちょっと嫉妬してしまうっていうのは、女子なら結構経験あるのでは
ないかな。十円参りの都市伝説もありそうでちょっと怖かったです。
『だまだまマーク』もラスト怖かったなー。子どものほんわかしたお話
なのかと思いきや。ラスト、ひえー!って感じでした。『だまだまマーク』の
意味にもぞぞぞ。
『ナマハゲと私』も最後のオチがめっちゃ怖い。こんなのが実際襲って来たら
と思うともう・・・ぶるぶるぶる(><)。
『噂地図』は、ホラーというよりはミステリー的な仕掛けのある作品。噂の出処
もそうだし、『噂地図』の掟の一つが伏線となって、最後に効いてくるところなんかも。
ラストシーンも含め、そのうち、世にも奇妙な物語辺りで映像化されそうな作品
でした。
ラストの『七つのカップは、悲しいお話なのだけど、ラストで少し救いが見える
ところが、他の作品とはちょっと違っていました。これが最後に収録されていることで、
ぐっと読後感が良くなっているように思いました。
一作づつが短いので、それほど読み応えはないですが、辻村さんらしい巧さもちらほら
見られて良かったと思います。個人的に、ショートショートはいらなかったかなーって
感じはしましたけども^^;


伊坂幸太郎「陽気なギャングは3つ数えろ」(祥伝社ノン・ノベル)
シリーズ9年ぶりの最新作。久しぶりに彼らに再会出来てめっちゃ嬉しかったです。
今回は銀行強盗シーンは最初だけ。響野の演説シーンも冒頭のみ。まぁ、それ以外の
どんなシーンでも、彼のマイペースで面倒くさい弁舌キャラは相変わらずでしたが(苦笑)。
彼に対する他の三人のツッコミがいちいち可笑しかったです。
軽妙な会話のやり取りはどこを取っても楽しかった。やっぱりこのシリーズは
会話が命ですね。前作から9年も経っていると、それぞれのキャラも若干忘れ気味
だったのだけど、映画を観た記憶が割と鮮明に残っていたので、映画のキャストを当てはめて
読むと、それぞれのキャラ造形も思い出せて来て良かった。なぜか四人のうち、大沢たかお
(成瀬)だけは読んでいる間全然思い出せなくて、読み終わってからネットで検索
して思い出したのですが・・・^^;
今回、悪者役として登場した記者の火尻のキャラ、ほんとに嫌な奴でした。こういう
記者がいるから、マスコミはハイエナみたいだとか言われるんですよねぇ・・・。
ちょっと前に読んだ米澤穂信さんの『王とサーカス』のジャーナリズム論を思い出して
しまいました。面白ければそれでよし。その記事によって傷つく人がいても関係ない。
読者は知る権利がある・・・。それが真実ならまだしも、読者が飛びつくように
事実を歪曲して伝えるような火尻みたいな記者は最悪です。もーう、火尻の話すことは
何から何までムカつきましたね。伊坂さんって、こういうムカつくキャラを作るの
ほんとお得意ですよね。容赦ないくらい嫌なキャラに仕立てるっていうか(苦笑)。
でも、それだけに最後はスカっとしました。嫌な奴にはこうでなくてはね。
このシリーズらしい、勧善懲悪といえるのかな。最後、うまく行き過ぎな感じも
したけれど、カバー折り返しの著者の言葉に、このシリーズはお伽話みたいなもの、
と書かれているから、これはこれで良いのだと思います。お伽話は、最後悪者が
やっつけられるのが定石ですからね。
最後、もののついでのように、募金の親子にサッカーくじをあげるくだりが何とも
伊坂さんらしくて好きでした。当たりくじの譲渡は違法なのでしょうが、まぁ、お伽話
ですから(笑)。真っ当に頑張っている人たちが報われて、悪者には天誅が下るってところが、
痛快でした。
雪子の息子真一君も良い子に育っているようで良かったです。子どもの頃どんな子
だったのか、全然覚えてないのだけれど^^;
便利屋みたいな田中のキャラも良かったな。あと、亀が無事で良かったです(笑)。
今回もとっても楽しく読めました。また四人に会いたいな。


近藤史恵「スーツケースの半分は」(祥伝社
青い幸運のスーツケースを巡る連作短編集。一作ごとに主人公は変わりますが、
すべてに同じ青いスーツケースが出て来ます。
いろんなタイプの女性が出てくるのだけど、それぞれに共感出来るところが
ありました(もちろん、出来ない部分もありましたが)。
一つのスーツケースを巡る、9つの物語。まずは、三十路直前の真美が、
フリーマーケットで一目惚れした青いスーツケースを買うところからスタート。
その青いスーツケースを持って長年の憧れだったNYへ一人旅に出かけた真美。
夫も友達も、誰もが頼りない性格の真美の一人旅を心配したけれど、行ってみたら
青いスーツケースに後押しされるかのように、いい経験がたくさん出来た。
そのスーツケースは、真美の友人、花恵へ。旅慣れしていると思われている花恵ですが、
一番好きなのは香港で、最高級のホテルに泊まっておもてなしされること。
そうしたベタな旅のことを、プライドが高い花恵は友人たちには話せない。
けれども、青いスーツケースを真美から借りて向かった香港では、いつもとは
違う旅の幸運が訪れるのです。
その後も、青いスーツケースは花恵からゆり香、ゆり香から悠子へと渡って、
それぞれにドラマが起きます。
普通の連作集だとせいぜい友人四人までで終わりだと思うのですが、この
青いスーツケースの物語は更にそこから違う人物へと渡って続いて行きます。
普通スーツケースの貸し借りってそんなにしないとは思うのですが(せいぜい身内
に貸すくらいかと)、ここまで一つのスーツケースをたらい回しにさせるというのが
なかなか面白い発想だな、と思いました。しかも、青いスーツケースを持って出かけるのが
ほとんど海外。いろんな国が出て来て、自分も青いスーツケースと共にいろんな国を
旅しているような気分で読めました。4話目のパリの話を読んだ二日後くらいにあの
パリのテロ事件が起きたので、とても複雑な気持ちになりました。悠子が憧れたあの
パリの街があんな風になってしまうなんて・・・。
ラストの、青いスーツケースを一番始めに買った人物のお話には胸が切なくなりました。
あの青い幸運のスーツケースには、こういう謂れがあったんだなぁ、と感慨深いものが。
買った人の思いと、もらった人の気持ちを考えると、なんとも言えないやるせない
気持ちになりました。それでも、もらった人はとても幸せだったと思う。それを
手にしてどこかに行く日がこの先一生来ないとわかっていても。それを持って旅する
自分を夢見るだけでも、きっと幸せだったんじゃないかと思う。彼女のその想いがつまって
いるから、きっとあの青いスーツケースは手にした人々を幸せにするのじゃないかな、と
そう思いました。
とても素敵な連作集でした。旅好きさんにはオススメしたい一作ですね。