ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

森晶麿「そして、何も残らない」/七月隆文「君にさよならを言わない」

はい、どうもこんばんはー。

昨日はフィギュアスケート羽生結弦君、すごかったですね~。
仕事からすっ飛んで帰って来て観てましたが、もう、とにかく異次元の演技でした。
NHK杯だから、生放送なので、世紀の瞬間に立ち会えて、本当に感動しました。
あれだけの高得点、今後なかなか更新出来ないんじゃないでしょうか。
超えられるとしたら、羽生君自身だけでしょうねぇ・・・。
残念だったのは真央ちゃん。トリプルアクセルだけでも成功させてあげたかった・・・。
それでも、ファイナルに進めるところはさすが。ファイナルでは、自分自身納得の
いく演技をして、笑顔を見せて欲しいです。
宮原さんは素晴らしかったです。この一年で、彼女は本当に成長しましたね。
まだまだ伸びしろがありそうなので、今後にも期待大。どの選手も、ファイナルが
楽しみです。


読了本は二冊。予約本いっぱい回って来てるんだけど、週末はフィギュアで頭が
占拠されていて、全然読めなかった^^;


では、感想を。

 
森晶麿「そして、何も残らない」(幻冬舎
森さん、新作がじゃんじゃん出ますね。今年だけで一体何冊出たんだろう・・・。
これの後にもう1冊出てますもんね(予約中)。
しかし、量産するのは良いけれど、もうちょっと一作ごとの質をあげて
もらいたい、というのが正直なところかもしれません。
というのも、この作品、個人的にはツッコミ所しかない作品って感じでした。
廃校になった学校の校舎に、三年前に軽音楽部だったメンバーたちが集められ、
三年前に起きた、ある男子生徒の死に関する復讐劇が始まる、というもの。
携帯も通じず、廃校へと繋がる橋が焼き落とされて、外部との連絡が遮断され陸の孤島
なった廃校の中で、一人一人集められたメンバーたちが死んで行く・・・という、
典型的なクローズドサークルものです。
タイトルからして、クリスティーそして誰もいなくなったを下敷きにしている
のはわかるのですが・・・うーん・・・って感じ。三年前の幾多透の死の真相も
さほど驚きはないですし、透の妹、璃依紗が仕組んだ、兄を殺した犯人に
対する策略にも、途中で気づいてしまいましたし。だって、どう考えても状況
おかしい場面ばかりなんですもん。璃依紗のキャラ自体の鬱陶しさとも相まって、
彼女の登場シーンは結構イライラさせられました。敢えて当時とキャラを変えた意味も
よくわからなかったですしね。わざとバカっぽく見せたかったのかなぁ。あの
話し方がどうにもイライラさせられて仕方なかったのだけど。ラノベかよ!って
ツッコミ入れなくなりましたね。
あと、一番個人的に許せなかったのが、透が作ったロックバンドのバント名。
ロックバンドなのに、なぜ『がらすちっく』・・・しかもひらがなって!!
このどうしようもなく絶望的にセンスのないネーミングセンスはなんでしょう。
ガラス+プラスティックが語源だったら、百歩譲ってせめて『ガラスティック』だろう
(できれば英語表記が良いけど、せめてカタカナ)。
バンド名の『がらすちっく』が本文に出て来る度に、無性にイラっとする自分が
いました・・・。透が作る歌詞のセンスもすごかったけどね・・・。あれで
感動出来る人間がいるってのが全く理解出来ませんでした・・・。
そりゃね、中学生が考えたって思えば、仕方がないのかな、とも思うけれど。
でも、透のキャラが中三にしては大人びているし、すごい才能の持ち主、みたいに
褒めちぎられて出て来るものだから、違和感ありまくりで。
なんか、いろんなキャラ設定がちぐはぐで、はまっていない感じがして
仕方なかったです。
終盤のどんでん返し、とか謳われているようですが、どこにその衝撃があったの
でしょう・・・あれのことかなぁ。結構気づく人多いと思うけどなぁ。それとも
あっちの方かな。そっちはそっちで、やっぱりね・・・って感じだったのだけど。
ミステリ読み慣れていない人ならそういう反応になるのかも?
私としては、残念ながらミステリ的な驚きはほとんど感じられなかったです。
それより、物語やキャラ設定の浅さや粗さが目立ってしまい、あまり楽しい読書とは
なりませんでした。
辛口で申し訳ない・・・。またしても森作品で黒べる子が出てしまった^^;
私には合わなかったというだけかもしれません。レビュー見てると、評価している人も
いるようなので・・・。
個人的には、タイトル通り、何も残らない作品でした(黒べ)。
森さんはほんとに作品の出来に波があるなぁ。次のはどうだろうか・・・。


七月隆文「君にさよならを言わない」(宝島社文庫
先に発売した『僕は明日、昨日の君とデートする』が新聞広告でやたらと取り上げ
られていたので、そちらを先に読みたかったのですが、予約数の関係でこちらが先に
回って来てしまいました。事故に遭って以来、幽霊が視えるようになってしまった主人公が、
この世に未練を残した様々な幽霊と出会って、交流を交わす心温まるハートフルストーリー集。
まぁ、割合ありがちな内容というか、それほど突出した何かがある作品ではないです。
ただ、まぁ、読みやすいですし、主人公もいい奴で好感が持てるし、それなりに楽しめたかな。
一作目がそこまで絶賛されていた理由はちょっとこの作品だけではよくわからなかったなぁ。
そんなに感動出来るお話だったのかしら。
これは、幽霊が心のわだかまりが溶けて成仏するまでのお話なので、確かにどのお話の最後も
ホロリとさせるオチになってはいるのですが。
文章は可もなく不可もなく、といった感じ。携帯小説まではいかないけど、単行本で出せる
レベルでもないかなーって感じで、文庫発売の作家らしい軽さって印象ですかね。
主人公の明のキャラが良かったですね。たまたま出会う幽霊たちの未練を見過ごせず、
なんとか彼女たちの成仏を手助けしてあげようとする姿に好感が持てました。
血の繋がらない妹、柚のあからさまなアプローチに全く気付かない鈍感さには呆れましたけど。
彼の中では、あくまでも『妹』という位置づけだから、そういう考えに及ばないんでしょうが。
それにしても、あれほど明らかな態度なのにねぇ。ニブイ奴め。
個人的には、三作目に登場する幽霊、水葡のキャラが好きだったな。古武術をやってる
だけあって男の子みたいな凛々しい性格なのに、所々明の前で奥ゆかしく恥じらう姿が
可愛らしかったです。
ラスト一編で、それぞれの作品で出会った脇役たちのその後が描かれるところも良かった
ですね。亡くなった人は返って来ないけれど、それぞれの人物が、故人との繋がりを胸に抱えて
今を生きていると思える明るさを持っていたので。
明の事故のこと、父親との不仲の原因や柚との関係など、気になる点がまだいくつか残されて
いるので、続編があったら読んでみたいかな。